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ドキワク猫の冒険  作者: NOBU
第一章〜ドキワクの始まり〜
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27/43

「ざわつく夜」

第二十七話



夜。


街は静まり返っていた。


人の気配は無い。


聞こえるのは、


風の音と、


ミルたちの足音だけ。


パタパタ、コツコツと言う音が、


静かな夜に溶けていく。


ミルたちは路地を進む。


やがて開けた場所に出る。


古びた駐車場。


誰もいない。


ミル

「……いませんね」


ノワ

「こんなに探してるのに?」


ノワは周囲を警戒しながら呟く。


ナナ

「……変ですね」


魚クッションも、

落ち着かないようにゆっくり泳いでいた。


ルナは静かに周囲を見渡す。


空気。


気配。


流れ。


全てを探るように。


ルナ

「最近は」


ルナ

「明らかに迷い猫が増えていたわ」


ルナ

「探さなくても現れるくらいに」


ミル

「……はい」


ミルも頷く。


少し前までなら、


歩いているだけでも

武器が反応する事が多かった。


なのに――


今日は静かすぎる。


ルナ

「それなのに」


ノワ

「今日は、少なすぎるわね」


ルナ

「ええ」


ミル

「……じゃあ、どこに……?」


その時。


――カサッ


小さな音。


ノワの視線が動く。


建物の影。


暗闇の奥。


黒い影。


ノワ

「……!」


一瞬だけ見える。


黒いフード。


こちらを見て――


消える。


まるで最初から居なかったみたいに。


ミル

「ノワ?」


ノワ

「……いや」


ノワ

「なんでもないわ」


視線を戻すノワ。


だが、その目はわずかに細くなっていた。


何か引っかかる。


そんな表情だった。


――


ふと。


ミルの猫じゃらしが光る。


淡く灯った光が、


一気に強くなる。


反応するように、


ノワのレーザーポインターも光を放つ。


ナナの魚クッションも、

不安そうに揺れながら光を灯した。


ミル

「……!」


ノワ

「一気に……?」


ナナ

「……近い……?」


ルナ

「……来るわ」


空気が変わる。


重い。


冷たい。


――ザザッ


気配。


前方の暗がり。


路地の奥。


建物の影。


次々と現れる。


一体。


二体。


三体。


四体。


五体。


六体。


七体。


黒い靄を纏った迷い猫。


低く唸る。


揺れる。


ミルたちの前に、


迷い猫が姿を現す。


だが――


それだけじゃない。


建物の裏。


路地の奥。


さらに奥。


気配がある。


増えていく。


だが、


姿を見せない。


ミル

「……こんなに……」


ノワ

「……多すぎるでしょ」


ナナ

「……っ」


ナナ

「まだ、いる……」


建物の奥。


暗闇のさらに向こう。


見えていないのに、


気配だけが増えていく。


違和感。


迷い猫たちは、


こちらを見ていない。


怯えるように、


ざわついている。


視線は――


“後ろ”。


ナナ

「……あれ……?」


一体が振り返る。


その瞬間。


黒い身体が震える。


そして――


逃げる。


ミル

「……え?」


別の一体も。


また別の一体も。


次々と、


別方向へ逃げ出す。


建物の影へ。


路地の奥へ。


暗闇へ。


消える。


まるで、

何かから逃げるように。


ノワ

「……何よ、これ」


ナナ

「……怖がってる……?」


ルナ

「そうね」


ルナ

「“逃げてる”みたいね」


その瞬間。


空気が変わる。


――ギシ


空間が軋む。


まるで世界そのものが悲鳴を上げたような音。


ミル

「……っ」


ノワ

「……なに、これ」


ナナ

「……いや……」


空気が重い。


胸が圧迫される。


呼吸が浅くなる。


ルナだけが前を見る。


真っ直ぐ。


ルナ

「……来るわ」


視界が揺れる。


空間が歪む。


現実が、崩れる。


街灯の光。


建物。


地面。


全部が揺れて見える。


ミル

「……これ……」


身体が拒否する。


本能が警告している。


危険だ。


近づくな。


逃げろと。


――ズズッ


空間が裂ける。


そこから黒が滲み出る。


息が詰まる。


足が、動かない。


ミル

「……っ」


前に会った時よりも――


明らかに、圧が強い。


空気そのものが、


押し潰してくる。


ノワ

「……嘘でしょ」


ノワ

「前に感じた時より……圧が強い」


ナナ

「……っ」


魚クッションが、

不安そうに揺れる。


ルナ

「……構えて」


――そして


それは、


姿を現した。


歪んだ影。


重なった黒。


揺れる輪郭。


存在そのものが、


空間を歪ませている異質な姿。


それは、


猫の形をしていた。


けれど、


普通の猫ではない。


四メートル近い巨大な身体。


黒く濁ったキジトラ模様。


裂けるように伸びた爪。


歪んだ影を纏う尻尾。


その姿は、


まるで憎しみそのものが猫の形を取ったようだった。


ノワ

「……っ」


ナナ

「……これ……」


ルナ

「……歪み猫」


ミルの手が、わずかに震える。


猫じゃらしを握る指に力が入る。


ミル

「こっ……こんなの…」


ノワ

「大丈夫よ…」


ノワ

「…私がいる」


その一言。


短い。


でも確かに届いた。


ミルは小さく頷く。


震えが少し止まった。


ミル

「……はい」


ノワが一歩前に出る。


レイピアを構える。


黄色い光が、

静かに灯る。


ルナも静かに糸を手に取る。


紫色の糸が、

夜の空気へ溶けるように広がる。


ナナの横で、


魚クッションがゆっくりと泳ぐ。


ナナ

「繋ぐよ」


小さな声。


でも、

強い想いが込められていた。


ミルも前に出る。


猫じゃらしを構える。


穂先がピンク色に光る。


ミル

「助けますっ!」


四人の視線が揃う。


歪み猫を捉える。


――戦いが、今始まる。


第二十七話 完

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