15:サリヤ…件の少女と対峙す。
開かれた門扉の奥・・・そこにある巨大な椅子に座すのは、たった1人の女の子だった。
彼我の距離が離れている故、サリヤにはその椅子の正確な大きさが掴めない。
しかし、もし少女が一般的な体格なのだとしたら、そんな少女が縁ギリギリに腰掛け、まるでベランダで足を放り出しているようにさえ見えてしまう、あの椅子の巨大さは、あまりにも異常だった。
(「何だろう・・・近づきたくない」)
巨大な扉を抜け、赤い絨毯に一歩足を踏み出したサリヤが、真っ先に抱いた拒絶という感情。
その原因は、決して巨大な椅子にチョコンと腰掛ける少女という光景の異様さ故・・・という訳では無く・・・
まるで、少女から発せられている『何か』が、3人の入室を拒んでいるかのようだった。
そんな腰の引けたサリヤの姿を見て、元勇者は・・・
「おいおい・・・相変わらず彼女はお転婆だな!」
と言いながら、腕を一振りする。
すると、入場前にサリヤに掛けられた『加護』と呼ばれる現象・・・それと似たものが、今度は3人の正面に展開された。
「ほっ・・・」
先程に比べ幾分楽になったサリヤ・・・その様子を確認したジンは、次に椅子に座す少女に向かって声を掛ける。
「おーい、落ち着けっ!俺だっ、ジンだ!頼むから『殺気』を閉まってくれ!」
「さ、『殺気』って何よ!ジン・・・あの子一体何なの?」
「サリヤはチョット黙ってろ・・・。今アイツ話してるから!」
『・・・・・・・・・』
しかし、ジンの必死の訴えにも、少女が耳を貸し、さらには何か言葉を発する様子は一向に見えない・・・。
「ジン・・・あの子は、何も話す気無いみたいだけど・・・」
「ったく・・・。しょうがねえな」
ジンはそう言うと、ただ1人、自らが展開した青白い障壁の外に出る。
「ア、アンタ・・・大丈夫なの?」
「問題ねえよ、これくらい。俺は魔王を倒した男だぞ!」
それだけ言うと、ジンはこの場を離れ・・・そしてもの凄いスピードで少女の元へ走って行った!
「は・・・速い!!!何なの、あのスピード!?」
到底人間の出せるものとは思えない速度で、赤い絨毯の上を疾駆するジン。
しかし、彼のそんな行動を見ても、彼の相方としてこの数年を過ごしてきたエンゾーにとっては見慣れたモノなのだろう・・・当然、驚く様子は無かった。
「エンゾーさん・・・ジンって一体何者なんですか?」
「ん?どうした急に?」
「いや、だってあの速度・・・あきらかに人間の限界を超えてますよ!おかしいと思わないんですか!」
「・・・ワシからすれば、サリヤ嬢こそ面白いことを言っとるように聞こえるぞい」
「え・・・?」
「サリヤ嬢は・・・本当に偶然『聖剣』に選ばれただけの人間が魔王を倒せたと思っとるんかいの?」
「そ・・・それは・・・」
「サリヤ嬢・・・お主の国に伝わる『聖剣』とやらには、残念なことに大した力は無いんじゃよ」
「・・・!エンゾーさん・・・その話を何処で!?」
「おっ・・・!その反応は、もしや知っておったのかの?」
「いや・・・私もそう聞いただけで、正直、半信半疑だったんですけど・・・」
「なら話は早い。つまり魔王と呼ばれていた者を倒したのは、『聖剣』の力でも何でも無く・・・ジンが常軌を逸した存在だったからに他ならないんじゃよ。数多の兵が束になって攻めようと一蹴され、誰もが諦めていた魔王討伐・・・それをたった1人、単騎で成し遂げた男・・・そんな人物が普通な訳がないじゃろて・・・?」
「そ・・・それは・・・」
「ほれ・・・そうこう言っとる間に、もう辿り着きそうじゃ」
サリヤとエンゾーが会話している僅かな間に、ジンは椅子に座る少女との距離を目と鼻の先まで詰めていた。
「ジンがあんなに小さく見える・・・って、チョット待って!あの椅子どれだけ大きいのよ!?」
ジンが少女の元に到着したことにより、ようやく椅子の正確な大きさを把握できたサリヤは、その椅子が優に家1件分ほどあることを知り衝撃を受ける。
元勇者は軽々と少女の座る位置まで跳躍した。
そして・・・
「ほい・・・タッチ」
そう言いながら、ジンが少女の肩に優しく手を置く・・・と同時に、この馬鹿デカい室内から『殺気』なるものが霧散霧消していくのをサリヤは感じた。
「よかった・・・でも・・・」
この一連の出来事を経て、件の少女がやっぱり普通の子供である訳がないと確信した彼女は、改めて自らがここまで来た理由を思い出して・・・どうしようもなく不安に駆られるのであった・・・。
(「私・・・あの子の母親代わりになれって言われてたような・・・?」)
ここまで読んでいただきありがとうございます!
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