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勇者をクビになりましたので、遠慮なく本懐を遂げさせて頂きます!  作者: えみお


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13/16

13:3人組…魔王城に到達す。

 ここの主人は、もういない・・・。

 それが分かっていたとて、サリヤが眼前にそびえ立つ漆黒の城・・・『魔王城』に足を踏み入れるのには、かなりの勇気を必要とした。

 元勇者ジンから目的地を告げられ5日ほど・・・野営を繰り返しつつ歩きに歩いて辿り着いたその場所には、今はもう・・・戦いの痕跡など見られない。

 格の低い大抵の魔物は、絶命と同時に砂状になり、あっという間に風にさらわれる。

 勇者が魔王を討伐した頃から1月ほど経過していることを考えれば、そんなものが外に残っているはずは無かった。


「でも・・・それでも・・・緊張するわね」


「何だ?お前来たこと無かったのか?」


「私は学生よ!来れるわけ無いでしょ!って言うか、今日までの会話の流れで分かってくれてると思ってたけど・・・」」


「そういやそうだな・・・。甘ちゃんの学生をこんな所に行くこと許したら、それこそ何個命があっても足りねえし」


「アンタ・・・私に頼み事してる分際だって事・・・忘れたわけじゃ無いでしょうね?」


「別にぃ。でも俺があれだけ誠意を見せても意味なかったじゃねえか?それって裏を返せば、お前が頼みを引き受けてくれるかどうかに、俺の態度って関係無いってことじゃん?だからもう良いかなって!」


「アンタの、その開き直った態度は本当に腹が立つわね・・・」


 そんな軽口を叩きながら城門を潜り、いよいよ入場する・・・その直前。




「おい・・・サリヤ。こっから先・・・キツかったら目を伏せるなりしてろ」




 珍しくジンの方からサリヤに対し、心配が故の忠告が入った。


「え・・・何でよ?」


「うーん。一応聞いておくけど、お前・・・ぶっちゃけ魔物、倒したことある?」


「それは・・・無いけど」


「なら・・・多分、ここから先の光景は、きっとキツいものになる」


「・・・?どういうこと・・・ってまさか、まだ魔物がいる可能性があるの!?」


 サリヤの腕は、咄嗟に腰に佩いた杖に向かう。

 だが、そんな心配は杞憂だと言わんばかりに、ジンは手を振って否定した。




「いや・・・キツいって言うのはそういうことじゃない。言ったろ・・・この先の『光景』がキツいって」




「え・・・」


「えーっと・・・お前はきっと知識だけはあるんだろうから聞くけどさ・・・低位の魔物は倒すと砂状になるよな。だけど・・・ある程度高位の、即ち強い魔物はどうなるか知ってるか?」


 そう問われたサリヤは、自らの記憶を探り答えを見つける。


「そりゃ・・・生き物と同じじゃ無いの?」




「そうだ・・・つまり、死体は死体として、そこに残り続ける。誰かが片付けようとしない限りな?そして、この魔王城・・・その内部に入ったのは、敵方・・・即ち人間では俺一人。そして俺は掃除した覚えは無い・・・この意味分かるか?」




「・・・・・・・・・え」


 サリヤの脳内に浮かんだ城内の光景・・・。

 それは筆舌に尽くしがたいものだった。

 紅い血痕がそこかしこを染め上げ、その中に沈む魔物達の亡骸は、きっと腐敗が進んでいるに違いない。

 サリヤはここに来るまでに見た城全体の外観を想起し、換気するための窓等がそこまで多くなかったことを思い出して・・・恐怖した。


「なら・・・今、この中は・・・」




「うーん。多分、普通の人間が入ったら、病気になるんじゃないか?心身あらゆる意味で・・・」




 そう聞かされて、曲がりなりにも普通の人間であるサリヤは、いよいよ入る気が失せた。

 颯爽と爪先を返し、元来た道へ戻ろうとする彼女だったが、それを見過ごす元勇者では無い!


「はっ・・・離してよっ!?幾ら頼まれたからって、私こんな理由で病気になりたくないわよ!」


 サリヤ・・・半泣きである。


「落ち着け。大丈夫だ。お前にはちゃんと『加護』やっから。流石に俺もそこまで鬼じゃねえよ」


「え・・・何、『加護』って?」


 聞き馴染みの無い言葉に問い返すサリヤ。

 そこで、あからさまに「あっ・・・余計なこと言った」といわんばかりの表情をしたジンは、露骨に話をはぐらかそうと試みる。


「ああ・・・っと、まあ・・・それは追々説明する。ともかく、お前を病気にはさせたりしねえよ。その点は安心しろ。だけど、それは『病』の類いからお前を守ってやれるってだけで、お前の『精神』を保護してやれるって訳じゃ無い。この中に入って、お前の目に映るモノ・・・嗅ぐ匂い・・・それにお前は耐えられないかもしれない。目を伏せてろってのはそういうことだ」


 サリヤは、ジンが明らかに話を逸らしたことは勿論分かりつつ、とりあえず今は突っ込まないでやることにした。


「もし、どうしても耐えられなくなったら、俺の手でも服でも・・・何ならエン爺でも良いから掴んで、目瞑ってろ。足だけ動かしてくれれば連れてける」


「っ!そうよ!そもそもこんな所に誰がいるって言うのよ!?もしかして私を欺してるの!?新手の嫌がらせ!?」


「自意識過剰すぎだっての・・・。ちゃんといるよ。」


「・・・もしいなかったら、化けて出るからね!」


「・・・別に命の危険は無えよ。で、どうする?手ぇ繋ぐ?」


 ジンから差し出された手。

 サリヤは少し迷った後、とりあえず『行き』は頼ろうかと、その手を取る。


「・・・悪戯だったら許さないから。本当に化けて出るからっ!!!」


「・・・何で、欺されると死ぬこと前提なんだか・・・。まあ良い、じゃあ行くぞ!」


 そう言うと・・・ジンは城の玄関である大扉に何故か手をかざす。


「なっ・・・何をして・・・」


 るの?と言おうとした直前・・・目前の扉に異変が生じる。

 



 ガガガガガガガガッ・・・!




「・・・!!!」


 平然とする元勇者や鍛冶士エンゾーとは打って変わって、大層驚いた少女サリヤ・・・その3人の目の前で、扉は誰からの力も受けず、独りでに開いていくl




「よし・・・行くぞ!」




 元勇者に手を引かれながら、下を向きつつ歩を進め始めた少女サリヤ。

 しかし、曲がりなりにも手を繋ぎあう・・・時と場所さえ考えなければ、それこそ男女の逢瀬の様なワンシーンであるにも係わらず、少女の頭の中は、たった今生まれた疑問で一杯になっていた。




(「元勇者・・・あなた、一体何者なの?」)

 



 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!

 

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