少年、流行に触れる。
※
「カップルの方ですか?」
「「はい?」」
店員さんの言葉に、僕とメフィは同時に反応していた。
中心街の、表通りの、メフィ曰く最近できたばかりで大人気だというタピなんとかミルクティーのお店。
長い列に並び幾分もの時を呆然とすごした僕らは、ようやくレジに辿り着き望みの品を注文したところだった―――のだが。
「あのさメフィ、カップルって何?」
僕はメフィに囁くようにして訊いた。
「人間のくせにそんなことも知らんのか。男女二人組のことだ」
「ああ、つまり……アベックのこと?」
僕が言うと、メフィは驚いたように目を見開いて、
「そ、そんな言い方をするのはお爺ちゃんお婆ちゃんの世代だぞ」
「……いや僕、本当はお爺ちゃんだし」
「ああ、そうか……」
一瞬の沈黙。
「で? この場合僕らはカップルで良いわけ?」
「カップルとは男女の二人組のことなのだから間違いないだろう。えーと……はい、私たち仲良しカップルです」
「そうそう、僕らカップルです。なかよぴっぴです」
僕らが答えると、店員さんは何ともいえないような表情を浮かべながら、少々お待ちください、と言った。
※
「あのさメフィ」
「何だ」
タピオカミルなんとかティーのお店の、テラス側の席に、僕とメフィは向かい合わせで座っていた。
僕らの間には大きめのタピなんとかティーの容器が置かれていて、そこにはハート形をした二股のストローが突っ込まれていた。
店員さんが、サービスですと言って用意してくれたものだ。
「なんか間違ってる気がするんだけど、これ」
「何が間違っているというんだ。どうせ二人で飲むものだから、たとえストローがハートの形をしていても関係ないだろう。大切なのは味だ」
「いやこれ、めっちゃ顔寄せないと飲めないじゃん。不便じゃん」
「フッ。私の美貌を間近で拝みながら飲めるなんて、二度美味しいじゃないか」
「…………」
じゅるるるるっ、と音を立てながらメフィがタピオカミルクティーを啜る。
あ、やっと言えた。タピオカミルクティーだ。
「うーん、飲みづらいな。あとこの黒い粒―――なんか、カエルの卵みたいだな」
「JKに大人気なんでしょ? 喜びなよ。……ところでJKって何?」
「さあ、私も良くは知らん。中年のおっさんが大好きなものだと聞いている」
「ふーん」
タピオカミルクティーと同じような類の物だろうか。
ふと僕は通りの方へ視線を向けた。
中心街ということもあって多くの人で賑わっていて、道路ではひっきりなしに車が行きかっている。
しかし、立ち並ぶ建物の向こうを見てみると、遠くに廃墟が立ち並ぶ街並みが見える。
ナパ人たちの強制隔離地だ。廃墟の街の中央には、、かつてナパ人の地として栄えていた名残だろうか、ひときわ高い塔があった。
……まだ僕は、あの隔離地へ行ったことはない。




