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ドキワク猫の冒険  作者: NOBU
第二章〜ナナの家と愛情の形〜
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44/87

「ドキワクピザ」

第二章 第一話


ドキワクピザ


――


朝。


一階のリビング。


やわらかな光が差し込み、

静かな空気が広がっている。


その中を、

小さな足音がぱたぱたと動き回っていた。


ミル

「……ピザさーん……?」


きょろきょろと辺りを見回す。


棚の下。


テーブルの上。


ソファの裏。


ミル

「出てきてくださーい……」


真剣だった。


完全に、本気で探していた。


――


階段を降りる音。


ナナが姿を現す。


ナナ

「おはようミル……何をしているの?」


ミルは振り返る。


ミル

「ナナ!おはようございます!」


「ピザです!」


ナナは少し目を瞬かせて、

それからくすっと笑った。


ナナ

「そう」


「見つかりそう?」


ミル

「まだです!」


ミルはきっぱり言う。


ナナ

「ふふっ」


そのやり取りの間に、

さらに足音が降りてくる。


ノワ

「……朝から何やってんのよ」


眠そうな顔で、

ノワが階段から降りてくる。


ミル

「ノワ!ピザですよ!」


ノワ

「ピザ?」


ミル

「探してるんです!」


ノワ

「だから何で家の中にある前提なのよ」


ナナはくすっと笑う。


ナナ

「楽しそうね」


ノワ

「ナナ、これは巻き込まれてるだけ」


――


最後に、

静かな足取りでルナが降りてくる。


ルナは一度だけ、

部屋の様子を見渡した。


ルナ

「……なるほど」


ミル

「ルナ!」


「ピザです!」


ルナ

「ええ、分かるわ」


ノワ

「ほんとに?」


ルナは少しだけ考える。


ルナ

「丸くて」


「平たくて」


「温かくて」


「上に色々乗ってる食べ物」


少しの間。


ルナ

「……そんな感じのものよ」


ミルの目が輝く。


ミル

「分かりました!」


「じゃあ探しに行きましょう!」


ノワ

「だから何でそうなるのよ」


ミル

「はい!冒険です!」


ルナ

「現界(げんかい)なら、あると思う」


その一言で、


空気が少しだけ変わる。


ノワ

「現界?」


ルナ

「ええ。あなた達が元々いた所の事よ」


「こっちではそう呼んでるわ」


ミル

「その現界にあるんですね!」


「行ってきます!」


ミルは敬礼ポーズをとると、

そのまま部屋を出ていこうとする。


ノワ

「待ちなさいって」


その時。


ふっと、

空気が変わる。


猫神様

「面白そうなことをしておるのぅ」


ミル

「猫神様!」


猫神様が玄関の方からゆっくりと歩いてくる。


猫神様

「お邪魔するぞい」


ナナ

「いらっしゃいませ猫神様」


ナナの隣でルナが静かに一礼をする。


そのまた隣では魚クッションがふよふよと揺れている。


ノワ(心)

「何処の喫茶店よ」


ノワがふよふよと揺れている魚クッションに視線を向ける。


ノワ(心)

「あんたは何枠よ!!」


依然として揺れる魚クッション。


猫神様

「ミルよ。何をするつもりじゃ?」


ミル

「ピザを探しに行きます!」


猫神様

「ほぅ」


ルナは猫神様を見る。


猫神様

「現界に行くなら」


「その姿では目立つぞ」


ノワ

「でしょうね」


猫神様

「まぁ、違和感無く見えるようにしてやろう」


ミル

「ほんとですか!?」


猫神様は軽く手を振る。


その瞬間、

ふわりと空気が揺れた。


ミルの体を、淡い光が一瞬だけ包む。


ノワ

「……?」


ナナ

「今の……」


猫神様

「周りからは人間に見えておる」


「気にせず歩けばよい」


ミル

「すごいです!」


猫神様

「あと」


猫神様は何かを取り出す。


肉球のマークがある小さな巾着袋。


中からチャリンと音がしている。


猫神様

「これも必要じゃろ」


ノワ

「……お金?」


猫神様

「現界では必要じゃからの」


ナナ

「猫神様。いつもありがとうございます」


猫神様

「ほっほっほ」


「よい」


「それよりこれを受け取るのじゃ」


ミルは巾着袋を受け取る。


ミル

「ありがとうございます!」


ナナ

「ミル、良かったわね」


ミル

「はい!」


その様子を見ていた猫神様の視線が皆へ向く。


猫神様

「今から現界に行くのであれば」


「ワシもついて行こうかの」


ミル

「一緒にですか!?」


猫神様

「構わんか?」


ミル

「もちろんです!」


――


現界。


賑やかな街。


ミルは目を輝かせていた。


ミル

「すごいです!」


「いっぱいあります!」


ノワ

「ミル、はぐれ無いでよ」


ナナは周囲を見ながら歩く。


ルナは静かに観察している。


その時。


店の前のテレビから、

ニュースが流れていた。


『少女誘拐事件で――』


『空き巣犯の男を逮捕――』


一瞬だけ、

音が耳に入る。


ミル

「?」


ミルが少しテレビの方を観ようとしたその時、


ルナ

「ミルとノワは現界でのお買い物は初めてでしょう?」


ミルはテレビから視線を外す。


ミル

「はい!」


ノワ

「そうね」


ルナ

「なら、覚えておくといいわ」


ミル

「覚える?」


ルナ

「お買い物の仕方」


ミル

「おぉ!是非お願いします!」


ノワ

「まぁなんでも経験ね」


店の前に着いた時、猫神様が口を開いた。


猫神様

「さて」


「わしはここで待っておるかの」


ミル

「一緒に来ないんですか?」


猫神様は穏やかに笑う。


猫神様

「お主達に掛けた認識阻害の術は、ここから維持しておる方が安定するからの」


「念のため、結界も張っておこう」


ルナ

「……確かに、その方が安全ですね」


猫神様

「何かあれば、すぐ分かるようにもしておる」


ミル

「すごいです!」


ナナ

「じゃあ、私も猫神様と待ってますね」


猫神様

「うむ。良いのか?」


ナナ

「ええ。ルナも居ますし大丈夫です」


ナナは魚クッションを抱え直し、にこりと微笑んだ。


猫神様

「うむ」


ナナ

「ルナ、ミルとノワをお願いね」


ルナ

「任せて」


ノワ

「ちゃんと見てるから大丈夫よ」


ミル

「はい!」


「行ってきます!」


そうして自動ドアの前までやって来た三人。


ルナ

「まず、ここに立って」


ミルとノワがドアの前に立つ。


自動ドアが開く。


ミル

「おお……!」


ノワ

「猫の時は開いたり開かなかったりでガリガリ引っ掻いてたけどこう開けるのね」


ルナ

「入るわよ」


三人は店の中へ入っていく。


開いたドアが静かに三人を迎え入れた。


――


店内。


ミルは入った瞬間、

目をきらきらさせた。


ミル

「すごいです……!」


「食べ物がいっぱいです!」


棚いっぱいに並ぶ商品。


色とりどりのお菓子。


飲み物。


野菜。


お肉。


ミルはあっちへふらふら。


こっちへふらふら。


ノワ

「ちょっとミル!」


「はぐれない!」


ミル

「はい!」


「あっ!あのドキワクは!」


返事だけして、

また違う棚へ向かう。


ノワ

「聞いてないわね……」


ルナは二人の様子を見ながら静かに歩く。


ルナ

「ミル」


ミル

「はい!」


ルナ

「今日はピザの材料を買うの」


ミル

「あっ!」


ミルは慌ててルナの元へ戻る。


ノワ

「最初からそうしなさいよ」


ルナは買い物かごを手に取り、

売り場を歩き始めた。


ルナ

「まずはピザ生地ね」


ミル

「はい!」


ルナ

「次はチーズ」


ミル

「これですか?」


ルナ

「ええ、それで大丈夫」


ノワ

「ソースはこれ?」


ルナ

「それでいいわ」


三人は話しながら、

必要な材料を一つずつ買い物かごへ入れていく。


やがて、

ルナは買い物かごの中を確認し、小さく頷いた。


ルナ

「これで全部ね」


ミル

「はい!」


――


レジ。


店員

「〇〇円になります」


ミルは猫神様から預かった巾着袋を開ける。


ミル

「えっと……」


ノワ

「一緒に数えるわよ」


ミル&ノワ

「「いーち、にーい、さーん」」


その様子を店員も周りのお客さんも暖かい眼差しで見守る。


二人はお金を数え終え、

ミルが店員へ差し出した。


店員

「ありがとうございます」


袋へ材料を入れてもらい、

ミルは嬉しそうに受け取る。


ミル

「買えました!」


ノワ

「ちゃんとできたわね」


ルナ

「初めてにしては十分よ」


自動ドアが静かに開いた。


三人は店を出る。


――


店の外。


猫神様は静かに目を閉じ、

術を維持していた。


ナナはその隣で、

魚クッションを抱えながら穏やかに立っている。


魚クッションが小さく揺れた。


ナナはその様子を見て、

優しく微笑む。


猫神様

「ナナよ」


ナナ

「はい?」


猫神様

「体は大丈夫かの?」


ナナは少し首を傾げる。


ナナ

「私ですか?」


猫神様

「うむ」


「ソラとの戦いでは、少し無理をしておったじゃろう」


「疲れは残っておらんか?」


ナナは小さく笑みを浮かべた。


ナナ

「はい!大丈夫です」


「少し休んだら、もう元気になりました」


魚クッションも、

その言葉に合わせるように、

小さく上下へ揺れる。


猫神様は安心したように頷いた。


猫神様

「……ならばよい」


穏やかな空気が流れる。


二人は再び、

店の入口へ静かに視線を向けた。


その時。


自動ドアが開く。


ミルは袋を高く掲げながら、

元気いっぱい飛び出してきた。


ミル

「ナナーーーー!」


「できましたーー!!」


ナナ

「おかえりなさい」


魚クッションも、

嬉しそうにぴょこんと跳ねた。


ノワ

「ちゃんと買えたわ」


ルナ

「問題なかったわね」


猫神様

「うむ」


「上出来じゃ」


ミル

「ノワもできましたよね!」


ノワ

「ちゃんと一緒に数えたわよ」


「これくらいなら問題なしね」


ナナが歩み寄る。


ナナ

「おかえりなさい」


「どうだった?」


ミル

「ドキワクでした!」


「いっぱいあって、迷って」


「でもちゃんと選びました!」


「お金も払いました!」


ナナ

「すごいじゃない」


ミル

「えへへです!」


猫神様

「うむ」


ルナは静かに二人を見る。


ルナ

「問題なかったわね」


ミル

「はい!」


「完璧です!」


ノワ

「まぁ問題なしね」


ナナ

「ふふっ」


「じゃあ帰りましょうか」


ミル

「はい!」


「ピザ作ります!」


ノワ

「まぁ、完成形が全く分かってないんだけどね」


ミルはくるっと前を向く。


ミル

「大丈夫です!」


「ドキワクしてきました!」


そのまま歩き出す。


ナナとノワがその後ろへ。


ルナは少しだけ振り返る。


店の中。


人の流れ。


何も変わらない日常。


ルナは一瞬だけ目を細め、

それから何も言わずに歩き出した。


猫神様は最後に一歩だけ遅れてついていく。


猫神様

「……よいの」


小さく呟く。


帰り道。


四人の後を、猫神様が歩く。


昼の光がやわらかく差し込んでいた。



第二章 第一話 完

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