少年、決意する。
「君は僕に―――復讐をしろって言ってるのか?」
「復讐を理由に契約を果たしてくれるのなら、そうしてくれ」
光速の抜刀術をもって、ナパ人に復讐をする―――しかし、それは国を滅ぼすことにはならない。
むしろシュニ人のものであるこのルクト帝国に貢献することになってしまう。
だから僕が滅ぼすべきは、ナパ人とかシュニ人とか、そういうものじゃない。
この世界における、差別とか優越感とか嗜虐性とか――そういうものを滅ぼし、誰もが幸せな世界を創る。
僕の両親や、ノインさん、そして僕自身のような、不平等の犠牲者を生まないために。
僕の力は、そのために―――幸せを守り、創りあげるために、剣を振るおう。
「僕に出来ると思う?」
「出来なければ私と死ぬだけだ――が、私はともかく、悪魔と契約した人間がまともに死ねると思うなよ」
「やれるだけやってみるよ」
僕はベンチから立ち上がった。
その反動で、メフィが僕の膝からずり落ちる。
「痛っ……お前、いきなり立ち上がるのはダメだぞ。心の準備をさせてくれ」
アスファルトの地面にぶつけたお尻をさすりながら立ったメフィが、僕の顔を睨みつける。
その目の端には涙が浮かんでいるように見えた。
「ずいぶん打たれ弱い悪魔だね」
「私のハートはガラス細工よりも脆く繊細なんだ。扱いには気をつけろよ」
「はいはい」
「はいはい、じゃない! 私はニルに謝罪を要求する!」
「分かったよ、ごめんごめん」
「ごめんで済むなら警察はいらないぞ!」
歩き出そうとした僕の前に、両手を広げたメフィが立ちふさがった。
「……じゃあどうしろって言うんだよ」
「この道をまっすぐ歩けば中心街があるのは知っているな?」
「知ってるけど。本当はそこで合流する予定だっただろ」
「そうだ。ところで、中心街では最近タピオカミルクティーが流行っていると聞く」
「へー、なにそのタピ……なんとかってやつ」
「JKを中心に大流行している飲み物だ。あーっ、私も飲んでみたいものだなぁ、そのタピオカというものを。誰か買ってくれないかなあーっ!」
意味ありげな視線を僕に―――正確に言えば、僕の来ている服のポケットから覗いている、紙幣の入った封筒へ向けた。
「自分で買えば? 悪魔なんだろ。そのくらいできるだろ」
「私を地面に落として臀部に怪我をさせたのはどこのどいつだったかなぁー? 私のお尻が四つに割れてたらどう責任取ってくれるのかなぁー? 今ならタピオカで許してあげるんだけどなぁー?」
「……悪魔って斬り殺せるのかな……」
「ちょ、ちょっと待てニル。落ち着け。私たちは運命共同体だ。仲良くやろう。もし買ってくれたら半分分けてやるから。な? だからその物騒な剣を私に向けるのはやめるんだ、うわ何をするやめ―――」
かくして僕らは、街へ旅立つことになったのだった。
……旅立つと言っても歩いて数十分の距離だけど。
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