多種族霊園へ
ミトによれば、シャークヤ修道院本院は元々はオーミー山にある山岳秘教の古刹の末寺だった。その後、東方大陸の混乱期に修道僧たちは南方へ向かった。
ジャンブドヴィーパ王国に縁があり、王都の郊外に修道院を構えることがてきた。その後、紆余曲折を経て、現在では単立の超宗派修道院となっている。
各宗派あれど、それぞれ開祖シャークヤの教えであることには変わりない、各宗を止揚した修道院としてで開祖シャークヤの教えを弘めている。
近頃の風潮として、修道院は暗いという理由で若い人の修道院離れが進んでいる。そこで、天窓から日光を取り入れて、明るい修道院内にしよう、と設計にこだわった。
後光という言葉があるが、イグ神の真上から日が射し反射してまるで後光のように見えるという工夫を凝らしている。毎朝、勤行ではこちらの入墓者様のために魔法名の読み上げをしている……。
ミトの説明を受けながらひととおり、修道院内の観覧を終えて、ミトと外に出て、墓地を案内された。墓地は広く、右手にオレンジ色の壁があり、その上には樹木が連なっている。オレンジ色の壁は二百メートル先の巨大なイグ神像まで続いていた。
9月の絶え間なく落ち葉を落としていた。ミトは落ち葉の掃除が大変だ、と言う一方で、掃除も修行です、と続けた。
「開祖シャークヤの弟子にある方がいて、掃除の修行で悟られた方がらいらっしゃります。」
私が「あ、アルジャーノン……」と言うと、ミトは驚いたようだが、頷き、そのように勉強してらっしゃるのはたいへん価値のあることです、とひとりごちた。
アルジャーノンは開祖シャークヤの弟子で、自分の名前を忘れるような、いわゆる知的障害をもつ人であったが、掃除の修行を開祖シャークヤが考案し、修行させたところ、あるとき悟り、智慧第一となったのだ。大賢者アルジャーノンの縁日には花束をお供えしにくる人が後を絶たない。
そのまま巨大なイグ神像の辺りに近づくと、台座の下に四角い建物があるのがわかる。このイグ様の下の四角い建物は合祀墓となっている、と説明される。
建物には金プレートで入墓者の名前が刻まれていた。イグ合祀墓の奥には、暗い雰囲気のある雑木林と、石畳の小径があった。小径をミトの先導で歩いていくと蚊が群がってきて、かなり刺された。
「この先には多種族霊園がありまして、火葬は僧侶がやっています。だいたい、新人がやるんですけどね。」
とすると、私も火葬することになるわけだ、と思った。多種族霊園は修道院とは雰囲気が違い、メルヘンな雰囲気だった。
石畳があり、綺麗な花畑が広がっており、何基かの墓が点在していた。そこでも麦藁を被った修道僧が草引きをしていた。ふと、顔を上げた僧侶の顔は、不思議な幸福感に包まれていた……。




