少年、反逆者のことを知る。
※
「いいか、ニル。お前の仕事は俺の護衛だ」
再び色眼鏡で顔を隠したリュウガが、僕に言う。
僕とメフィは街の中を、リュウガを追いかけるようにして走っていた。
「それは分かったけど、さっきの【賽は投げられた】ってどういう意味?」
「それはだなー、もう最後までやり切るしかないという意味なんだぞ。勉強になっただろう、ニル」
得意げな笑顔を浮かべながら、メフィが胸を張る。
「……悪いけど、僕が訊きたいのはそういうことじゃないんだ」
「えっ!? なんでなんだ!! 私に意地悪を言ってるのか!?」
「【リュウビ】の武力行為を同時多発的に行った結果、本来タクシャカ―――つまり、ロニ区総督と総督府を守るべき部隊まで動いた。さっきのはそれを知らせる通信だ。あとは俺達が総督府に乗り込んでタクシャカの首を取るだけだ」
鬱陶しそうにリュウガが答える。
「警備が手薄になったって言っても、相手は軍隊だろ?」
「そこでお前の出番なんだよ。お前は俺をタクシャカの元へ運ぶのが仕事だ。あとは俺に任せろ」
「出来ないとは言わないけど、どうして君がそこまで? ルクト家―――皇帝の血筋じゃないのか、君は?」
「お前は本当に質問が多いな、ニル。俺にだって色々事情があるんだよ。だがな、一つだけ確実なのは、この復讐の根本にあるのは恩返しってことなんだ」
「恩返し?」
僕の言葉にリュウガが頷く。
「帝国を滅ぼすことでその支配からロニ家を解放し、ノイン・ロニに自由を返す。それが俺の望みだ」
「ノインさんに……?」
この名前をリュウガの口から聞くとは思わなかった。
一体どういう関係が―――いや、待てよ。
そういえばノインさん、前にルクト帝国の皇子と遊んでいたこともあるとか言ってたよな。
ってことは、まさか――――。
「俺が一般人の中に紛れることができたのはロニ家の人脈があったからだ。その恩を返すんだよ」
「ああ、ノインさんも言ってたよ、皇子と遊んでたって」
「の、ノインが俺の話を!?」
突然リュウガが立ち止まり、僕の肩を掴む。
「な、なんだよ急に!」
「あいつ、俺のこと忘れてなかったんだな。そうかそうか……って、なんでお前がノインのことを知っているんだよ」
「少しの間、僕はノインさんの屋敷に住まわせてもらってたんだ。あの人は僕にとっても恩人だよ」
「……なあ、ニル」
「改まってどうしたの」
「ノインと同じ屋根の下で一晩過ごした件について、後で一発殴らせてもらうからな」
何を言ってるんだこいつは。
というか、皇子であることは否定しなかったよな。
本人が言っていた通り色々複雑な事情を抱えているのだろう、この男も。




