12:鍛冶士…説得失敗?
「母親代わり・・・ですか?」
「そうじゃ・・・あの娘は最近、父を亡くし、理由あって母とも会えぬ身。ジンとワシは旅の道中でその子の御母堂も探すつもりなんじゃ。しかし・・・なにぶんその母親も、何処におるのか・・・どうやったら会えるのか、現状・・・皆目見当もついておらん」
「・・・・・・・・・」
「ワシら男2人でも、衣食住を保障することは出来る。今まではずっとそうしてきたしの。じゃが、その娘がよく言うのじゃ。「早く母様に会いたい」と・・・」
「でも・・・だからって母親の代理を用意すれば良い・・・というのは、少し短絡的すぎるのでは?」
「勿論・・・サリヤ嬢が仮に引き受けてくれたとて、あの娘がどう思うかは別の話・・・もしかしたら上手くいかんかもしれん。じゃが・・・」
そう言うとエンゾーは何処か遠くを見るような姿勢になる。
「子供にはな・・・『母親』が必要なんじゃ。『父親』ではなく、『母親』が・・・。子供というのは本能的に母性を求めるもの。ワシらではどうやってもソレを与えられん。だが、お主なら・・・」
「私が女だからって、イコール母性があると思われても困るのですが・・・」
「少なくとも、ワシら2人よりは適性が高かろう?」
「・・・そこの元勇者のお眼鏡にはかなわなかったようですけど?」
自らの胸部を隠す仕草をしながらそう言うサリヤ。
それに対し、エンゾー大きく首を横に振る。
そして、今日1大きな声でこう断言したのだった!
「大丈夫じゃ!・・・女の価値は胸の大小ではない!」
何も無いだだっ広い平野・・・。
そこに、1人の男として妻を持ち、子を養い、人生の荒波をくぐり抜けてきた翁の声が響き渡る。
そして、それを2番目に間近で(無論、1番目は椅子とかしていた元勇者)聞いていた少女サリヤ・・・。
その目は心底冷え切ったものになっていた・・・。
「・・・エンゾーさん。普通、ここは私の容姿をフォローしてくれる場面では?何故に胸の大小が云々という発言が出てくるんです?私、別に胸は小さくありませんが?年相応には育ってますが?」
「サリヤ嬢・・・気にすることは無いんじゃ。大輪の花はソレは美しい・・・。しかし日陰にひっそりと咲くのも、また乙というものじゃて」
「人の胸を乙とか言うなぁー!!!」
「・・・ということじゃ。引き受けてくれるかの?」
「・・・何が「ということじゃ」なのか分からないんですけど!?」
と、そこで今までずっと黙っていたもう1人の男・・・椅子と化していたジンがゆっくり起き上がる。
丁度頭部に載っていたエンゾーを、その首1つで難なく持ち上げ、肩車しているような状態になった元勇者は、顔にこびりついた泥を軽く払ってこう言った。
「まあ・・・引き受けるも引き受けないも、とりあえず会ってから決めてくれればいいさ。百聞は一見に如かずって言うしな!」
「・・・なら、ここで、こんな話する必要なかったでしょ!?」
結局、頼みと称したセクハラを受けただけの少女は、男2人と距離をとって少し前を歩き出す。
そして数歩歩みを進めたところで、そもそも自らが何を尋ねたのかを思い出し、改めて問う。
「ねえ!結局、目的地は何処なのよ!?」
それに対し、勇者は何を今更とばかりに、こう答えたのであった。
「え?『魔王城』だけど?」
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