少年と必殺技。
「抵抗は無駄だ。降伏しろ。でなければ強制排除を行う」
僕はただ、呆然と血と肉の破片と化した男の死体を眺めていた。
――――殺したのか? 何の躊躇もなく?
「奴らは殺しのプロだ。このままだと私たちも危ない。逃げるぞ、ニル」
僕に覆いかぶさったままメフィが言う。
「いや、だけど……ナパ人を見殺しには……」
「馬鹿なことを言うな。放っておけばこいつらもシュニ人を殺しただろう。それともあれか、ニル。今更平和主義にでも目覚めたか?」
「何も殺すことは……彼らはもう武器もなかったのに」
「それこそ馬鹿な考えだな。お前だって私を守るとき、あの山の中でシュニ人を殺しただろう。一緒だよ」
「……一緒?」
「とにかく、今ここを離れなければ私たちの身が危険に晒される。逃げよう、ニル」
「分かったよ。だけど、その前にやらなきゃいけないことがある」
「……お前、妙な気を起こすなよ?」
「僕らは運命共同体なんだろ? 付き合ってもらうよ。しっかり捕まってて」
「お前は本当に馬鹿だな」
呆れたようにメフィが呟いたのを合図に、僕は立ち上がり、剣を片手に走り出した。
――――治安警察の隊列へ向かって。
僕の背中にしがみつくメフィの体温を感じた。
「発砲を許可する」
隊長らしき男がそう言ったのと同時に、武装集団は一斉に僕めがけて銃を放った。
だけど―――遅い。
銃口から発射される弾丸の一発一発が、僕にははっきりと見えた。
「斬れる……」
そう思った瞬間には、僕は弾丸を一つ残らず切り落としていた。
そしてその勢いのまま敵の陣内に突っ込んだ。
呆気に取られたような兵士たちに対し、剣を振りかざす。
その瞬間メフィが叫んだ。
「必殺のぉ! オー〇斬りだぁーっ!」
「え!? 何だって!?」
「……いや、何でもない」
直後、僕の頬に鋭い痛みが走った。
撃たれた―――そう気づいたときには、僕は周囲の兵士を峰打ちにしていた。
「メフィが余計なことを言うから!」
「すまない。悪ふざけが過ぎたらしい。そんなことより早く脱出しよう」
「分かってるよ!」
動揺の残る治安警察たちを尻目に、僕らはその場を離れた。
※
路地裏に逃れた僕らは、人目につかないところで息をついた。
「どうやらあのテロ行為は同時多発的に行われたものらしいな。見た限りでは、中心街のあちこちで同様の事件が起こっている」
「まあ、それはそれとして……〇ーラ斬りってなんだよ」
「ん? いや、無言で敵を斬り倒していくのもアレかと思ってな、技の名前を考えておいてやったのだ。一応他にも天翔〇閃とか月〇天衝とかを考えていたのだが、どれが良かった?」
「どれも却下だ!」
僕が怒鳴ると、メフィは落ち込んだような表情で、瞳に涙を浮かべながら僕を上目遣いで見上げ、
「……ダメか?」
「駄目だ!」




