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ドキワク猫の冒険  作者: NOBU
第二章〜ナナの家と愛情の形〜
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「消える迷い猫」

第二章 第七話


消える迷い猫


――


リビングには暖かな灯りが点いていた。


テーブルの上には、

ナナとルナが用意した晩ご飯。


ご飯とふりかけ、

目玉焼きと味噌汁。


湯気と一緒に、

優しい匂いが部屋へ広がっている。


ナナ

「朝食みたいになっちゃったわね」


ルナ

「色々あったし仕方ないわよ」


ナナ

「そうね」


ナナの小さな苦笑いを見て、

ルナも少し優しく目を細める。


魚クッションは、

ナナの隣で静かに浮かんでいた。


だが、

空気は重かった。


ミル達は席へ座る。


誰もすぐには喋らない。


さっき猫神様から聞いた話が、

まだ頭の中へ残っていた。


歪み猫。


減り続ける迷い猫。


そして、

見当も付かない規模の異常。


ナナ

「……いただきましょうか」


小さな声だった。


ミル

「はい!」


ノワ

「ええ」


ルナも静かに頷く。


一同

「「いただきます」」


しばらくの間、

食器の音だけが静かに響いていた。


ミル

「……」


ミルだけが、

珍しく何か考え込んでいる。


ノワ

「ミル」


ミル

「……はい?」


ノワ

「さっきから何考えてるのよ」


ノワはミルへ視線を向ける。


ソラの件もあった。


きっと、

ミルなりに色々考えているのだろう。


そう思うと、

自然と表情が少し柔らかくなった。


ミル

「ピザです」


ノワ

「……は?」


ミル

「ピザってすごいですよね」


「同じ生地なのに、

具材で全然違う味になるんです!」


ノワの開いた口が塞がらない。


ナナ

「ふふっ」


「確かに色々あるものねぇ」


ミル

「チーズもいっぱい種類あります!」


「色んな具材が生き生きしていて、

一つの形になっているのはもはや芸術ですよノワ!」


ノワ

「今その話する?」


ミル

「ドキワクな事です!」


ノワ

「あんたねぇ」


ルナ

「……」


ノワは呆れたように肩を落とす。


ノワ

「さっきまで深刻な話してたのよ?」


ミル

「へもはんあえへはら(でも考えてたら)」


ミルは慌ててコップの水を飲み込む。


ミル

「でも考えてたら、

お腹空いてきました!」


ノワ

「食べながら言わないで」


ナナは少しだけ笑っていた。


魚クッションも、

つられるように小さく上下へ揺れる。


重かった空気が、

ほんの少しだけ緩んだ。


――


深夜。


静かな時間。


家の中は眠りに包まれていた。


カチッ。


時計の音だけが静かに響く。


ねこフードルーム。


ミルがぐっすり眠っている。


その隣では、

ノワがまだ眠れずにいた。


ふわり。


ミルの横へ置かれていた猫じゃらしが、

淡く光り始める。


ミル

「……ん」


ミルはまだ起きない。


猫じゃらしの穂先。


白い光。


ノワ

「……?」


次の瞬間。


ノワのレーザーポインターも光を放つ。


ノワ

「……また!?」


「ミル!

起きなさい!」


ノワはミルの肩を揺する。


ミル

「ふぇ?」


さらに別の部屋。


ルナの毛糸。


ナナの魚クッション。


全てが反応していた。


ルナ

「これは」


ルナはすぐ窓の外を見る。


ルナ

「……多い」


空気が変わる。


ナナ

「……っ」


魚クッションが、

不安そうにナナの周りをくるくると回っていた。


――


ルナとナナが、

ねこフードルームへ入って来る。


ルナ

「やっぱり皆反応があったのね」


ノワ

「ええ」


ミル

「ルナたちもですか?」


ルナ

「そう」


「……あれを見て」


ルナは静かに窓を指差した。


ミルは窓へ駆け寄る。


その先の夜空。


ぐにゃり――


空間が歪む。


一箇所。


だが、

武器の反応は異常に多い。


ノワ

「……何なのよこれ」


ルナ

「近い」


ナナ

「同時に反応があるなんて」


ノワ

「歪み猫が集団行動とか、

笑えないんだけど」


ミル

「行きましょう!」


即答だった。


ルナも止めない。


ルナ

「……急ぐわよ」


――


数分後。


異世界。


夜の街。


静まり返った道を、

四人は走っていた。


フードを被り、

武器を手にして。


魚クッションも、

ナナの横を並ぶように飛んでいる。


空気が重い。


嫌な感じが、

近づくほど強くなっていく。


やがて。


ルナが足を止めた。


ルナ

「……ここ」


ミル達も足を止める。


静かな街。


しかし、

武器達だけが強く反応している。


ミル

「……居ます」


ノワ

「でも見えない」


周囲は暗い。


建物の隙間。


歪んだ空間。


気配だけが多すぎる。


ルナ

「警戒して」


ナナも魚クッションを顔の近くまで浮かばせる。


その時。


遠く。


ぐにゃり――


空間が揺れた。


ミル

「……!」


歪みの奥。


赤い目。


一つではない。


揺れている。


その直後。


影が現れた。


迷い猫。


苦しそうに走っている。


何かから逃げるように。


ミル

「迷い猫……!」


ミルが一歩前へ出る。


だが、

次の瞬間。


歪みの中から、

無数の猫の影が伸びた。


ノワ

「……っ!?」


影が迷い猫へ絡みつく。


逃げようとする。


だが、

離れない。


迷い猫

「ギャアアッ!!」


ミル

「っ!!」


引きずられる。


歪みの中へ。


まるで、

檻へ閉じ込められるみたいに。


迷い猫の声だけが、

歪みの奥へ沈んでいった。


影が沈む。


迷い猫も消える。


静寂。


ミル

「……そんな」


ミルが飛び出そうとする。


だが。


ルナ

「行かないで!」


珍しく強い声だった。


ミルの動きが止まる。


ルナ

「今近づいたら危険よ!」


ノワ

「……気配が多すぎる」


空間はまだ歪み、揺れている。


気配が消えない。


しかしどこに居るのか分からない。


囲まれているような感覚だった。


ナナ

「……っ」


魚クッションが、

警戒するように小さく揺れていた。


その時。


ぐにゃり――


歪みが揺れる。


赤い目が、

ゆっくりと奥へ沈んでいく。


そして。


消えた。


静寂。


武器の光も、

少しずつ弱くなっていく。


だが、

完全には消えない。


ルナ

「……まだ近くに居る」


ノワ

「何なのよ……あれ」


ミルは、

歪みが消えた場所を見つめていた。


助けられなかった。


また。


拳が震える。


ルナ

「……姿も見えなかった」


静かな声だった。


異常は、

確実に広がっていた。


――


第二章 第七話 完

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