6:元勇者と刀鍛冶…門前で呼び止められる。
エンゾーを連れ、『向こう側』に向かうことになったジン。
その後の数日を、所々刃こぼれした自身の愛刀『月牙(エンゾー作)』の修繕やら、荷造りやらに費やし・・・本日いよいよ旅立ちの日を迎えた。
行き先は、先日まで『魔王』と呼ばれた者とその配下の『魔物』達が巣くっていたセレーブ地方。
当然センチュリー王国の国境を跨ぐことになるわけで、早朝にも係わらず、馬鹿デカい門の前に幾人かの人が並んでいるのが、遠目からでも覗える。
「うわっ!並んでるよ!俺・・・今でもスルーできないかな?」
こんな所で足止めを食らわされるのは御免被ると言いたげなジンに対し・・・
「無理じゃろうな・・・なにせ、最早お主はただの人・・・それ以上でも以下でもないのじゃから」
とエンゾーの返答は現実的だ。
「ったく・・・ホント、ついこの間までは、誰もこんなとこ、寄り付きすらしなかったっていうのによ・・・門番だっていないも同然だったじゃねえか!?」
「そりゃ、そうじゃろて。誰が好き好んで、自らを喰らいに来る化け物の側に寄りたがる?今、列を成している者達の大半は、きっとかつて門の向こう側に住んでいながら、『魔物』達に住処を追われ、一時的にこの国に逃れとった者達じゃろう・・・。お前さんのお陰で、ようやく自らの故郷に帰れるのじゃろうて・・・」
「・・・なら、その恩を俺に返してくれても良いんじゃねえか?具体的には、チョットくらい横入りを許してくれるとか・・・?」
「『勇者』がそんなことしなさんな」
「冗談だよ」
「時にお主・・・実家には姿を見せんで良かったのか?」
エンゾーの不安そうな顔が、隣を歩く青年の顔をのぞき込む。
「・・・いいんだよ。報償も貰えなかった俺が、何も持たずに帰還したところでどうなるってんだ?またブツブツ小言を言われた挙げ句、旅に出るのは許さない!とか言われたら面倒だろ?」
「確かお主の家族は・・・」
「ああ、プライドばっかり高い偏屈親父と、そいつの言うことに従うだけのオカン。それに親父の若い頃はきっとこんな感じだったんだろうと思わせるような兄貴の3人だ。別に相対だなんて思わねえよ」
「・・・の割には、『勇者』を引き受けた理由は、報償で家族に楽させてやりたいとかそんなんじゃなかったかの?」
「・・・腐っても家族だからな。最低限のことはしてやらんでもないって思ってたよ。でも・・・もういいんだ」
ジンの声に虚勢の類いは感じられない。
しかし、エンゾーにはそのことが寂しく感じられた。
「お主にも・・・せめて誰か良い人でもおればのう・・・」
と、エンゾーはつい・・・まるで子ども思いの親のようなことを呟く。
「あぁ?何だよ急に?」
「血を分けた家族に思い入れが無い・・・それを攻める気にはならん。血の繋がりは選べんのだからの・・・。だから、せめてお前にはお前自身が大事にしたいと思える家族を作って欲しいんじゃよ」
「おせっかいなこと言うなよな。これから一世一代の冒険が始まるって意気込んでんのによ・・・。そこに女連れで行くってか?今から適当なの捕まえて?」
「別に今すぐとはいわんし、適当なのを見繕えなんて言う気も無いわい。ただいつか、お主にそんな人が出来れば・・・その時はもう、ワシは夢を諦めてもいいかもしれん」
「ほう・・・なら、俺は意地でも作らん!」
そんなことを話しながら、いよいよ門前に到着した2人。
列が捌けるのに多少の時間を労したものの、肝心の手続きは滞りなく行われた。
「曲がりなりにも元『勇者』が出国するのじゃから、何か・・・文句の1つでもあるかと思ったんじゃがのぅ・・・」
というエンゾーの懸念は杞憂に終わりつつある。
再入国の際必要だという、なんか色々書かれた用紙(帰るつもりがサラサラない2人は碌に目を通さなかった)を1枚受け取り、無造作に懐に突っ込んだジンは・・・
「よしっ!行くぞっ!」
と一声上げて、遂に、門の向こうへ足を踏み出し・・・
「そこの金髪・・・止まれぇ!!!」
かけた時、後方から掛けられた声が1つ
「あん?何だ?金髪って俺か?」
「じゃろうな。見たところお主くらいじゃ」
該当するのがどうやら己しかいないことを確認したところで、ようやくジンは遙か後方に視点を合わせる。
そして見えたもの・・・
それは・・・大柄な馬の背に乗って、こちらに真っ直ぐ向かって来る1人の少女であった!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!




