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資格を学んで人生やり直し  作者: 仕事が生きがい~結婚諦めた~
第三章 資格を取った後

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第三十五話 決めたのは誰か

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

返事は、翌日の午前中に来た。


鈴木からの社内メールは短く、要点だけが並んでいた。

件名に「対応結果」とある。


男はすぐには開かなかった。

先にコーヒーを一口飲み、

一呼吸置いてから画面に向き直る。


――決めたのは、彼だ。

そう自分に言い聞かせて。


メールには、経緯と結論が淡々と書かれていた。


・無償対応は行わない

・ただし、追加作業の一部を有償で切り分け

・次回以降の条件を明文化

・文面は先方の立場に配慮して調整済み


最後に、一行だけ補足があった。


> 思ったより、ちゃんと話はできました。


男は画面を見つめたまま、しばらく動かなかった。


正解かどうかは、分からない。

もっと丸い選択もあったかもしれないし、

もっと強く出る道もあった。


それでも――

**彼自身で引いた線**だった。


昼過ぎ、鈴木が声をかけてきた。


「昨日は、ありがとうございました」


その言い方に、少しだけ違和感があった。


「礼を言うのは、まだ早いだろ」


男がそう返すと、鈴木は苦笑した。


「正直、怖かったです。

 決めるって、こんなに胃が痛いんだなって」


「それが普通だ」


男はそう言って、続けた。


「俺が全部決めてたら、

 今日のその感覚は残らなかった」


鈴木は、静かに頷く。


「……はい。

 でも、今回のことは、覚えておこうと思います」


それで十分だった。


男にできるのは、

判断を軽くする準備をすることだけだ。

引き取らない。

代わりに、残す。


午後、別の部署からも同じような相談が舞い込む。

内容も温度も違う。

だが、流れは同じだった。


即答しない。

線を示す。

決断は返す。


その繰り返しの中で、男は気づく。


資格を取ったから、景色が変わったのではない。

**景色を誰に見せるか**が変わったのだと。


夕方、社長とすれ違ったとき、

何気ない一言が落ちてきた。


「最近、あちこちが静かだな」


男は少し考えてから答える。


「多分、みんな考えてます」


社長はそれ以上、何も聞かなかった。


仕事とは、

問題を消すことではない。

判断を渡すことでもない。


**自分で決めたと、後で言える場所を残すこと。**


そうした“成果として残らない仕事”で、

静かに輪郭を深めていく。

お読み頂き、ありがとうございます。

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