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ドキワク猫の冒険  作者: NOBU
第二章〜ナナの家と愛情の形〜
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「新たな役目」

第二章 第二十四話


新たな役目


━━━━━━━━━━━━━━━


ミル

「別の場所……?」


小さな声が零れた。


猫神様は、

静かに頷いた。


猫神様

「下界じゃな」


ミル

「下界?」


猫神様

「うむ」


「今、

お主らがおるこの場所も含め」


「それぞれの神々が管轄しておる、

全ての領域」


「それらをまとめて、

下界と呼んでおる」


ミル

「おおー……」


ノワは、

絶対分かってない顔ね、とでも言いたげに、

呆れた顔でミルを見る。


猫神様

「そして」


「魂がどの領域へ流れ着くかも、

無秩序に決まる訳ではない」


「猫として生きた魂は、

猫を管轄する領域へ」


「人間として生きた魂は、

人間を管轄する領域へ」


「そうやって、

振り分けられるんじゃ」


ノワ

「ちゃんと決まってるのね」


猫神様

「うむ」


「一度器へ入った魂はのう」


「その器の在り方へ、

少しずつ馴染んでいく」


「その魂が、

どの領域へ流れ着くのかも」


「生前に馴染んだ器によって、

決まるという事じゃ」


ミル

「おおー……」


ミルは、

感心したように頷く。


猫神様

「故に」


「猫だった魂が、

人間神の管轄する領域へ流れ着く事は、

基本的には無い」


「それぞれの神々が、

それぞれの領域に流れ着いた魂達を見守っておるんじゃ」


和室に、

静かな空気が流れる。


猫神様の話を聞きながら、

ミル達は少しずつ世界の仕組みを理解していく。


死んだ後も、

ただ終わる訳ではない。


その後にも、

ちゃんと道が用意されている。


ナナのそばでは、

魚クッションが静かに漂いながら、

猫神様の方を向いていた。


ミル

「なんだかすごいです……」


猫神様

「うむ」


猫神様は、

小さく頷いた。


そして。


少しだけ、

表情が変わる。


猫神様

「じゃが」


その一言で、

和室の空気が再び変わった。


ミル達も、

自然と姿勢を正す。


猫神様

「下界へ送られたからといって、

全ての魂が救われる訳ではない」


ミル

「え……?」


猫神様

「天界から弾かれ、

下界へ流れ着いた魂は」


「器を持たぬまま、

そこで彷徨う事になる」


ミル

「……」


猫神様

「先程も話したように」


「魂だけの存在は、

周囲からの影響を受けやすい」


「想いも」


「悲しみも」


「憎しみも」


「強い記憶もじゃ」


猫神様は、

静かに言葉を続ける。


猫神様

「そして」


「彷徨う時間が長くなるほど、

魂は周囲からの影響を受け続ける」


「その中で」


「魂の中にある悲しみや苦しみ」


「怒りや恐れ」


「そういった負の感情が、

次第に大きくなっていく」


猫神様

「やがて」


「その感情が、

魂自身では抱えきれぬほど膨れ上がり」


「自らの感情に、

飲み込まれてしまう」


ミル

「……!」


猫神様

「そうして生まれるのが」


ノワ

「……迷い猫」


その視線は、

静かに猫神様へ向けられていた。


和室は静まり返り、ソラはそっと目を閉じた。


猫神様

「そうじゃ」


「迷い猫は、

初めから迷い猫だった訳ではない」


「元を辿れば」


「帰る場所を失い、

下界を彷徨っていた一つの魂じゃ」


ミル

「……」


猫神様

「そして」


「負の感情に飲み込まれ、

迷い猫となったその先で」


「さらに大きな影響を受け続ければ」


「より大きく、

歪んでしまう事もある」


ミル達は、

黙って聞いていた。


その話を聞きながら、

ミル達の脳裏に、

ソラの姿が浮かんだ。


初めて出会った時の、

迷い猫だったソラ。


そして。


その先で目にした、

大きく歪んだ身体。


苦しそうな目。


それでも、

助けを求めていた魂。


ミル

「……ソラ」


ミルはソラを少し心配そうに見た。


猫神様

「もちろん」


ミルが、

再び猫神様を見る。


猫神様

「わしらも、

放っておる訳ではない」


「保護もする」


「導く事もする」


「天界へ送り届けようともする」


猫神様は、

静かに湯飲みを置いた。


猫神様

「じゃが」


和室が、

静かになる。


猫神様

「全ての魂に、

手が届く訳ではない」


ミル

「……」


猫神様

「じゃから」


猫神様は、

ミル達をゆっくりと見渡した。


猫神様

「お主らに頼みたい」


「帰る場所を失った魂達に」


「手を差し伸べてほしいんじゃ」


ミルは、

黙ったまま聞いていた。


迷い猫。


帰る場所を失った魂。


ソラ。


そして。


今もどこかで、

彷徨っている魂達。


ミルは、

ゆっくりと拳を握る。


ミル

「……帰る場所を探してるんですよね」


猫神様

「うむ」


静かな頷きだった。


ミルは、

少しだけ考える。


そして。


ミル

「だったら」


「ちゃんと、

帰れるようにしてあげたいです」


ノワ

「……そうね」


ノワも、

静かに頷く。


ナナ

「ええ」


ナナも、

優しく微笑んだ。


そのそばで。


魚クッションも、

小さく上下に揺れる。


ルナ

「……」


ルナは、

そんな三人を静かに見つめていた。


そして。


ほんの一瞬だけ、

ナナへ視線を向ける。


その表情が、

僅かに柔らかくなる。


けれど。


その瞳には、

どこか複雑なものも残っていた。


猫神様

「……」


猫神様は、

そんなルナへ一度だけ目を向ける。


何も言わず。


ただ、

静かに目を細めた。


やがて。


ルナは、

ミル達へ視線を戻す。


ルナ

「これからは、

みんな一緒ね」


ミル

「はい!」


ミルは、

嬉しそうに頷いた。


猫神様

「うむ」


猫神様は、

四人を穏やかに見渡す。


猫神様

「これからは」


「お主ら四人で、

迷える魂達を導いてやってくれ」


ミル

「はい!」


和室に、

元気な返事が響いた。


━━━━━━━━━━━━━━━


第二章 第二十四話 完

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