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懐中時計
アナシス商会を辞める時、たいして揉めはしなかったが、周囲の反応は好意的とはほど遠かった。
ハインリヒ・ザルツは、
「修道院なんか、修行大変だよ」
と言った。
カスパーは、私がヴァルーシア社の葬儀社員になるのだと勘違いしていた。まさかこちらが修道僧になるとは思っていない。
「東方大陸に研修に行かされるんじゃねーの?」
などと言い、私が死者保存の古い技術を学ぶものだと思い込んでいた。
「この会社の連中より、遥かに悪賢い奴らを相手すんだよ、エリアスちゃん」
そう警告された。
カスパーは、私とジルケ・リューが接触することを想定していたらしい。
「俺の名前は出さないようにしてくれ」
とも言われた。
「あいつに俺の後輩だって分かったら、食い物にされる。」
その言葉を聞いた時、私は、カスパーとジルケの間には、まだ私の知らない何かがあるのだろうと思った。
「これ、餞別にやるよ。大事に使いな」
見ると、ものすごく古ぼけた懐中時計だった。
坊さんは葬式で時間測るだろ、と言った。
私は感動して礼を言った。
「光の魔力で動く、チャージしないと時間狂うけどな」
その夜、カスパーと酒を飲み交わし、ヴァルトハーフェン天空港に別れを告げた。




