「魂を探して」
第二部 第二十七話
魂を探して
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猫神様から、
新たな役目を託されたミル達。
帰る場所を失い、
迷い猫となる前の魂を見つけ、
保護すること。
ソラから託された願いを胸に、
四人は猫神様の社を後にした。
そして。
ルナに案内され、
最初の巡回場所へと向かう。
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異世界。
昼。
柔らかな木漏れ日が、
森の中へ降り注いでいた。
風が吹くたび、
木々は心地良さそうに枝葉を揺らす。
葉と葉が擦れ合う音。
小さな虫達が草花の周りを飛び交い、
森全体が穏やかな空気に包まれていた。
そんな森の中を、
ミル達四人はゆっくりと歩いている。
ミルは猫じゃらしを握り、
辺りをきょろきょろと見回していた。
右を見て。
左を見て。
今度は頭上を見上げる。
時折しゃがみ込み、
草むらの奥まで真剣に覗き込んでいた。
ノワはそんなミルを横目で見ながら、
周囲への警戒を怠らない。
レーザーポインターを握り、
木々の間や暗い茂みへ鋭い視線を向けている。
ルナは少し前を歩きながら、
静かに森全体へ意識を巡らせていた。
その足取りに迷いはない。
しかし、
小さな変化すら見逃さないよう、
紫色の瞳は真剣に辺りを見つめていた。
ナナは三人の少し後ろを歩いている。
その隣では、
魚クッションがふわふわと宙を漂い、
時折左右へ揺れながら森の中を見回していた。
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猫神様
「まずはパトロールじゃな」
「魂達を見つけ、
保護することじゃ」
「……頼んだぞ」
ミル
「はい!」
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ミル
「とは言ったものの……」
「なかなか見つかりませんねぇ」
ミルは草むらから顔を上げ、
困ったように眉を下げた。
ノワ
「そんな簡単に見つかるなら、
苦労しないわよ」
ミル
「そうなんですけど……」
ミルは再び草むらへ顔を近付ける。
ミル
「魂さーん」
「居ませんかー?」
ノワ
「呼んで出てくるものなの?」
ミル
「もしかしたら、
元気よく返事してくれるかもしれません!」
ノワ
「魂に何を期待してるのよ」
ミル
「出会ってみないと分かりません!」
ミルはきっぱりと言い切ると、
今度は近くの木の裏を覗き込んだ。
しかし。
そこに居たのは、
木の幹をゆっくり登っている小さな虫だけだった。
ミル
「違いました……」
ノワ
「見れば分かるでしょ」
ナナ
「こういう時は焦っちゃダメよ」
後ろから、
優しいナナの声が響く。
ナナは足を止め、
ミルへ穏やかな笑顔を向けていた。
ナナ
「急いで探そうとすると、
近くにあるものまで見落としちゃうわ」
「ゆっくり、
一つひとつ見ていきましょう」
ミル
「そうですね!」
「頑張りましょう!」
ミルは元気よく拳を握った。
魚クッションも励ますように、
ミルの周りを一度くるりと回る。
ミル
「魚クッションもやる気満々です!」
ノワ
「それ、
本当にそういう意味なの?」
ナナ
「きっとそうよ」
ノワ
「ナナまで……」
ノワは小さく息をつく。
けれど、
その口元には僅かな笑みが浮かんでいた。
四人は改めて周囲を見回しながら、
森の奥へと歩き始める。
細い道には、
落ち葉が柔らかく積もっている。
足を進めるたび、
かさりとかすかな音が鳴った。
木漏れ日の中には、
細かな花粉や塵がキラキラと舞っている。
ミルはその一つを目で追い、
立ち止まる。
じっと見つめるが、
どうやら違うらしい。
ミルは少し首を傾げながら、
再び歩き出した。
しばらくして。
ミル
「そういえば!」
突然の大声が、
静かな森の中へ響いた。
ノワ
「もう少し静かに話せないの?」
ミル
「あっ、
ごめんなさい!」
ミルは少しだけ声を落とし、
ルナの隣まで小走りで追い付く。
ミル
「魂ってどうやって探すんです?」
ルナ
「魂そのものを探す訳じゃないわ」
「魂が纏っている光を探すの」
ミル
「光?」
ルナ
「ええ」
「浄化した時、
キラキラと光っていたでしょう」
ミルは少し考え、
すぐにその時の光景を思い出した。
ミル
「あっ!」
「ありました!」
「あの光ですね!」
ルナ
「そう」
「魂は普段から、
あの光を纏っているの」
「よく見れば、
魂から溢れた小さな光が上へ昇っていくのが見えるわ」
ミル
「なるほどです!」
ミルはもう一度辺りを見回す。
今までとは違い、
今度は森の中で揺れる小さな輝きへ意識を向けていた。
ミル
「だから昼間でも探せるんですね!」
ルナ
「ええ」
「迷い猫と違って、
普通の魂を探すのに昼も夜も関係ないわ」
ノワ
「つまり」
「光を見逃さなければいいってことね」
ルナ
「その通り」
ナナ
「焦らなくて大丈夫よ」
「ゆっくり探していきましょう」
ミル
「はい!」
「ドキワクで目がキラキラしてきました!」
ノワ
「何よその能力」
ミル
「魂の光を見つけるための目です!」
ノワ
「今作ったでしょ」
ミル
「気持ちは本物です!」
ノワは思わず笑った。
ミルもつられるように笑い、
再び前を向く。
四人と一匹は、
ゆっくりと森の奥へ進んでいった。
木々が密集し、
辺りへ落ちる影も濃くなっていた。
風が止む。
葉の擦れる音も消え、
森の中へ静けさが戻る。
その時だった。
先頭を歩いていたルナが、
静かに足を止める。
ルナ
「……居る」
ミル達も一斉に立ち止まった。
ルナは顔を僅かに横へ向け、
木々の間を真っ直ぐ見つめている。
三人もその視線を追った。
木陰の奥。
二本の木が重なった、
少し暗い場所。
そこに。
小さな光が、
ふわりと揺れていた。
木漏れ日のように、
ただ光っている訳ではない。
弱くなり。
また少し強くなる。
まるで静かに呼吸をしているように、
淡い光がゆっくりと脈打っていた。
その光からは、
キラキラとした小さな光が僅かに溢れ、
ゆっくりと上へ昇りながら消えていく。
ミルの目がぱっと輝く。
ルナ
「待って」
「驚かせないように、
ゆっくり近付いて」
ミル
「はい!」
ミルは小さく返事をすると、
慎重に一歩前へ進んだ。
そっと。
静かに。
足音を立てないように、
もう一歩近付く。
魂はまだ、
こちらへ気付いていないようだった。
ミルは嬉しさを抑え切れず、
満面の笑顔を浮かべる。
そして。
ミル
「こんにちはーー!」
その瞬間。
???
「うわぁっ!!」
小さな光が、
勢いよく飛び上がった。
淡かった光が一瞬強く輝く。
そのまま慌てたように左右へ揺れ、
近くの木の陰へ隠れようとする。
???
「び、びっくりしたぁ!」
「な、何!?」
「えっ!?」
「何!?」
「お、お化けぇぇぇ!?」
ミル
「あっ!」
「ご、ごめんなさい!」
ノワ
「お化けはあんたよ」
???
「えっ?」
「俺ぇ!?」
ミル
「ドキワクです!」
???
「どう言うこと!?」
ノワ
「元気な魂ね」
思わず顔を見合わせる四人と一匹だった。
第二部 第二十七話 完




