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資格を学んで人生やり直し  作者: 仕事が生きがい~結婚諦めた~
第三章 資格を取った後

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第四十一話 守れなかった名前

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

その名前は、議事録には残らなかった。


正式な議題ではなかったし、

誰かが口に出して主張したわけでもない。

ただ、会議の終わり際、

ふとした沈黙の中に落ちた名前だった。


「……あの件、山田のところ、どうなった?」


完全に独り言のような声音だった。

だが、男の耳はそれを拾った。


山田。

少し前に配置換えになった若手。

判断の線を守ろうとして、

現場で浮いたまま、声を上げられなくなっていた男だ。


「今回の件とは、直接関係ありません」


誰かがそう言い、

話題は自然に流されようとした。

会議は、前に進む流れを選んだ。


男は、その流れを止めなかった。


止められなかった、の方が正しい。


---


会議室を出たあと、

男は一人で廊下を歩きながら、

胸の奥に残った違和感を反芻していた。


線は守った。

判断も崩していない。

誰かに責任を押しつけてもいない。


それでも――

**守れなかった名前がある。**


線を引くことに集中するあまり、

線の内側で立ち尽くしていた人間を、

置き去りにしていた。


男は、その事実から目を逸らさなかった。


資格では、守れない部分だ。

制度でも、規程でも、拾えない場所。


だが、

**見なかったことにはできない。**


---


その日の夕方、

男は自分から山田の席に向かった。


「少しいいか」


短い一言。

山田は驚いたように顔を上げ、頷いた。


「最近、どうだ」


抽象的な問いだった。

正解のない聞き方だ。


山田はすぐには答えず、

少しだけ考えてから言った。


「……正直に言うと、

 自分の判断が、間違ってたのか、分からなくなってます」


男は、すぐには答えなかった。


線を示すことも、

判断を返すこともしない。


ただ、言った。


「君が守ろうとした線は、

 間違ってなかった」


その一言で、

山田の表情が、わずかに崩れた。


「ただな」


男は続ける。


「線を守った人間が、

 一人で立たされる状態は、

 俺の落ち度だ」


責任を引き取る言葉だった。


---


席に戻りながら、男は思う。


線を引くことと、

人を守ることは、

完全には一致しない。


だからこそ、

**線の外にも、足を伸ばさなければならない。**


次に向かうために、

ここで一つ、認めなければならないことがある。


資格で守れるのは、

判断と構造までだ。


**名前を守るのは、

資格を取ったあとの、人の仕事だ。**


男は、その重さを、

はっきりと背負い始めていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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