人種問題
ミイ=ゴの捕虜の自白によれば。
彼らは前星系の最も外側を周る暗黒惑星ユゴスを植民地とする菌類種族であった。
母世界にとっては田舎の寂れた駐屯地のようなものだったが。
彼らの神ハスター=マプラープタの敵である、クリシュトルフの監視のための前哨基地でもある。
監視中にルルイエの民が、三脳生物種を操作して、深きものどもの子孫でもある難民を、他天体から自らの星系に呼んだのだ。眷属を招くのための呼び声が漏洩したために、ミィ=ゴは調査に乗り出していた。
深きものどもが増えたならば、前星系第三惑星の僅かな鉱物採取権にも影響がある。
ちょうど、テレパシーで唆した三脳生物種たちが、飛行艇に乗せて打ち出された脳缶の回収目的だった。星域をゆっくりと飛翔していたミィ=ゴだったが、飛行艇のスピードと角度が予想外だったために回収し損ねていた。
脳缶は宇宙難民に回収されていた。
焦ったユゴス政府は、上に事態の収集を願った。
母世界から許可が降り、銀河清掃局から次元操作符を用いた生命清掃作業に踏み切ったとのことだった。
かくして、宇宙の物理法則さえ歪め、宇宙の崩壊を早めたとも言われた大規模な戦争が起こった。
この戦いは「混沌戦争」と言われている。
星々の戦いで力を使い果たしたクリシュトゥルフも、この惑星にイグと共に飛来し海底で眠りについた。
かの神が眠る西海に向けて、海岸には廟や石碑があり、こう刻まれている。
干上がれば 魚集まる 潮だまり
かの神の眷属である「深きもの」とその子孫の他星系の難民たちは、一時期地表で繁栄した。イグが落胤の巨竜種を封印してからしばらくの間である。
地表にいたものは、今では我々と共に社会に溶けこんでいる。
深きものどもの多くは、脱水して皮のような状態となり、眠りについた。ダゴンやハイドラなど高位の者たちは海底に潜り、ルルイエの角度の狂った宮殿で、かの神の寝所の傍ら、復活を祈願している。
其は永久に横たわる死者にあらねど、測り知れざる永劫のもとに死を超ゆるもの
とクリシュトゥルフの聖なる詩の詠唱があり、
番組はここで終わった。
昔、大学で見た映像の編集に過ぎないが、私は黙っていた。
フーテイは、私達はイグの末裔でもあるが、ミィ=ゴの文明はもちろんのこと、この惑星の多種族である「深きもの」や「無形の落とし子」そしてショゴスとも関係はよろしくない、と言った。
「悲しいこっちゃ」
この教会は、汎種族的な平和運動もしている。その立場からヘイト表現の話になった。
「深きものども、て言わはることが多いな」
イグの末裔である我々の中には、深きものを敵視しているイグ原理主義のようなグループもいる。かつて前星系での太古の時代、そしてこの惑星においても、イグとクリシュトゥルフとゾゥタクトウァの信者たちは争っていた歴史もあるからだ。
深きものどもは、直接、他種族と性交したがるのだ。ヘイトの原因ともなっている。
私はヌメリとした魚介の幻臭を嗅ぎ、顔をしかめた。




