表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドキワク猫の冒険  作者: NOBU
第一章〜ドキワクの始まり〜
PR
19/43

「届かせるために」

第十九話



朝。


異世界。


澄んだ空気。


朝日が静かに差し込んでいる。


ナナの家の前に、

ミルとノワが並んで立っていた。


その前には、

腕を組んだルナ。


静かな視線が、

二人へ向けられている。


ルナ

「本気なのね」


ミル

「はい!」


ミル

「教えてください!」


迷いの無い声。


ノワは小さく息を吐く。


ノワ

「……私もお願い」


ミル

「ノワ!」


ノワ

「一人でやらせる訳ないでしょ」


ノワは視線を逸らしたまま言う。


だがその声は真剣だった。


ルナは二人を見る。


少しだけ間を置いて、

小さく息を吐いた。


ルナ

「いいわ」


ルナ

「まとめて見る」


ミル

「お願いします!」


---


ルナは地面へ歩み寄る。


そして、

指先で静かに線を引いた。


さらりと砂が動く。


ルナ

「ミル」


ミル

「はい!」


ルナ

「あなた、攻めしか出来ないでしょ」


ミル

「……はい!」


ノワ

「そこは即答なのね」


ミル

「ドキワク大好きです!」


ノワ

「聞いてないわよ」


ルナ

「守りが得意な子に攻めを教えるのは簡単」


ルナ

「でも」


ルナ

「攻めが得意な子に守りを教えるのは難しいのよ」


ミル

「……」


ルナ

「あなたは典型的な後者」


ミル

「はい!」


ルナ

「良いことよ」


ルナ

「でもそのままじゃ死ぬわ」


ミル

「……!」


空気が少しだけ張る。


ミルは猫じゃらしを握る。


ルナ

「想いが強すぎる」


ルナ

「だから突っ込む」


ルナ

「でも」


ルナ

「当てることと、生き残ることは別」


ミル

「……」


ルナ

「まず覚えなさい」


ルナ

「避けること」


ミル

「……避ける」


ルナ

「そう」


ルナ

「当てる前に、外さない位置に居なさい」


ミルは小さく頷く。


その表情は真剣だった。


---


ルナはノワを見る。


ルナ

「次、あなた」


ノワ

「ええ」


ルナ

「あなたは逆」


ノワ

「……?」


ルナ

「戦い方は問題ない」


ルナ

「でも」


ルナ

「想いがブレる」


ノワの表情が、

わずかに変わった。


ノワ

「……ブレてないわ」


ルナ

「ブレてる」


即答。


ノワ

「……」


ルナ

「ミルが危険になると」


ルナ

「すぐ乱れる」


ノワ

「……」


ルナ

「次の一撃が来たら」


ルナ

「ミルは死ぬわよ」


空気が止まる。


ミル

「私死んじゃうんですか!?」


ミルは二人を交互に見ている。


ノワは黙ったまま、

視線を下げる。


ルナ

「どんな状況でも」


ルナ

「想いを一定に保ちなさい」


ノワ

「……分かったわ」


短い返事。


だがそれはしっかりとした声だった。


ルナ

「始めるわよ」


---


ミルが猫じゃらしを構える。


ルナも静かに構えた。


朝の静かな空気。


少しだけ緊張が走る。


ミル

「お、お願いします!」


ルナ

「ええ」


---


少し離れた場所。


ノワはその場へ座る。


静かに目を閉じた。


呼吸を整えるように。


---


ルナ

「行くわよ」


ルナが踏み込む。


一瞬で距離が詰まる。


ミル

「……!」


ミルも反射的に踏み込む。


そして――


ぎゅっと目を閉じた。


振る。


その瞬間。


ルナ(心)

「え?」


ルナ(心)

「この子、目を――」


――パシッ


ミル

「あてッ!」


猫じゃらしが、


思いっきり自分の顔へ直撃した。


ミル

「っ……!?」


その場へしゃがみ込む。


両手で顔を押さえながら、

小さく悶えている。


ルナ

「……え?」


完全に動きが止まる。


ルナ

「……何それ」


---


少し離れた場所。


ノワは目を閉じたまま。


小さく呟く。


ノワ

「……ああ」


ノワ

「いつものやつね……」


---


ミル

「いたいです……」


ルナは呆れたように息を吐く。


額へ手を当てた。


ルナ

「どうやって戦ってたのよ……」


ミル

「気合いです……」


ノワ

「気合いだったのね……」


ルナは一呼吸する。


ルナ

「まぁいいわ」


ルナ

「まずそこから直すわよ」


ミル

「はい……!」


---


再開。


ミルが踏み込む。


今度は、


ちゃんと目を開けたまま。


ルナの動きを見る。


ルナ

「そう」


ルナ

「まず見ること」


ミル

「はい!」


ルナ

「怖くても閉じない」


ミル

「はい!」


ルナ

「見えてない攻撃は避けられない」


ミル

「はい!」


何度も。


繰り返す。


踏み込む。


避ける。


位置を取る。


振る。


外す。


また踏み込む。


何度も。


何度も。


ミルの息が荒くなっていく。


だが止まらない。


少しずつ。


本当に少しずつ。


ミルの動きが変わっていく。


無駄が減る。


足運びが変わる。


タイミングが合い始める。


ルナの攻撃を、

ギリギリで避けられるようになる。


ルナ

「……そう」


ルナ

「今の位置」


ミル

「……っ!」


ルナ

「その感覚を覚えなさい」


---


夕方。


空が赤く染まり始める。


ミルは息を切らしていた。


ミル

「……はぁ……はぁ……」


額から汗が落ちる。


それでも、


猫じゃらしは握ったままだった。


ルナ

「……少しは形になってきたわね」


ミル

「はい……!」


その声は疲れている。


だが少し嬉しそうでもあった。


---


休憩。


ルナはその場へ座り込む。


珍しく少し息が上がっていた。


ノワは少し離れた場所。


静かに目を閉じている。


呼吸は一定だった。


ルナ

「……あなた」


ノワ

「なに」


ルナ

「さっき」


ルナ

「顔緩んでたわよ」


ノワ

「……は?」


ルナ

「ミルのこと考えてたでしょ」


ノワ

「……」


ノワは少しだけ眉をひそめる。


ノワ

「……別に」


ルナ

「図星ね」


ノワ

「違うって言ってるでしょ」


ルナは少しだけ笑った。


からかうような笑み。


ルナ

「いいのよ」


ルナ

「想いが強いのは」


ノワ

「……」


ルナの視線が、


ミルへ向く。


何度も立ち上がろうとしているミル。


足はふらついている。


それでも前を見る。


ルナ

「……守りなさい」


ノワ

「……」


ルナ

「あなたは」


ルナ

「ミルの騎士なんでしょう?」


ノワの目がゆっくり開く。


静かな瞳。


一瞬の間。


ノワ

「……ええ」


短い返事。


だがその声に迷いは無かった。


---


ミル

「……まだやれます!」


ふらつきながら立ち上がる。


ルナ

「体力の多さは流石ね」


ルナは立ち上がる。


軽く服の砂を払った。


ルナ

「続けるわよ」


ミル

「はい!」


夕焼けの中。


再び二人が向かい合う。


---


夜。


静かな時間。


ミルは空を見上げる。


暗い空。


静かな風。


ミル

「……」


猫じゃらしを握る。


ミル

「当てるだけじゃダメ」


ミル

「ちゃんと」


ミル

「届く位置で振る」


ノワは少し離れた場所で、


静かに目を閉じていた。


呼吸は一定。


昼間よりずっと静かだった。


ルナ

「その調子」


ミル

「はい!」


ミルは猫じゃらしを握り直す。


その目には、


もう迷いは無かった。


ミル

「次は」


ミル

「外しません」


---


第十九話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ