六時
朝の礼拝が終わると、座学の時間になった。
修道院の奥へ進み、浴室の入口にある扉をさらに突っ切ると、多目的ホールがある。
「竹の間」
と呼ばれている部屋だった。
ここでは古代魔法経典の写本を行うほか、修道僧たちへの座学も行われる。
その「竹の間」で、例の仏頂面をした背の低い筋肉質な修道僧が待っていた。
私の顔を見るなり、
「遅い。早よせい」
と言った。
「……すみません」
「ワシが先に来とるとは、どういうこっちゃ」
どうやら西の出身らしい。
「ワシはフーテイや」
それが彼の名だった。
座学では、修道院で必要になる基礎知識を教えられた。
最初に習ったのは、「六つの時」という時間観念だった。
古い教えでは、一昼夜を、
晨朝。 日中。 日没。 初夜。 中夜。 後夜。
の六つに分ける。
古い経典にも、
地底浄土で蛇神イグが尾がを打ち鳴らすことにより、昼夜のない地下世界の六時を決めていた
とある。
地底では天体が観測できないために、時間はイグの超感覚で測られると経典にある。
さらに、古代の修行者たちの食事についても教えられた。
彼らは基本的に一日二食だった。
後夜に托鉢へ出かけ、朝の勤行の前後に朝食を取り、十一時頃に昼食を取る。
朝食を小食、昼食を正食と呼ぶ。
午後以降は基本的に食事を取らない。
ただし、「薬膳」という考え方があり、薬として必要なものなら午後でも口にしてよい。
そのため、修道院でも夕食の代わりに薬膳が出ることがあるという。
ただし、肉や魚はもちろん、五葷――ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキ――も禁止されている。
刺激が強く、修行の妨げになるからだという。
その他にも、祭壇に置く灯明や華鬘の位置、念珠の置き方など、細かな作法を教えられた。
念珠は三層に巻き、梵天を内側にして置く。
親玉と四天があり、それを目印に主玉を繰る。
親玉から一周すると百八。
百八回繰るごとに、弟子玉を一つずらす。
この修道院で使われている念珠の玉が、算盤の玉のように尖っているのは、剣を象徴しているからだという。




