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資格を学んで人生やり直し  作者: 仕事が生きがい~結婚諦めた~
第三章 資格を取った後

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第四十四話 線の向こうに立つ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

翌朝、男はいつもより早く出社した。


誰もいないフロア。

まだ空気が仕事になりきっていない時間帯。

その静けさが、今はありがたかった。


前日に引いた線は、

まだ誰にも評価されていない。

成功とも失敗とも呼ばれていない。


ただ、存在している。


男は、自分の席に座り、

机の上を整えた。


書類の山も、

昨日のメモも、

いつもと何も変わらない。


それでも――

**立っている場所は、確実に違っていた。**


---


午前中、何人かが男の席を訪れた。


質問も、相談もない。

ただ、用件とは別の一言だけが残る。


「……大変でしたね」

「覚悟、要りましたよね」


男は、深く頷かなかった。

否定もしなかった。


「仕事ですから」


それだけで済ませた。


線を引いたことを、

武勇伝にしない。

苦労話にも、しない。


**それが、線を引く人の最低限の姿勢**だと、

男は思っていた。


---


昼過ぎ、山田が近づいてきた。


「……ありがとうございました」


昨日とは違う声だった。

軽く、前を向いた音。


男は、短く答える。


「次は、君が誰かを守れ」


それで、十分だった。


資格は、

自分を正しくするために取るものじゃない。


**判断が、孤立しないようにするため**にある。


誰かが線を踏み守ったとき、

一人にしないために持つものだ。


---


夕方、フロアに灯りが戻る。


今日も、何かが劇的に変わったわけじゃない。

損失は消えていない。

不満も、完全にはなくなっていない。


それでも、

踏み外れなかった線がある。


その線の向こう側に、

男は逃げずに立っている。


---


帰り際、

窓に映る自分を見て、男は思う。


資格を取る前より、

楽になったわけじゃない。


むしろ、

重くなった。


だが――

**戻れなくなった判断に、

 一人で立たなくてよくなった。**


それで十分だ。


線を引き、

線の外にも立ち、

名前を拾い、

黙って引き受ける。


その積み重ねが、

男の仕事になった。


資格を取った男の話ではない。

**資格のあと、どう立ったか**の話だ。

お読み頂き、ありがとうございます。

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