8:サリヤ…元勇者に同行を求める。
私もあなた達の旅に同行させなさい!拒否権は無いから!
馬に乗っけて『もらっていた』眼鏡の少女、サリヤの自己紹介から始まった話・・・というより一方的な演説を1行に要約するとこういうことになる。
そして、それを途中から(余りにも長すぎたが故に)地べたに座って聞いていた元勇者の回答は…
「嫌」
の一文字であった!
「なっ、なんでよぉ!?」
発憤するサリヤ。
まさか同行を断られるとは思ってなかったかのような口ぶりである。
「いやいや・・・無理に決まってんだろ。いきなり現れて糞長い話聞かされた挙げ句・・・私も連れて行きなさいだぁ?最低の提案ご苦労さん・・・お帰りはアチラですぜ」
「だ、だって・・・誰かに聞いてもらいたかったんだもん!あの馬のお陰で確かに早く着いたけど、最初は騎乗するのもやっとで、何度振り落とされたことか・・・」
「いや、それもう聞いたから。2度目はマジ勘弁」
「とっ・・・ともかく!こんな可愛い女の子が一緒に付いていってあげるっていってるんだから、そこは男としての甲斐性見せる所じゃないの?」
「・・・お前、見た目地味なのに、自己主張激しいな」
ジンは彼女の容姿を見回して言う。
ちなみに今のサリヤの服装はといえば、何と義父ドワールと話した時と殆ど変わっていない。
財務を担う職員達が一様に身に纏う緑の法衣は勿論、帽子と眼鏡までそのままだ。
強いて違いを挙げるというのであれば、既に長年旅したのではと思われるほど、衣服のあらゆる箇所が汚れたり、破けたりしているところだろうか・・・。
「なっ・・・そんな格好の人間に言われるなんて・・・!」
そこいらの村人と大差ない服装の元勇者に矜持を傷つけられたらしいサリヤは本気で落ち込む。
「まぁ・・・お前のヤケに自己評価の高い容姿は別として・・・俺はお前を連れて行く気はねえよ」
「な、なんでそこまで拒否するのよ・・・?」
「何でも何も・・・信用できねえし」
「・・・し、信用?」
「そ。だってお前、どうせ国の密命か、お偉いさんからの指示で俺達に帯同しようって魂胆なんだろ。お前の・・・というかお前を使わせた誰かの目的は知らんが、1つハッキリ言えるのは、それが俺のメリットになる可能性は0ってことだ。むしろデメリットなら山ほど思いつくぜ。毒盛られたりして暗殺されそうになるかもしれんとか・・・」
「そっ・・・そんなこと・・・・・・・・・しない・・・わよ?」
その時のサリヤの目の泳ぎ方は、それこそ彼女の乗ってきた名馬『オールワン』の暴れっぷりにも匹敵した。
「お前・・・嘘吐くの下手すぎるだろ!」
「しっ、仕方ないでしょ!国の財政を司る者として、常に虚言の類いは慎むべく心がけてきたんだから!」
「そして嘘だと認めたし・・・俺を殺しに来たって言っちゃったし・・・」
「あっ・・・で、でも別に良いでしょ。あんた勇者じゃん。なら、暗殺者の1人や2人側にいたって問題・・・」
「あるわっ!大ありだわ!!!嫌に決まってんだろ!!!!!」
「クハッ!つくづく面白い嬢ちゃんじゃのう」
少年少女2人の会話に横から口を出したのは、ここまで成り行きを見守っていた翁・・・エンゾーであった。
「ジンよ、彼女・・・ええとサリヤと言ったか。連れて行ってみてもいいんじゃ無いかの?」
ジン・・・驚愕。
無理も無い・・・自身の信頼する唯一の同行者が、何故か自らを殺すためにやって来たとか言い出す変な女の動向を許可したのだから!
元勇者の青年は慌ててエンゾーに詰め寄った。
「おい!話聞いてなかったのかっ!?それとも遂にボケたか!?この馬鹿女はな・・・自称暗殺者なんだぞ!俺を殺すためにやって来たヤツなんだぞ!そんな女が一緒にいるのを許すってのか!?俺が殺されても良いってか!?」
「どうどう・・・落ち着くんじゃ、ジンよ」
「何がどうどうだ。俺は犬じゃねえ!」
「まあ聞くんじゃ。のう・・・サリヤとやら・・・?」
「はっ・・・はい!」
何故か急に居住まいを正し、敬語を使い出すサリヤ。
年長者には敬意を払うということなのだろうか?
「今もコイツに言ったのじゃが、ワシはサリヤ嬢を同行させても構わんのでは?と考えておる」
「そ、そうですか!なら・・・!」
「じゃが、その前に幾つか聞いておきたい。お主・・・本当にジンを殺しに来たのかの?」
「・・・正確に言うのであれば、暗殺も執りうる手の1つではある・・・そういうことになるでしょうか?」
「ん?なんじゃ・・・煮え切らん答えじゃの?」
「私は・・・とあるお方から、ただ元勇者に同行しろとだけ言われただけです。そしてその過程において臨機応変に対応しろとの指示を受けました。暗殺どうこうというのは、もし・・・そこの男が、それこそ国家に仇なす行為を行おうとしていることが分かった際ということです」
「なるほどのぅ。まぁ・・・国からすれば『聖剣』を取り上げ、戦闘力は著しく減少したとはいえ、勇者は勇者・・・。そんなヤツの動向は一応追っておきたいのも頷ける」
「・・・正直、私個人としては、何で今更『元』勇者に付き従わなきゃいけないのか不服に思ってるんですが、ご指示があった以上やむを得ません。えっと・・・そんなわけで、エンゾーさん?どうでしょう?同行させて頂けませんか?」
サリヤから話を聞き、少し目を瞑って思考するエンゾー。
10秒ほどそうした後に、彼が下した結論は・・・
「ワシは良いぞい」
同行の許可であった!
「やったあ!これから宜しくお願いします!エンゾーさん!」
「うむ、よろしくの、サリヤ嬢」
喜ぶサリヤを見て、はにかむエンゾー。
2人は握手を交わし・・・新たな仲間を迎えることと・・・
「なるわけねえだろっ!!!」
そうは問屋が・・・いや、ジンが卸さなかった!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!




