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資格を学んで人生やり直し  作者: 仕事が生きがい~結婚諦めた~
第一章 資格を学ぶとは

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第二話 クレームは、誰の責任か

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 その電話は、昼休みの直前に鳴った。


「御社の製品、不良が出てるんですけど」


 受話器の向こうの声は、静かだった。だが男には分かった。

 これは怒ってはいないが、**納得していない声**だ。


 営業担当が席を外していたため、男が一次対応に出た。


「詳しい状況を確認させていただけますか」


 言葉は丁寧だった。だが、頭の中は白い。

 クレーム。

 責任。

 誰が、何を、どこまで。


 電話を切った後、営業と上司が集まった。


「これ、ウチの責任かな?」

「工程的には問題ないはずだが……」


 その会話を聞きながら、男はふと、昨夜読んだ参考書を思い出した。


 **債務不履行。**

 **不法行為。**


 ビジネス実務法務3級では、クレーム対応の根本をここで学ぶ。


 債務不履行とは、

 **約束した内容を、約束通りに果たさないこと**。


 ・納期を守らない

 ・品質が契約内容と異なる

 ・約束した範囲を満たしていない


 これらは、感情ではなく「契約基準」で判断される。


 一方、不法行為。

 これは契約がなくても発生する。


 **故意または過失によって、他人に損害を与えた場合**だ。


 男は気づく。

 **責任の有無は、「謝ったかどうか」では決まらない。**


 問題は三つだ。


 ・契約内容は何か

・それが守られているか

・損害と因果関係があるか


 営業が言った。


「とりあえず、ウチが悪いって謝っといた方が丸く収まらない?」


 その瞬間、男の中で警報が鳴った。


 **安易な謝罪は、責任を認めることになる場合がある。**


 過失。

 法務の本では、こう定義されていた。


 **注意すれば防げたはずのことを、防がなかった状態**。


 社内での確認不足。

 曖昧な仕様。

 不十分な説明。


 「やるべき注意」を尽くしていたかどうかが、問われる。


 男は勇気を出して口を開いた。


「契約書と仕様書、先に確認しませんか。

 それから事実関係を整理して、回答した方がいいと思います」


 一瞬、間が空いた。

 だが上司は、頷いた。


「そうだな。まず事実だ」


 資料を見直すと、問題が見えてきた。

 その不具合は、**明文化されていない仕様の範囲**だった。


 契約書には書かれていない。

 しかし過去のやり取りでは、口頭で触れている。


 ここで論点になるのが、「債務の内容」だ。


 契約書に書かれていなくても、

 **当事者が合意していれば、契約内容になる可能性がある**。


 再び、男は本の一文を思い出す。


 ――契約とは、意思表示の合致。


 つまり、口約束も軽くない。


 さらに、損害賠償。


 損害賠償が成立するには、原則として四つの要件が必要だ。


 ・故意または過失

・権利侵害(約束違反など)

・損害の発生

・因果関係


 全部が揃って初めて、「責任を負う」。


 感情論ではない。構造だ。


 最終的に会社は、事実を説明し、

 改善対応のみを約束した。

 損害賠償には応じなかった。


 クレームは収まった。


 電話を切った後、営業がぽつりと言った。


「変に謝らなくてよかったな」


 男は静かに息を吐いた。


 この一件で、はっきり分かったことがある。


 クレーム対応とは、

 **相手を否定することでも、全面降伏することでもない。**


 事実を整理し、

 責任の有無を冷静に判断し、

 必要な対応だけを選ぶこと。


 それは感情ではなく、知識の仕事だった。


 その夜、男は机に向かった。


 自分はまだ、仕事ができる人間ではない。

 だが、**守るために立ち止まれる人間**には、なり始めている。


 次に何を学ぶべきか。

 答えは、もう決まっていた。


 会社が最も恐れる事故――

 **情報**に関する責任だ。

お読み頂き、ありがとうございます。

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