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魔法人類史

次の魔法人類史はなかなか面白い授業だった。


フーテイは魔導映写機を用意していた。


授業は映像教材を用いたものだった。スクリーンに映像が写し出され、ナレーションが始まる…。



 魔法を創造した蛇神イグの種族は極めて攻撃的で、支配、被支配で考える種族であった。


 イグの種族は第一根源人種とも呼ばれた。伝承では、彼らはウボ=サスラヴァティ女神から創造されたと言われている。そのため、拝む時は、かの女神をいっしょに祀る。


 彼らは他天体より、この惑星ハイパーボリアに飛来した。蛇に似ているが、直立歩行する知的生命体だ。私たち人類の先祖は、彼らが連れてきた奴隷であった。魔力のない三脳生物種だったという。


 彼らは魔力と音の振動を用いることにより、催眠波、干渉波を発することができ、他のものを支配することができた。舌や尾の振動と魔力で、様々な魔法を使った。


 この魔力をルーシュという。


 彼らの精神の根幹を為すのは「陣取りゲーム」であり、自らの陣地をとられることは、眠ってしまい支配下におかれ、手足のように動かされるか、エネルギーを捕食されて死ぬことであるのだ。この陣取りゲームは「ヨスのゲーム」と呼ばれ、競技化されているほどだ。


 さらに、イグの「魔法使い」は魔力で物質を動かすことも、違う形態に変身することもできた。


 彼らは非常に長い時間、進化したが、やがて終わりが訪れた。星の世界で戦争があった。伝説によれば、数万年前、イグの民の住む星系第三惑星は、遠い外宇宙の種族の仕掛けた魔術により不可思議な「絵」の中に閉じ込められた。イグ神とその眷属は自らを2次元化することにより絶死の次元での生存を可能とした。現存する地を這う蛇は、イグの民が二次元平面化した名残りだという。


しかし、平面化された水の豊富な惑星にはイグの他にも太古の神が眠っていた。


 かの神の住まうルルイエ宮では、生物には狂った角度で建築されているように感じるというが、三次元生物種が認識できない余分な空間の広がりがあるので角度が狂うのだ。神という高次元生物の住まいでは、四次元以上の空間の広がりができる。


 このため、外宇宙の魔術による絵の二次元化がルルイエを通過しようとしても、予測できない“四次元的な方向”に迂回してしまっていたのだ。


 かの神とその眷属にとってはさしたる攻撃ではなかった。


 しかし、その惑星の海や、地表で繁殖していた多くの生物種は「絵」の中に閉じ込められ二次元化したため、かの神は激怒した。この神は発音できぬ類の神名を持つが、この世界ではクリシュトゥルフと呼ばれている。兄弟神のゾゥタクトウァ、アトラクナチャータもまた発音できぬ類の名だが、蛇人の発音ではそれぞれ、そのように読む。


 こうしてイグ、クリシュトゥルフやその兄弟神たち地球の神々とその眷属は、外宇宙の種族に戦いを挑み、星系の秩序は混沌と化した。


 しかし、敵は強大だった。


 この星間戦争で絶滅の危機に陥ったイグやクリシュトルフの種族は、宇宙の辺境にあるこの星系に飛来して定住した。敵から居場所がわからぬ、暗黒物質に絶妙に隠れた星系であった。そして、元の星から連れてきた魔力の無い三脳生物種を奴隷として、この星を開拓した。


 個体数の減少に悩んだイグの種族である蛇種は、繁殖力旺盛なこの三脳生物種と、自らを掛け合わせた。といっても直接に交わったわけではない。進んだ魔導科学をもって、蛇種の魔力を持つ器官をその生物種に埋め込んだのだ。その器官はクンダバッファーと呼ばれる。そして、三脳生物種の繁殖と共に進化して、自動的に彼ら純血種のイグに近づくよう設計した。つまりは、遺伝識の優勢なるものが隔世遺伝で生まれるようにしたのだ。


 しかし、掛け合わせの結果、予想外の事態が生じた。何故か、混血の子孫が巨大化した。そして、絶大な力を持つ巨竜種が誕生した。彼らはこの星で数万年の間、繁栄を極めた。巨竜種は第二根源人種と呼ばれる。


 霊的傲慢に陥った巨竜は地上の全ての生物と資源を食い尽くし、クリシュトルフら神々にさえ戦いを挑まんとしたが、彼らはそれを憂いたイグ神によりンゴスの深き深淵に閉じ込められたという。


 その際、始祖イグ神も彼らを監視するために地下に降りた。それが地底浄土クン=ヤンである。


 しかし、竜のうち小型な種は、地下世界において巨竜の食用にされた。その苦しみを覚者シャークヤがイグ神に訴えた。彼らは蛇神の大慈悲により地上に住むことを許された。シャークヤは彼らを率いて地上に脱出した。それが、我々である。この世界の人類はイグと三脳生物種の「混血」なのだ。


 我々が地底にいる数万年の間に、クリシュトルフの眷属や、アトラクナチャータの娘たち、ゾゥタクトゥアの落とし子、が地表で繁栄していた。深きものどもは三脳生物種と交わり混血し、アトラクナチャータの娘たちも同じように三脳生物種のオスを誘惑し子供たちを産んだ。無形の落とし子も同じく三脳生物種と交わり混血の落とし子を増やした。


三脳生物種は大いなる姦淫の対象となったのである。


 「深きものども」起源のインスマス人は第三根源人種と呼ばれ、「アトラクナチャータの娘たち」起源のチィトカァ人は第四根源人種、「無形の落とし子」起源のヴーアミ人は第五根源人種と呼ばれた。


 我々ヨス人は第二根源人種と呼ばれる。


 ヨスの蛇人は蛇の血の濃さで、その人間の魔力量が決まる。その魔力《ルーシュ》は、尾骶骨にあるクンダバッファー器官にわだかまっている…


 三脳生物種に魔力が無いというのは正確ではない。正確にはルーシュを知覚、制御、吸収、貯蓄できる器官が無いのだ。その器官がクンダバッファーである。


 この器官が無いということは、消化器官が無いのと同じで、垂れ流されている。垂れ流されたルーシュはクリシュトルフやイグら地球の神々のエネルギー源となる。その意味で彼ら三脳生物は穀物とあまり変わらないのだ。


 しかし、最近の風潮では、我々の生物学的かつ文明的先祖でもある三脳生物種の名誉と権利を鑑み、彼らは第零根源人種と呼ばれている。


 また、人種と認めるかどうか危ぶまれるが、ショゴスたちの問題もある。現在、彼らの大部分はゾゥタクトウァ神に奉仕している。ショゴスはゾゥタクトウァの祝福で無形の落とし子へ進化できるからだ。祝福とはかの神の粘液の一滴を自らに混入させることだ…それにより神性が宿る。東方連邦は共産主義だが、無形の落とし子が官僚となり、ショゴスは知性が低いほど過酷な労働下にある。ゾゥタクトウァ総書記は労働者の神として、数万年前に自らの民が巨竜たちに食われ、奴隷にされたことを、イグの民に抗議し続けている。


また、東方人民の権利を叫ぶショゴス解放戦線など一部の過激派が頻繁に王国でテロ活動を繰り返している。



 集中していると、時間はあっという間に過ぎた。


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