表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
資格を学んで人生やり直し  作者: 仕事が生きがい~結婚諦めた~
第一章 資格を学ぶとは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/57

第三話 個人情報は、箱ではなく責任だった

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 それは、ごく普通の金曜日に起きた。


「この前送ってもらった名簿、別の会社の情報が混じってません?」


 一本の電話で、空気が変わった。


 男は受話器を握ったまま、動けなくなった。

 名簿。

 個人情報。


 名前、住所、電話番号。

 それらは今や「情報」ではない。**守るべき対象**だ。


 事務所に緊張が走る。

 営業、総務、上司が集まり、データを確認する。


 確かにあった。

 別の取引先の個人情報が、数件混じっている。


「誰がやった?」


 その問いに、意味はなかった。

 ビジネス実務法務3級で、男はもう知っている。


 **会社が持っている以上、会社の責任になる。**


 個人情報保護法の基本。

 個人情報とは、**生存する個人を識別できる情報**。

 名前だけでも、番号だけでも、他と組み合わされば該当する。


 そして、個人情報を扱う者には義務がある。


 ・利用目的を定める

 ・必要な範囲でのみ利用する

 ・安全に管理する


 つまり――

 **漏れた時点で、管理に問題があった可能性**が出る。


「まず謝ろうか」


 誰かが言った。

 男の背中に、冷や汗が流れる。


 第二話で学んだ言葉が、ここでも頭をよぎる。

 **安易な謝罪は、責任を確定させることがある。**


 個人情報事故では、やるべきことの順番がある。


 ・事実確認

 ・影響範囲の把握

 ・再発防止策の検討


 男は、静かに口を開いた。


「まず、何が起きたか整理しましょう。

 何件、どの情報が、誰に渡ったのか」


 それは逃げではなかった。

 **正しい初動**だった。


 調査の結果、誤送信は五件。

 相手先は取引関係にあり、情報の削除に応じてくれる姿勢を示している。


 故意ではない。

 だが、**過失はあるかもしれない**。


 ここで思い出すのは、「過失」の定義。


 **注意すれば防げたことを、防がなかった状態。**


 名簿は最新と旧版が同じフォルダにあった。

 確認フローは属人化していた。

 チェック体制がない。


 完全な事故だ。


 上司が呟いた。


「これ、どこまで問題になるんだ」


 男は、教科書の一節を思い出す。


 個人情報事故で問われるのは、

 ・漏えいしたか

 ・適切な管理措置を取っていたか

 ・事故後、誠実に対応したか


 **起きた事実より、対応姿勢が評価されることもある。**


 会社は決めた。


 ・事実を説明する

 ・削除確認を取る

 ・再発防止策を明文化する


 該当する取引先には、事実だけを丁寧に伝えた。

 感情的な言葉は避け、改善策を示す。


 数日後、大きな問題にはならなかった。


 だが、男の中では、何かが変わっていた。


 個人情報は、箱に入れて鍵をかければ終わりではない。

 **扱う人間の意識と、仕組みそのもの**だ。


 その夜、男は一人、社内ルールの下書きを作った。


 ・保存場所の整理

 ・アクセス権限

 ・送付前チェック

 ・事故時の報告ルート


 完璧ではない。

 だが、**知っている者が、一歩目を作る**ことはできる。


 資格の勉強は、点数のためではなかった。

 失敗が起きたとき、

 **立ち止まり、順番を間違えないための言葉**をくれた。


 会社を守るとは、

 誰かを罰することではない。

 同じことを、二度起こさない仕組みを作ることだ。


 男は、画面を閉じた。


 まだ仕事はうまくない。

 だが少なくとも、

 **知らなかったから壊した**とは、言われない。


 拾われた意味が、少しだけ分かった気がした。

お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ