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地下へ

 世界の下、虚空…


 地下において、私が覚えていることは、少ない。混乱の極致だったからだ。


 どれだけ時間をかけて降りたかわからない。


 連行された私は、三日ほどかけて急な、階段とも呼べぬ坂を降りた。奇妙な、坂だった。


 一つの道で、岐路がないはずだが、規則的に別れ道が出てくるのだ。存在するはずのない岐路。


 路は何処へ行くともわからず消えていった。迷宮のように。


 岐路には休憩所があり、夜はそこで休むことができた。


 地下へ降りるたびに温度が上昇する。


 体感で、五十度以上あった。


 アフーム=ザーの魔導細工箱が使えれば。黒服連中が踏みこんできたせいで、カスパーの懐中時計を隠形二次元化でふところに隠すのが精いっぱいだった。


 暫く、光を魔力に変換できない。時計が止まるかもしれない、調整せねば…。


 地底に着いた時には疲労困憊していたが、驚くべき光景がそこには広がっていた。


 特異な広大な空間がそこにはあった。地下都市と言ってもいい。


 空間の上空には太陽のような巨大な紅き光球があり、赤い光を放っている。


 黒い立方体の石碑があり、そこにはヨス修道院と刻まれていた。


 赤い光に支配された、美しくも無機質な空間。


 赤きヨスに青きクン=ヤン。


 赤きヨスには神々に反逆せし、混沌の巨竜どもが封印されている。また、悪しき魂も。


 青きクン=ヤンではイグ神が、九頭竜のベッドで眠りについている。九頭竜はイグの代わりに、赤きヨスからの脱走者がいないか、寝ずの番をしているという伝承がある。


 善き蛇人はクン=ヤンで永遠に安らぐのだ。


 むろん、ここのヨスはレプリカだろう。本物は中央大陸にしかない。


 整然と並ぶ土壁でできた…赤い光に照らされた、殺伐とした幾何学的で小さな寺廟や、風の吹かない街並み。


 雰囲気だけならば、本物と言っても差支えないだろう。まるで私は、ヨスに封じられた悪しき魂ではないか。


 建造物には化石になった蛇人たちの骨が化石になり埋まっている。


 化石葬。ヴァルーシア社で最も人気のある埋葬法だ。ここが本拠地だとは。


 街の中心の広場には巨大な伽藍が建っており、その古風な東方風の建築は南方では見かけたことがないものだった。


 巨大な迷路のような空間。常に、同じ寸法の廊下と幾何学状の霊廟が続いている。廊下には赤く暖かな光が化石たちを照らしていた。


 廊下の床は平面ではなく、やや歪曲しており、廊下は筒のように円形だった。


 道は歪曲しており、岐路が多く、自分がどこにいるかもわからない。


 それが、一日歩いても霊廟の羅列に終わりがない。まさに地下都市である。


 こんな大規模なものを、王国が許可するのだろうか。


 この筒状の廊下には、煌めくタイルのようなものが時折、落ちている。


 拾い上げてみれば、薄く、タイルではなく、形も楕円形であった。


 巨大なウワバミの鱗。誰かが魔術的先祖返りでも起こしたのだろうか。蛇の血が濃いものには、そうなる者もいると聞く。


 それは小型な竜であり蛇でもある我らにとっては口にすることも憚られる禁忌である。


 私はンゴスの穴に封じられた巨竜種を思い出していた。

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