「守護の決意」
第九話
やわらかな光が部屋に差し込んでいた。
ミルはゆっくりと目を開ける。
少しぼんやりした視界。
天井。
そして――
横から声が聞こえる。
ナナ
「……起きた?」
ミル
「……ナナ?」
ミルはゆっくり体を起こす。
頭が少し重い。
ミルの手の中には、
猫じゃらしが握られていた。
穂先からはほんのりと、
薄いピンク色の光。
強い光ではない。
優しく、静かな光。
ナナ
「まだ光ってる」
ナナは少し不思議そうに見る。
ミル
「……ほんとです」
少しの間。
ミル
「私……倒れちゃったんですね」
ミルは少し恥ずかしそうに笑う。
ナナ
「うん」
ナナは小さく頷く。
ナナ
「びっくりしたよ」
ナナ
「急に倒れるんだもん」
ミル
「ごめんなさい」
ナナ
「謝らなくていいよ」
ナナは少し笑う。
ナナ
「ちゃんと助けたんだから」
ミル
「……」
ミルは猫じゃらしを見る。
少しだけ照れたように笑う。
ミル
「えへへ……」
ナナ
「でもね」
ナナ
「本当に心配したんだから」
ナナはベッドの横の椅子を指さす。
そこには
タオル
水の入ったコップ
ナナ
「ずっとノワと看てたんだよ」
ミル
「え!?」
ミルは驚く。
ミル
「ずっとですか?」
ナナ
「うん」
ナナ
「夜ずっと」
ミル
「そんな……」
ミルは少し慌てる。
ミル
「すみません!」
ナナ
「だから謝らないの」
ナナは優しく笑う。
少しの沈黙。
ナナ
「……ノワがね…」
ミル
「ノワ?」
ナナ
「うん…すごく心配してた」
ミル
「ノワがですか?」
ナナ
「そう…」
ナナ
「でも」
ナナは少し窓の外を見る。
ナナ
「さっき外に出ていった」
ミル
「外に?」
ナナ
「一人になりたいみたい」
ミル
「……」
ミルは少しだけ考える。
ナナ
「呼んでくるね」
ナナは立ち上がる。
ナナ
「きっと喜ぶよ」
ミル
「……はい」
ミル
「あっ、ナナ」
ナナ
「ん?」
ミル
「ナナにもありがとうです」
ナナ
「ええ。ゆっくりしてて」
ナナは部屋を出ていく。
扉が静かに閉まる。
部屋は静かになる。
ミルは猫じゃらしを見る。
ミル
「……」
ミル
「まだまだですね」
ミルは少しだけ笑う。
ミル
「もっと頑張らないと」
---
外。
静かな空き地。
ノワはベンチに座っていた。
風が静かに吹く。
ノワ
「……」
ノワは空を見上げる。
しばらく黙ったまま。
ノワ
「……」
ノワ
「私」
小さくつぶやく。
ノワ
「何もできなかった」
拳を握る。
ノワ
「ミルは」
ノワ
「ちゃんと戦ってたのに」
ノワ
「私は」
ノワ
「見てただけ」
ノワは小さく息を吐く。
ノワ
「……情けない」
その時。
後ろから声。
ルナ
「じゃあ」
ノワ
「!」
ルナが立っていた。
ルナ
「一緒に戦う?」
ノワ
「……は?」
ルナは小さな箱を差し出す。
箱には
肉球スタンプ。
ノワ
「何これ」
ルナ
「開けて」
ノワは箱を開ける。
中に入っていたのは
小さな機械。
ノワ
「……懐中電灯?」
ルナ
「レーザーポインター」
ノワ
「……」
ノワはルナを見る。
ノワ
「ふざけてるの?」
ルナ
「あの方は」
ルナ
「ふざけたものなんて渡さないわ」
ノワ
「あの方?」
ルナ
「偉い人」
ノワ
「濁すわね」
少し目を細めるノワ。
ルナ
「そのうち分かる」
ノワはレーザーポインターを見る。
ノワ
「……こんなので」
ノワ
「戦えるの?」
ルナ
「試してみれば?」
その時。
ナナが走ってくる。
ナナ
「ノワ!」
ノワ
「!」
ナナ
「ミル起きたよ!」
少し離れた場所からナナが手を振っている。
ノワの目が少し開く。
ノワ
「すぐ戻るわ」
ノワがそう言うとこくりと頷いたナナが先に家に戻って行った。
ノワ
「これがあれば私も戦えるの?」
ルナ
「ええ…その覚悟と想いがあればね」
ノワ
「……」
ノワは手の中のレーザーポインターを見る。
そして小さく息を吐く。
ノワ
「やってやるわよ…」
ノワ
「……ミル」
ルナは見る。
ノワが静かに決意したその姿を。
第九話 完




