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ドキワク猫の冒険  作者: NOBU
第二章〜ナナの家と愛情の形〜
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「異常な反応」

第二章 第六話


異常な反応


――


異世界。


夜。


静かな道を、

四人と魚クッションは足早に進んでいた。


誰もあまり喋らない。


さっきまでの空気とは違う。


重い。


嫌な予感だけが、

ずっと胸の奥に残っていた。


ミルは猫じゃらしを握っている。


さっきまで光っていた穂先は、

今は静かだった。


ノワ

「……」


しかしノワは周囲を警戒しながら歩く。


レーザーポインターは無意識のうちに、

強く握られていた。


ナナも不安そうに辺りを見回す。


魚クッションは、

そのすぐ横を静かに漂っていた。


先頭を歩くルナだけが、

迷いなく前を見据えている。


やがて、

石段が見えた。


その先には、

静かな猫神様の社。


猫神様は、

まるで待っていたかのように立っていた。


猫神様

「……来たか」


ルナ

「はい」


ルナはそのまま歩み寄る。


その表情は真剣だった。


ルナ

「歪み猫を確認しました」


空気が少し変わる。


ミル達も猫神様の前へ並ぶ。


魚クッションも、

不安そうにナナの隣へ寄った。


猫神様

「……詳しく聞こうかの」


――


猫神様の社。


掛け軸の部屋。


静かな部屋には、

穏やかな空気が流れていた。


掛け軸の向こうでは、

ソラが小さく丸くなって眠っている。


安心しきった寝顔だった。


ミルはその姿を見つけると、

思わず足を止める。


ミル

「……!」


小さく口元を押さえる。


それから、

忍び足でそーっと掛け軸へ近付いた。


ノワはそんなミルを見て、

小さく笑う。


ノワ

「珍しく静かじゃない」


ミル

「起きちゃいます」


小さな声だった。


ナナは優しく微笑む。


魚クッションも、

音を立てないように静かに浮かんでいる。


ルナは静かに掛け軸を見つめる。


そのまま一同は、

今日あった出来事を猫神様へ話し始めた。


全ての武器が反応したこと。


空間が歪んだこと。


歪み猫の気配だったこと。


そして、

追わずに戻った事。


話を聞き終えた猫神様は、

静かに目を閉じる。


猫神様

「……よう引き返した」


短い一言。


だが、

その表情は重かった。


ノワ

「やっぱり普通じゃないの?」


猫神様

「複数反応自体は普通じゃ」


「複数の迷い猫がおれば起こる」


ルナも静かに頷く。


猫神様

「歪み猫の近くに他の迷い猫がおったなら」


「それもまだ説明は付く」


ミル

「じゃあ大丈夫なんですか?」


猫神様

「いや」


猫神様は静かに首を横へ振る。


猫神様

「問題は別じゃ」


空気が重くなる。


猫神様

「歪み猫の出現間隔が短すぎる」


ノワ

「……!」


ルナも表情を変えないまま、

静かに視線を下げる。


猫神様

「本来、歪み猫はそう簡単に現れん」


「それだけ大量の魂が必要じゃからの」


ナナ

「……大量の魂」


魚クッションも、

どこか落ち着かない様子で小さく揺れる。


猫神様

「そして最近」


「迷い猫の数が急激に減っておる」


静かな声。


だが、

その言葉は重かった。


ミル

「……」


猫神様

「もし」


「今回の歪み猫が、他の迷い猫を取り込み続けておるなら――」


そこで言葉が止まる。


部屋に、

重苦しい沈黙が流れた。


猫神様

「どれほどの力を持っておるのか」


「ワシにも見当がつかん」


部屋の空気が、

さらに静かになる。


ノワ

「……そんなの」


言葉が続かなかった。


ナナも不安そうに俯く。


魚クッションは、

そっとナナの肩の辺りまで近付き、

寄り添うように静かに浮かんでいた。


猫神様

「単に浄化だけならワシが出向くが、ワシもこの様な場合他の神に情報の共有も要るからのう」


ミル

「他の神様です!?」


ノワがドキワクなキラキラ目になっているミルの頭を押さえる。


ミル

「ふみゅっ!」


ノワが眠っているソラにそっと視線を向ける。


ノワ

「まぁソラみたいに助けられる可能性もあるからって事よね?」


猫神様

「そうじゃな」


「状況を把握した上でことに当たりたいのは事実じゃ」


ルナは腕を組み、

静かに考え込んでいる。


やがて、

ゆっくりと口を開いた。


ルナ

「単独行動は危険」


「次に遭遇した場合も、無理に戦うべきじゃない」


ナナ

「そうね」


魚クッションも横で頷く様に上下に揺れている。


猫神様

「うむ」


「まずは調査じゃ」


「相手の規模が分からん以上、下手に近づくべきではない」


ノワ

「……分かったわ」


ミルだけが、

少し悔しそうな顔をしていた。


猫神様

「ミル」


ミル

「……はい」


猫神様

「助けたい気持ちは分かる」


「じゃが、無茶をすれば助けられるものも助けられん」


静かな声だった。


ミルは猫じゃらしをぎゅっと握る。


その視線は、

床へ落ちていた。


しばらくして、

小さく頷く。


ミル

「……分かりました」


猫神様は静かに掛け軸へ目を向ける。


ソラはまだ、

気持ち良さそうに眠っていた。


猫神様

「今日はもう戻ると良い」


「夜も深い」


一同は静かに立ち上がる。


ミルは最後にもう一度だけ、

掛け軸を見つめた。


ミル

「……また来ますね」


囁くような小さな声。


ソラは目を覚ますことなく、

穏やかな寝息を立てている。


ルナ

「……帰りましょう」


一同は起こさないように、

静かに掛け軸の部屋を後にした。


――


帰り道。


異世界の夜は静かだった。


誰もあまり喋らない。


さっき聞いた話が、

まだ頭の中へ残っていた。


ミルは少し前を歩く。


猫じゃらしを握ったまま、

静かに前を見つめていた。


その後ろを、

ノワ、ナナ、ルナ、

そして魚クッションが静かに続く。


誰も口を開かない。


夜風だけが、

静かに吹き抜けていった。


――


遠く。


暗い街の奥。


ぐにゃり――


空間が歪む。


一つではない。


暗闇の中で、

赤い目が静かに揺れていた。


誰にも気付かれることなく、

闇だけが、

ゆっくりと広がっていく。


――


第二章 第六話 完

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