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「歪んだ気配」

第十四話



朝。


家の廊下。


一匹の白猫が、


とことこと歩いている。


口には猫じゃらしをくわえている。


その白猫は立ち止まり、


自分の前足を見る。


ミル(心)

「またフード無くしてしまいました」


ミル(心)

「フード……」


ミル(心)

「どこに置いたんでしたっけ……」


ミルは猫じゃらしをくわえたまま、


廊下をきょろきょろ見回す。


ミル(心)

「ドキワク探しの前に」


ミル(心)

「フード探しです」


ミルは部屋を一つ覗く。


ミル(心)

「ここじゃありません」


次の部屋。


ミル(心)

「ここでもありません」


ミルは廊下の真ん中で止まる。


ミル(心)

「……」


少し考える。


ミル(心)

「ナナが持ってるんでした」


ミル(心)

「ナナのところです」


ミルはとことこ歩き出す。


その時。


ミルの口にくわえている


猫じゃらしの先が


ふっと


光った。


ほんの一瞬。


ミルは足を止める。


猫じゃらしを見る。


光はもう消えている。


ミル

「……?」


ミルは首をかしげる。


ミル(心)

「ドキワクです?」


少し考える。


ミル(心)

「でも」


ミル(心)

「フードが先です」


ミルはまた歩き出す。


猫じゃらしをくわえたまま、


とことこと廊下を進んでいった。


---


キッチン。


フライパンから、


ジュウッと音がしている。


ナナがフライパンを握っている。


ルナは皿を並べていた。


ナナ

「もうすぐ出来るわ」


ルナ

「パンも焼けてる」


ナナ

「いい匂いね」


その時。


リビングの入口から


猫じゃらしをくわえたミルが入ってくる。


ナナ

「あら、ミル。おはよう」


ナナ

「フード洗い終わってるわよ」


ミル

「にゃ!」


ミルはナナの元へ駆け寄る。


ナナは火を止め、


机の上に置いていた


猫フードを手に取る。


ミルはその場にちょこんと座り、


くわえていた猫じゃらしをそっと横に置く。


ナナ

「はい」


ナナ

「ちょっとじっとしててね」


ミル

「にゃー!」


ナナはしゃがんで、


猫フードを被せてあげた。


その瞬間――


ふわっ


光。


ミルは人間の姿に戻った。


ミル

「戻りました!」


ミルは軽く伸びをする。


ミル

「人間便利です」


ルナ

「猫だった人の台詞じゃ無いわね」


ミル

「ナナ」


ナナ

「なあに?」


ミル

「さっき」


ミル

「猫じゃらし光りました」


ルナの手が一瞬止まる。


ルナ

「光った?」


ミル

「はい」


ミル

「ほんのちょっとです」


ルナ

「迷い猫?」


ミル

「多分です」


ルナは少し考える。


ルナ

「でも」


ルナ

「迷い猫は基本」


ルナ

「夜しか出ない」


ミル

「そうなんですか?」


ナナ

「そう言えば昼間は出ないって聞いたわね」


ミル

「でも光りました」


ルナ

「気のせいかもしれない」


ナナ

「とりあえず」


ナナ

「朝ご飯にしましょう」


ミル

「はい!」


ミル

「ドキワク朝ご飯です!」


ナナ

「それじゃあミル、ノワ呼んで来て」


ミル

「はい!」


ミル

「ドキワクコール行って来ます!」


ミルはそう言って部屋を出る。


ナナ

「ドキワクコールいいわねぇ」


少しの間。


ルナ

「ナナ私も少し出るわ」


何かを感じ取ったナナが答える。


ナナ

「分かったわ。後で食べられる様にしとくわね」


ルナ

「悪いわね」


そう言うとルナも部屋を出て行った。


---


住宅街。


ミルは外を歩いている。


きょろきょろと辺りを見回す。


ミルは猫じゃらしを振りながら歩く。


屋根や空を見上げる。


その時。


後ろから声がする。


ルナ

「ミル」


ミル

「ルナ!」


ルナが

近づいてくる。


ルナ

「猫じゃらし」


ルナ

「本当に光ったの?」


ミル

「はい!」


ミル

「少しだけ光りました!」


ルナは少し考える。


ルナ

「……」


ルナ

「おかしいわね」


ミル

「ドキワクです?」


ルナ

「違うわ」


ルナ

「普通じゃない」


ミル

「……?」


ルナ

「少し確認してくる」


ミル

「どこへ?」


ルナ

「神様のところ」


ミル

「えぇ!!神様って本当に居たんですか!」


ミル

「ドキワクです!!」


ルナ

「ええ」


ミル

「気を付けて下さいね!」


ルナ

「ありがとう」


ルナはそのまま走り出した。


ミルはその背中を見送る。


ミル

「……」


ミルは一瞬考える。


ミル

「……あ」


ミル

「ノワを呼びに行ってる最中でした!」


ミルは急いでいつもの空き地へ向かった。


---


夜。


家。


静かな時間。


ナナ

「まだ…帰ってないのね」


ルナ用に分けた朝食が、


まだそこにあった。


ミルとノワの声が、


奥から聞こえる。


ミル

「ノワ!このドキワクはここが外れるんですよ!」


ノワ

「これただのペットボトルだから!」


ナナはその声を聞きながら


少し微笑む。


そして


窓の外を見る。


夜空。


静かな街。


その時。


ナナの手が


ほんの一瞬だけ


止まる。


わずかな違和感。


理由は分からない。


何も言わない。


ただ


静かに夜空を見上げる。


星は


変わらず


輝いていた。


第十四話 完

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