4:財務官僚ドワール…愛娘に秘密を告げる。
元勇者の青年と一介の老人との間で熱い抱擁が交わされているその頃・・・。
財務官僚ドワールは、自身の邸宅に帰るや否や、自らの私室に1人の少女を呼びつけていた。
雑多な書類の数々は綺麗に整頓され、品の良い調度品がほどよく並ぶその部屋にて・・・
ドワールが腰を下ろすデスクの前にて困惑した様子で立つのは、彼と同じく緑の法衣を着用しつつ、何故か室内でも頑なに帽子を脱ごうとしない、少々風変わりな眼鏡の少女であった・・・。
「お、お義父様!?・・・それはつまり、あの元勇者に帯同しろと・・・そうおっしゃるんですか!?」
「・・・ああ」
「な・・・何故です!?噂によれば、勇者は王への無礼な発言を理由に追放されたはず・・・。今更そんな男に付き従う必要が何処にあるというのです?私はコレからもお義父様の元で研鑽を重ね、ゆくゆくは後継として、この国を豊かにしてゆく手助けをしたいのです。お義父様も知ってますよね?」
「ああ・・・勿論だとも。忘れることなぞあろうか・・・」
「なら・・・」
「しかしっ!」
ドワールはそう言って発言を遮ると、椅子から立ち、執務机を回り込んで娘の前に立つ。
そして・・・出来うる限り最大限の依頼方法・・・即ち土下座を敢行したのだった。
「!!!お、お義父様!?」
「頼む!どうか・・・どうか・・・私の願いを聞き入れてくれないだろうか!?」
「そ、そんな・・・取り敢えずどうかお顔をお上げください。そしてどうしてそこまで必死になるのか・・・説明して頂けませんか?」
「・・・ああ。すまない」
ドワールは娘の指示に頭を上げるも、依然、正座は解くことをせずに、自身の考察を述べ始める。
「まず、結論から言うと・・・この国はもう・・・長くないだろう」
「・・・・・・・・・はっ?」
目が点になる・・・とは今の彼女の様な状態を言うのであろう。
「私はこの国が、そう遠くない未来に自壊するのでは?と考えている・・・少なくともこのままではな」
「なっ!?な、何で!?一体どうして!?」
動揺する娘のもっともな疑問に答える・・・その前にドワールは一度正座を解き、廊下へと続く扉の外に視線をやり、左右を念入りに見回して、人の気配が無いことを確認する。
そして、扉を閉めると、内鍵を駆けた後に・・・なんと『結界魔法』を行使して、この部屋を現実空間から完全に隔離したのだった!
「お、お義父様!?そ、それは・・・」
「分かっている・・・だが、この先は万が一にも聞かれる訳にはいかんのだ」
ここまで細心の注意を払う父の姿に、自ずと娘の顔には緊張感が漂った。
「さて・・・娘サリヤよ・・・今から言う話は、とても突拍子の無いものに聞こえるだろう。何を隠そう私も確信にまでは至っていない。だから、杞憂であればそれが一番いいのだ。しかし、もしそうならなかったときに備え、今のうちに保険を掛けておく必要がある。それ故に、お前に元勇者と行動を共にして貰いたいのだ」
「・・・それは、元勇者・・・ジン殿を監視し、この国に仇なす輩であれば抹殺しろと・・・そういうことですか」
「それもある。が、お前の実力を持ってしても、彼には手も足も出ない可能性が高い」
父のその発言に、娘サリヤは驚く。
「そ、そんな・・・確かにお義父様から見れば、私の実力など、取るに足りないものかも知れません。しかし、『聖剣』に対する適正だけで『勇者』の地位を得た者如きに遅れをとることは・・・」
「いや・・・娘よ、お前は思い違いをしている。私は決してお前の実力が私に劣っているなどと言うつもりは無い」
「・・・っ!なら、どうして・・・」
「それはな・・・あの『聖剣』は真っ赤な偽物だからだ」
結界を施した一室を、静寂が支配した。
「な・・・何ですって?偽物?」
「そうだ・・・偽物だ・・・」
「そ・・・そんな馬鹿な。アレはこのセンチュリー王国に代々伝えられてきた至宝ですよ!ソレが偽物だと・・・」
「ああ。少なくとも私はそう見ている」
「こ、根拠は?一体何を根拠にそう言っておられるんですか!?」
「簡単な話だ。あれには殆ど『魔力』が内在していない。身も蓋も無い話・・・私達が後生大事に崇めているあの『聖剣』は・・・ただの鉄クズだ」
「て・・・鉄クズ・・・そっ、それはお義父様が自ら確認されたのですか?」
「ああ・・・私が勇者に貸与する前にしっかり確認した。間違いなくアレに武器としての価値はない」
「そ・・・そんな・・・」
自身の常識が根底から揺らぐサリヤ・・・。
しかし、ドワールの話はまだまだ序章に過ぎない・・・。
「となると、ここで1つ疑問が生じる・・・それは、『元勇者がどうやって『魔王』と呼ばれる存在を倒したのか?』ということだ」
「っ!」
「・・・そうだ。お前もさっき言っていたな。『聖剣』を持たぬ勇者に遅れをとるはずが無いと・・・。しかし実際、『聖剣』に武器としての性能は全く期待できない・・・」
「つ、つまり・・・元勇者は、実力で『魔王』を討伐した可能性がある?」
父の話から言の葉を接ぎ、結論を導き出したサリヤ。
しかし、その回答では、目の前の財務官僚は半丸しか与えられない。
「・・・もし、そうなのだとしたら、まだ良いのだ。脅威が1つ減っているのだから」
「・・・というと?」
そしてようやく、ドワールは自身が考える最悪のシナリオを口にした!
「私が考える最悪の未来・・・それは、『魔王』がまだ生きていて『元勇者』と共に、この国を・・・いや、世界を乗っ取りを企てていることだ!」
ここまで読んでいただきありがとうございます!
これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!




