少年、反逆者と手を結ぶ。
その時、僕らの会話に割り込むように、クロの腰に装着してあったトランシーバーが鳴った。
『こちらFの8番。【賽は投げられた】。繰り返す。【賽は投げられた】』
その言葉を聞いた瞬間、クロの顔にいびつな笑みが浮かんだ。
「ちょうど準備も整ったらしい。行こうぜ」
「行くってどこへ? ――その前に、君の目的は?」
「言っただろうが。俺の目的はこの国を滅ぼすこと。そして今から行くのは、そのはじまりとなる場所だ」
「始まりとなる場所……?」
クロは窓から外に出ると、階段に乗り移った。
「何ぼーっと突っ立ってるんだよ。来い! お前にもやってもらわなければならないことがある」
「だ、だけど僕は、無差別に人を殺すようなことに協力したくない!」
その瞬間、僕は窓の外から伸びて来た手に胸倉を掴まれていた。
クロの手だ。
「幸せな世界を創るんだろうが!」
「……!」
「この帝国をぶっ壊すとこまでは俺がやってやる。その先はお前に任せてやるから、今は俺の言うことに従え!」
クロの赤い瞳は燃えるように輝いていた。
僕はその剣幕に自分が圧倒されているのを感じた。
「―――ニル・ジェーンだ」
「何?」
「僕はニル・ジェーンだ。ニルと呼んでくれ」
「……ニル・ジェーン?」
クロは僕の首元から手を離した。
「ちなみに私はメフィだ。よろしく」
「ニル・ジェーンか……」
「おい、可愛い私を無視するとはいい度胸だな」
メフィが頬を膨らませる。
だけど、クロへ視線を向けることは無かった。
ちょっとは構ってあげないと、メフィが可哀そうだぞ……。
ほら、心なしか涙目になってるし。
「よ、よしよし、メフィ」
「うう……私に優しくしてくれるのはお前だけだ、ニル」
「リュウガ・シャルル・ルクトだ」
「……え?」
僕はクロの方を見上げた。
クロは、悲しみと憎しみの入り混じったような、複雑な表情をしていた。
「俺の名前だ。二度は言わん」
「ルクトって言ったよね?」
「二度は言わんと言ったはずだが? それよりも、もう時間がない。急ぐぞ、ニル……メフィ」
クロは身を翻し、階段を駆け下りて行った。
「なんだ、ちゃんと私の名前を聞いてたんじゃないか。もしかしてあれか、ツンデレというやつか?」
ふいにクロが立ち止まる。
「おいニル!」
「なんだよ」
「その小うるさい女を黙らせろ! いちいち俺の癇に障るんだよ!」
「……だってよ、メフィ」
「ふん、私の可愛さが分からんとは無粋な奴だ」
再びメフィが頬を膨らませる。
―――とにかく今は、クロ……いや、リュウガ・シャルル・ルクトと名乗るあの男についていく
か。
僕はリュウガの後を追って、長い階段を駆け下り始めた。
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