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資格を学んで人生やり直し  作者: 仕事が生きがい~結婚諦めた~
第三章 資格を取った後

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第四十二話 線の外で引き受けること

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

それは、正式な仕事ではなかった。


会議に出る義務も、

報告書を書く必要もない。

上長に説明する理由すら、ない。


それでも男は、

線の外に一歩、足を置いた。


昼休みの終わり。

フロアの空気が仕事に戻り切る前の時間帯。

男は、山田を呼び止めた。


「さっきの続きだ」


山田は、驚いた顔をしたが、すぐに頷いた。


「会議の話ですか?」


「いや。

 君の話だ」


線を引く話ではない。

判断を返す話でもない。


**名前の話**だった。


男は、給湯室の隅で立ち止まる。


「君の判断は、合っていた。

 少なくとも、組織として守るべき線の内側にあった」


山田は黙って聞いている。


「でも、そのあとで

 君が一人になったのは事実だ」


男は言い切った。


「そこは、

 線を引く側の怠慢だ」


責任を取る言葉だった。

制度でも、理屈でもなく。


「……自分、間違ってないって、

 思ってよかったんですか」


絞るような声。

男は、迷わず頷いた。


「思っていい」


それだけで、

山田の肩が、目に見えて下がった。


---


席に戻る道すがら、

男は自分の中の変化を感じていた。


線を守る。

判断を残す。

戻れる道をつくる。


それらは、

**線の内側の仕事**だ。


だが、

取りこぼされる名前は、必ず出る。

線が正しければ正しいほど、なおさら。


そこに手を伸ばすことは、

規程には書けない。

資格の範疇でもない。


それでも。


**誰かがやらなければ、

組織は静かに人を失っていく。**


男は、それを知ってしまった。


---


夕方、

机の上を片づけながら、男は思う。


これから先、

もっと厳しい判断もある。

戻せない線も増える。


それでも――

すべてを役割に閉じ込めない。


線の外に立つことを、

避けない。


それが、

資格を取ったあとの仕事だと、

男は今、はっきり理解していた。


次の問いへ向かう前の、

静かな決意の話だった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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