「ドキワクな出会い」
第二部 第二十八話
ドキワクな出会い
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しばらくの間。
森には静かな空気が流れていた。
最初に口を開いたのは、
ミルだった。
ミル
「ご、ごめんなさい!」
「初めて魂を見つけたので!」
「嬉しくてつい……」
小さな光は、
少しだけ揺れた。
そして。
???
「……ぷっ」
思わず吹き出した。
???
「ははは!」
「そういうことか!」
「いやぁ!」
「びっくりはしたけど!」
「悪気があった訳じゃないんだな!」
ミルは恐る恐る顔を上げる。
ミル
「はい……」
???
「じゃあ気にしなくていいって!」
「こうして会えたのも何かの縁!」
「結果オーライ!」
ミルの表情がぱっと明るくなる。
ミル
「ありがとうございます!」
ノワ
「切り替え早いわね」
ミル
「良かったです!」
場の空気はすっかり和らいでいた。
ルナは静かに一歩前へ出る。
ルナ
「いきなりで悪いのだけれど」
「私達は猫神様から頼まれて、
こうして一人で彷徨っている魂を探しているの」
???
「俺を?」
ルナ
「ええ」
「だからあなたを猫神様の所まで案内したいのだけれど、
いいかしら?」
魂は少し考えるように揺れた。
ルナ
「安心して」
「あなたに危害を加えるつもりはないわ」
???
「猫神様かぁ」
「そんな神様が居るんだな」
ミル
「居ます!」
「とっても優しい神様です!」
ナナ
「きっと安心できるわ」
魂は四人を順番に見回した。
???
「なるほどなぁ」
「君達を見てると、
悪い人じゃないって分かるよ!」
「俺もちょっと困ってたんだ」
「じゃあよろしく頼む!」
ミル
「はい!」
「よろしくお願いします!」
四人と一匹、
そして一つの魂は、
再び森の中を歩き始めた。
しばらく歩いていると。
魂は四人の姿を、
興味深そうに見回した。
???
「なあ!」
「君達って、
いつもこうやって一緒に居るのか?」
ミル
「はい!」
「いつも一緒です!」
???
「へぇ!」
魂は楽しそうに揺れる。
???
「いいな!」
「みんなでこうやって歩いてると、
楽しそうだ!」
ミル
「楽しいですよ!」
「毎日色んなことがあります!」
ノワ
「色んなこと起こしてるの、
大体あんたでしょ」
ミル
「そうでしたっけ?」
ノワ
「そうよ」
???
「ははは!」
「賑やかでいいじゃん!」
魂の笑い声に、
ミルも楽しそうに笑う。
その時。
魂の視線が、
ミルの手元で止まった。
???
「そういや、
さっきから気になってたんだけどさ」
「その手に持ってるのって、
猫じゃらしだよな?」
ミル
「はい!」
ミルは嬉しそうに、
猫じゃらしを持ち上げる。
ミル
「ミルの武器です!」
???
「武器!?」
魂が大きく揺れた。
???
「猫じゃらしが!?」
ミル
「すごいんですよ!」
???
「へぇー!」
「どうすごいんだ!?」
ミル
「えっとですね!」
ミルは猫じゃらしを見つめる。
少し考える。
ミル
「すっごく光ります!」
ノワ
「そこ?」
ミル
「あと!」
「こう……」
ミルは猫じゃらしを構え、
ぶんっと軽く振る。
ミル
「えいっ!ってすると、
すごいです!」
???
「おおー!」
「すげぇ!」
ノワ
「今ので何が分かったのよ」
???
「何かすごそうだった!」
ノワ
「ミルと同じタイプだわ……」
ミル
「分かってくれました!」
ノワ
「分かり合わなくていいのよ」
「……本当に……」
ナナは二人の様子を見ながら、
くすくすと笑っている。
ルナも僅かに口元を緩めていた。
???
「でも面白いなぁ!」
魂は再び、
四人を見回す。
???
「知らないものばっかりだ!」
「君達のことも」
「その猫じゃらしのことも」
「これから行く猫神様の所も!」
魂は楽しそうに、
少しだけ前へ飛び出した。
???
「何があるのか、
ちょっと楽しみになってきた!」
その言葉に。
ノワは、
ふと魂へ視線を向けた。
ノワ
「……」
何かが引っ掛かった。
けれど。
それが何なのかは、
ノワにも分からない。
ミル
「そういえば!」
「どれくらいここに居るんですか?」
???
「うーん」
「ずっと彷徨ってたから、
時間の感覚がなくてさ!」
「気付いたら、
ずっとここに居た!」
ミル
「ずっとですか!?」
「退屈じゃなかったんですか?」
???
「最初は少しだけな!」
「でも!」
「知らない場所ってさ!」
「何が待ってるのか気になるだろ!」
「だから!」
「気付いたら前へ進んでたんだ!」
ミル
「わぁ!」
「ドキワクですね!」
???
「ドキワク?」
ミル
「はい!」
「ドキドキとワクワクです!」
???
「へぇ!」
「ドキワクか!」
「いい言葉だな!」
「俺も昔からさ」
「ドキドキしたり、
ワクワクすることを追いかけるのが好きだったんだ!」
ノワはその言葉に、
ふと視線を向けた。
胸の奥が、
僅かにざわつく。
けれど。
その理由は、
ノワ自身にも分からなかった。
???
「だからかな」
「その『ドキワク』って言葉」
「何だかすごくしっくり来る!」
ミルは目を輝かせる。
ミル
「本当ですか!」
「じゃあ今日から一緒にドキワクです!」
???
「おう!」
「今日はドキワクだな!」
ミル
「はい!」
「ドキワクです!」
二人は楽しそうに笑い合う。
その様子を見つめながら、
ノワは小さく息をついた。
先程から感じている、
胸の奥の小さなざわめき。
初めて会ったはずなのに。
何故か、
目の前の魂が気に掛かる。
ノワは小さく首を振る。
ノワ(心)
「……気のせいね」
穏やかな空気のまま、
四人と一匹、
そして一つの魂は森の中を歩いていく。
木々の隙間から差し込む柔らかな光。
風が葉を揺らし、
静かな音を響かせていた。
魂は辺りを見回しながら、
どこか楽しそうに笑う。
???
「いやぁ!」
「こんな風に誰かと歩くの、
久しぶりだな!」
ミル
「みんなで歩くと、
とってもドキワクします!」
???
「ははは!」
「いいな!」
「その言葉、
やっぱり気に入った!」
ナナはそんな二人を見て、
ふわりと微笑んだ。
ナナ
「あっ」
「そういえば自己紹介がまだでしたねぇ」
「お名前を聞いてもいいですか?」
魂は一瞬きょとんとした。
そして。
???
「あっ!!」
「しまった!」
「またやった!」
「俺、
すぐ自己紹介忘れるんだよ!」
「ごめんな!」
ルナは思わず小さく笑う。
ルナ
「ふふっ」
???
「改めて!」
「俺はクロ!」
「よろしくな!」
その瞬間。
ノワの足が、
ぴたりと止まった。
ノワ(心)
「クロ……?」
胸が、
どくりと鳴る。
先程から感じていた、
小さなざわめき。
その正体が分かった訳ではない。
それでも。
その名前を聞いた瞬間、
胸の奥で何かが大きく揺れた。
ノワ(心)
「……違う」
「クロなんて名前の猫、
珍しくもない」
「ただの偶然よ」
そう言い聞かせる。
少し前を歩いていたミルが、
振り返った。
ミル
「あれ?」
「ノワ?」
ノワははっと我に返る。
ノワ
「……何でもないわ」
ノワは小さく息を吸い、
再び歩き出す。
ミルは不思議そうに首を傾げたものの、
すぐにクロへ笑顔を向けた。
クロもまた、
何も知らないまま楽しそうに揺れている。
こうして。
新しく出会った魂、
クロを加えた一行は、
猫神様の社を目指して森の中を進んでいった。
けれど。
ノワの胸に生まれたざわめきだけは、
消えることなく残っていた。
ノワ(心)
「でも……」
「この感じは、
何なの……?」
第二部 第二十八話 完




