「猫フードルーム」
第六話
ナナ
「ここはどこ?」
ミル
「変な家です!」
ミルが敬礼ポーズで答える。
ノワ
「説明が雑すぎるわよ」
ミル
「でも本当なんです!」
ナナ
「……?」
三人はナナを連れて、
あの不思議な部屋へ戻ってきていた
ミルは得意げに胸を張る。
ミル
「ここは!」
ミル
「猫フードルームです!」
ノワ
「ミル、今付けたでしょそれ」
ジト目気味のノワ。
ミル
「いい名前じゃないですか!」
ナナ
「ねこフード……ルーム」
その瞬間――
ズキッ
ナナの頭に、
ほんのわずかな痛みが走る。
ナナ
「……」
ナナは小さく眉を寄せ、
こめかみに手を当てる。
ミル達は気付かない。
ノワ
「それで?」
ノワ
「ここは何なの?」
ミル
「えっとですね!」
ミルは部屋をぐるっと見回す。
ミル
「猫のすごい部屋です!」
ノワ
「見れば分かるわよ」
ミル
「しかもですね!」
ミルは猫じゃらしを取り出す。
ミル
「武器もあるんです!」
ノワ
「それただの猫じゃらしでしょう」
ミル
「でも光るんですよ!」
ナナ
「光る……?」
ミル
「あとこれです!」
ミルは自分のフードを指差す。
ミル
「これ被ると人間になれるんです!」
ナナ
「え…どう言うこと…?」
ナナはいきなりの情報量に理解が追いつかない。
ノワ
「ナナ大丈夫よ。この子これが普通だから」
ノワは頭を抱えながら答える。
ナナ
「分かったわ」
ノワ
「まぁもう一つ言うと」
ノワ
「その部屋に入っただけでも人間の姿になるの」
ナナ
「?」
ミル
「ナナちょっと見ててください!」
猫フードを脱いだミルが勢いよく部屋を飛び出す。
ノワ
「ちょっとミル――」
その瞬間――
ミルの姿が、
白い猫へと変わる。
ナナ
「……!?」
ナナ
「え……?」
ノワ
「だから急にやるなって言ってるでしょ」
ミル(猫)
「にゃー!」
ミルはそのまま部屋に戻ってくる。
すると――
再び人間の姿に戻る。
ミル
「ほら!」
ミル
「こういうことです!」
猫フードを被り直したミルは少し得意げに胸を張る。
ミル
「分かりましたか!?」
そう言ったミルの猫フードが少しズレる。
ナナは目を見開いたまま、
ミルを見る。
ナナ
「あなた達……」
ナナ
「猫だったの……!?」
ノワは小さくため息をつき、
ミルのズレているフードを直しながら答える。
ノワ
「そうよ」
ルナ
「……その話は後」
ミル
「え?」
ルナは窓の外を見る。
ルナ
「あなた達に話しておくことがある」
少しの沈黙。
ルナ
「さっきの黒い猫を覚えてる?」
ミル
「はい!」
ノワ
「ええ」
ナナはもう既に目が点になっていた。
ナナ
「…?」
ルナ
「ごめんなさいねナナ。またゆっくり説明するわ」
ナナ
「え、ええ。ありがとう」
ルナ
「戻すわね。あれは魔物よ」
ミル
「魔物……?」
ルナ
「でも元は普通の猫」
ルナ
「悲しい生き方をした猫達」
ルナ
「寂しいまま」
ルナ
「苦しいまま」
ルナ
「その想いだけが残って」
ルナ
「魂が歪んだもの」
ルナ
「それが――」
ルナ
「迷い猫」
ミル
「……」
ミル
「さっきの子……」
ミル
「助けられたんですか?」
ルナは少し目を伏せる。
ルナ
「……できたかもしれない」
静かな部屋。
ミルの表情が止まる。
ミル
「……」
一瞬だけ――
あの時の光景が、
頭の中に浮かぶ。
苦しそうな声。
必死に逃げる姿。
絡みつく糸。
そして
振り下ろしかけて――
止めた手。
ミルの指が、
わずかに震える。
ミル
「……」
ミル
「私……」
ミル
「逃がしちゃった……」
ミル
「助けられたかもしれないのに……」
ミル
「あの子は苦しかったのに……」
ミルは拳を握る。
ミル
「私のせいで……」
その瞬間――
ミルは顔を上げる。
ミル
「…いや…違います」
ノワ
「ミル?」
ミル
「次は」
ミル
「助けます!」
ミルは猫じゃらしを強く握る。
ミル
「絶対に」
ミル
「帰してあげます!」
ルナは静かにミルを見る。
ルナ(心)
「……やっぱり」
「この子なのね」
後ろから声がする。
ナナ
「私も……」
ナナ
「私も一緒に手伝わせて!」
ミル
「えっ?」
ノワ
「あなたが?」
ナナは少し戸惑いながら頷く。
ナナ
「私……」
ナナ
「何もできないかもしれないけど」
ナナ
「でも」
ナナ
「苦しんでるなら……」
ナナ
「一人にしたくない」
その目は明確な意思を持っていた。
ミル
「ナナ……!」
ノワは腕を組む。
ノワ
「……で?」
ノワ
「どうやって助けるの?」
ミル
「これ……ですか?」
ルナは猫じゃらしを見る。
ルナ
「そう」
ノワ
「ただのおもちゃにしか見えないけど」
ルナ
「それが武器になる」
ミル&ノワ
「「本当に武器だったんですね(だったの!?)!?」」
ミルの目が輝く。
ルナ
「でも」
ルナ
「振るだけじゃダメ」
ルナ
「使い方を覚えないと」
ルナ
「助けられない」
ノワ
「……効き方に違いがあるってこと?」
ルナ
「そう」
ルナ
「元の猫が」
ルナ
「何を感じていたかで変わる」
ルナ
「好きだったもの」
ルナ
「嫌いだったもの」
ルナ
「その違いで」
ルナ
「弱点も変わるのよ」
ノワ
「厄介ね……」
ノワは小さく息をつく。
ノワ
「つまり相手によって違うってことね」
ルナ
「そうね」
ルナ
「その認識で間違い無いわ」
少しの間。
ミルは猫じゃらしを見つめる。
ミル
「……でも」
ミル
「やります」
ミル
「絶対、助けます」
その言葉に、
迷いはなかった。
ノワ
「……まぁ」
ノワ
「やるしかないわね」
ナナは静かに頷く。
ナナ
「ええ」
ナナ
「困ってるなら見捨てることなんて出来ないわ」
――
それから、
しばらくして。
ミル
「……あれ?」
ノワ
「今度は何?」
ミル
「晩御飯どうします?」
ノワ
「……は?」
ナナはくすっと笑う。
ナナ
「ふふっ」
ナナ
「確かに大事ね」
ルナは小さく息をつく。
ルナ
「……そうね」
ノワは額に手を当てる。
ノワ
「ほんとに切り替え早いわね……」
ミル
「お腹空いたんですよ!」
ミルは元気よく言う。
ミル
「頑張るにはご飯です!」
ビシッとノワを指差すミル。
ノワは一瞬だけ目を細める。
ノワ
「はいはい、分かったわよ」
ナナ
「いいと思うわ」
ナナ
「まずは元気にならないとね」
ノワ
「それもそうね」
第六話 完




