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勇者をクビになりましたので、遠慮なく本懐を遂げさせて頂きます!  作者: えみお


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3/16

3:元勇者…刀鍛冶士を勧誘する。

「まさか・・・王様がここまで愚かだったとはのぅ・・・」

 

 半ば追放同然に王城から閉め出されたにも係わらず、足取り軽く鍛冶場に来た元勇者・・・ジン。

 その彼から一連の話を聞き、そう愚痴をこぼしたのは・・・この青年にとっての『本当の聖剣』を日々メンテナンスしてくれていた鍛冶士の爺・・・エンゾーである。

 麻の衣に皮の前掛けと、至って簡素な出で立ちの小柄な老人・・・。

 そんな彼と元勇者・・・余りにも年の離れたこの2人は、今や切っても切れない仲なのであった。


「いや・・・王がトンチンカンなのは分かりきっていたことじゃが、まさか周りの誰もあの『聖剣』に価値があると思っているとは・・・」


「そうなんだよエン爺!アイツらは『あのナマクラ』には何か特殊な力が宿ってると思ってんだ!実際、儀式と称して俺から『聖剣』取り上げた後は、急に態度がおざなりになったしな!きっと、『聖剣』無しなら俺には対した力なんて無いって思ってるんだろうよ」




 本当は逆なのにな!




「大方、何処かのタイミングですり替わったのだろうのぅ・・・遙か昔におられた先代の勇者が『聖剣』を使用して事態を収束したのは間違いなさそうじゃし・・・」


「あっ・・・そっちはホントだったんだ」


「おそらくの・・・。何分1000年以上前のコトじゃし・・・資料なぞ『影』を使っても殆ど収集出来んかったから、確実にとは言い切れんが・・・」


「十分だよ・・・悪かったな、エン爺。余計な手間駆けさせちまった・・・」


「なんのなんの。お前さんの頼みとあれば、余程のことでも無い限り、引き受けるぞい!」


「・・・『影』を使ってやらせたってことは、実際はその資料集めとやらも、命がけだったんじゃねえのか?一体何なら断ってくれるんだよ・・・ありがとな」


「何じゃ?急に礼など、お前らしくも無い・・・。いいんじゃよ。ワシには、もはや身内は誰もおらん。そんな残り僅かな余生で、息子に瓜二つのお前に出会い・・・そして救われた。そんなお前に何かしてやりたいと思うジジイの酔狂じゃて・・・」


 そんなエンゾーの言葉を聞いたジンは、一転真面目な顔になる。




「・・・なあエン爺。やっぱり俺と行こうぜ!」




 そして、以前からの提案を再度、口にしたのだった。


「行くとは・・・向こうにか?」


「ああ!やっぱエン爺がいないと始まらねえ!これから先、俺の野望を叶える為にはどうしたって、強い武器がいる。しかも大量に!なのにそれに精通してる人間が皆無じゃ、宝の持ち腐れになっちまうよ!」


 ジンはそう言うと、鍛冶場の外に目を向けた。

 彼の視界広がるのは自然そのものだ。 


「エン爺がこの場所を気に入ってるのも知ってる。この国で綺麗な水や上質な砂鉄を求めようと思ったら、このエラリー山近辺しかないからな。ここで自分の思いのままに刀を打って暮らすってのも、きっと良いんだろうな・・・」


「ジン・・・それが分かっているなら・・・」




「でも・・・ここじゃ、エン爺が追い求める『最高の刀』は打てない!」




 ジンのその言葉にエンゾーは目を見開き驚いた。


「・・・!お主、知っておったのか!?ワシの夢を!?」


「おいおいエン爺。そんなの聞かなくったって分かるよ!」


「な、何故じゃ・・・?」


「エン爺はさ・・・俺が初めて『聖剣』持ってきたときのこと覚えてるか?」


「・・・?ああ、勿論、覚えとるぞ。でも、それとこの話に何の関係がある?」


 エンゾーは思案する様子を見せる。


「わかんねぇか?」


「・・・ああ。降参じゃ・・・」


 するとジンはこの鍛冶場の入り口を指さす。

 熱気を逃がすため扉なんて立派なものは無く、外と隔たりは皆無のその場所を・・・


「俺が初めてここにやって来て、「王様から貰った『聖剣』ってのを見てくれないか?」って言った時、エン爺・・・俺に向かって飛び付いてきて、こう言ったじゃねえか・・・「ソレは本物か?本物の『超金属』かっ!?」って」


「あ・・・ああ・・・」


「結局調べてみたら違ってて、そしたらエン爺・・・泣きそうな顔して呟いてたろう・・・「もう・・・ワシの夢が叶うことはないじゃろうな・・・」って」


「・・・・・・・・・」


「それで思ったんだよ・・・ああ、『この人も俺と同じだ』って。こんな辺鄙な場所に暮らしてる爺さんだけど、この人もまだ諦められない・・・捨てるコトが出来ない夢を持ってるんだって」


「・・・・・・・・・」


 ジンはそこまで言うと、再び視線をエンゾーに向ける。

 小さな背を丸め、うつむき加減の年寄りの顔は、当然起立した状態の青年からは窺うことは出来ない。


「エン爺・・・ココじゃ駄目だ!ココには無いんだ!だから俺と一緒に・・・」


「ジンよ・・・お主の気持ちは嬉しい・・・ソレこそ涙が出るほどにな・・・」


 以前表情をうかがい知ることは出来ない。

 しかし、年寄りのかさついた頬を涙が伝うのはハッキリと見えた。


「だがな・・・もう、遅すぎたんじゃ、何もかも。ワシ残された時間はそう長くない」




「だから何だっ!?」




「ジ・・・ジン?」




「時間が無いなら作りゃあ良い。『超金属』とやらが本当にあるなら、きっとこの世の何処かに不死の薬だとか、若返りの妙薬だとかだってある!何でも直せる治癒士だってきっといる!可能性は無限大だ!」




「・・・お主は若いのぅ」


「エン爺ほどじゃないだろ。未だに夢物語を追ってるんだから」


「・・・・・・・・・そうだのう」


「たった一度の人生だろ!なら、最後の最後まであがこうぜ!」


「・・・そうじゃな!そうじゃ!行こう!」


「よし!」


 ジンはエンゾーの覚悟を決めた言葉を聞き、すかさず彼我の距離を詰める。

 そして、まるで生き別れた親子の感動の再会を彷彿とさせるように、力強い抱擁すると、エンゾーの耳元で囁くのだった。




「エン爺が死ぬまでに、絶対見つけよう!それで俺に最高の剣を打ってくれ!形だけご立派な『聖剣』モドキじゃない。無骨な渾身の一振りを!」




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