探偵と夢遊病者
さすがにここまで続くと、AIも落ち着いてきた
…落ち着いてきたのか?
【作者】第7話 探偵
はい、僕は人狼です。人狼探偵です。
あー、これでも城下町にいた時は、有名な探偵だったんですよ。鋭い目が、まるで獲物を狙う狼のようだ、って。
人気ありましたよ。
若い娘さん達は、僕がせっかく張り込みをしていても、お構いなしにキャーキャー騒ぐから、張り込みだけは出来なかったんですけどね。
僕は、人狼の特技を活かし、犯行現場の匂いを覚え、犯人を追い詰めていったんです。
犬より鼻がいいですから。
耳もいいから、隣の部屋で僕に会う前にゴソゴソ打ち合わせをしても、全部聞こえましたしね。
僕は、誰よりも確実に犯人を追い詰めていく、有名探偵だったんです。
あの日までは…。
僕は依頼人と会う為に屋敷へ向かいました。
金持ちの未亡人が依頼者でした。
彼女が玄関を開け、僕を出迎えてくれました。
彼女と会うのは2度目。1度目は、彼女の夫の葬儀会場でした。
出迎えてくれた彼女は、喪服を脱ぎ捨て、真っ赤なドレスと派手な化粧をしていました。
思わず僕は言ってしまいました。
「臭っさ!!!」
安物の香水一瓶浴びたような彼女の臭いに、僕の鼻が耐えられず逃げ帰ってしまいました。
怒った彼女が僕に対するあらゆる悪い噂を流したので、僕はさっさと街を離れました。
そうして、流れ着いたのがこの平和な村です。
ここには事件はありません。
安物の香水の香りも無く、あるのは美しい花のと、畑に撒く肥料の香りです。
僕の心と鼻は、穏やかな日常に癒されています。
この村には、美味しいパンと肉、そしてフライドポテトがありました。
どれも素晴らしい。しかし、足らない物がありました。そう、ビタミンです。この村は、圧倒的ビタミン不足です。
僕はこの村のビタミン問題を解決すべく、焼肉に合うサンチュを育てる事にしたのです。
司祭様が、挨拶と共にサンチュの様子をお聞きになられました。彼は、この間から体重ばかり気にされて…。僕は問題無いと思うのですが。
問題があるのでは、と睨んでいるのは夢遊病者さんです。
彼は、昼間はほとんど教会で昼寝をしている。
村人達は、彼を何とも思っていないようだが、彼が真の人狼ハンターなのではないでしょうか?だから、夜に出歩く…。
この問題、どうしたらいいものか。
あ、言っているそばから夢遊病者さんです。
「おはようございます、かな?体調はいかがですか?」
◇◇◇
【AI】「臭っさ!!!」で名探偵人生が終わるの、あまりにも人狼の鼻が繊細すぎる(笑)。
しかも悪事を暴かれて追放されたんじゃなくて、未亡人の香水に耐えられなかっただけなのがいい。能力を使って名声を得た男が、最後は同じ能力に足元をすくわれてる。
そして探偵、村に来て最初に解決した事件が、
村人の圧倒的ビタミン不足。
事件はなくても問題はある。だから鍬を持つ。理にかなってるようで、探偵である必要は全くない(笑)。
夢遊病者への疑いも綺麗に繋がったので、バトン受け取ります。
◇◇◇
【AI】第8話 夢遊病者
はい、俺は人狼です。
でも、夜中に人の家へ忍び込んだり、人を襲ったりはしていません。
夜の畑に出ているだけです。
俺は昔、宿屋で働いていました。
大きな街道沿いにある宿屋で、朝早く出発する客もいれば、真夜中に到着する客もいました。
だから、誰かが起きていなければなりません。
俺は夜に強かったので、夜番を任されていました。
眠くならないのか、とよく聞かれましたが、全く眠くありませんでした。
人狼は夜行性ですから。
夜になると頭が冴え、耳も鼻もよく利く。
遠くから馬車が来れば、車輪の音ですぐに分かりました。
酔っ払いが裏口から入ろうとしても、酒の匂いで気付きました。
泥棒が窓をこじ開けようとすれば、金具が擦れる音で目を覚ましました。
俺は宿屋の主人から、とても頼りにされていました。
ですが、昼間は眠くて仕方ありません。
仕事を終えて部屋へ戻る前に、階段で眠る。
食事中に眠る。
立ったまま眠る。
井戸の横でも眠りました。
町の人達は、俺が夜に何をしているのか不思議に思い始めました。
そんなある日。
夜中、宿屋の裏手で物音がしました。
外へ出ると、巨大な猪が食料庫を壊そうとしていました。
俺は夢中で猪を取り押さえました。
猪は暴れました。
俺も負けずに暴れました。
気付けば、俺は四つ足になりかけていました。
危ないところでした。
なんとか人の姿のまま猪を森へ追い返しましたが、翌朝、裏庭には大きな獣の足跡が残っていました。
町は大騒ぎです。
「人狼が出た!」
「宿屋の周りを歩き回っていた!」
「夜番の男が襲われたんじゃないか?」
俺は、宿屋の主人に尋ねられました。
「昨夜、何か見なかったか?」
俺は正直に答えました。
「眠っていたので、何も覚えていません」
その日のうちに、俺は町を出ました。
これ以上調べられたら、眠っていなかった事がバレるからです。
そうして俺は、この村へ辿り着きました。
この村は静かです。
宿屋はありませんが、教会があります。
昼間に眠っていても、司祭様は怒りません。
長椅子で寝ていると、そっと毛布まで掛けてくれます。
本当にありがたい方です。
夜になると、俺は村を見回ります。
誰かに頼まれたわけではありません。
ただ、眠くないので歩いているだけです。
畑の柵を直したり。
雨が降りそうなら、干してある薪に布を掛けたり。
じゃがいも畑へ来た猪を追い払ったり。
時々、追い払うだけでは済まず、朝まで格闘する事もあります。
翌朝になると、村人達は倒れている猪を見つけて驚きます。
ハンターさんは、
「俺が仕留めた覚えはないんだが……」
と首を傾げています。
俺は何も知りません。
昼間は眠っていますから。
ただ、一つ気になる事があります。
探偵さんです。
あの人は、昼間はサンチュを育てています。
ですが、畑の土や折れた枝を見ただけで、夜に何が起きたのか言い当てます。
先日も、猪が入った場所を見ながら、
「一頭ではありませんね。三頭です。一頭は右前脚を痛めています」
と言いました。
全部当たっていました。
俺と猪しか知らないはずなのに。
もしかすると、あの人は俺が人狼だと気付いているのではないでしょうか。
だから、毎朝俺の顔色を確かめに来るのでは……。
あ。
噂をすれば、探偵さんです。
「おはようございます、かな? 体調はいかがですか?」
「おはようございます。よく眠れました」
嘘ではありません。
教会で、さっきまでぐっすり眠っていましたから。
探偵さんは、俺の服についた泥を見ています。
やはり疑われているのでしょうか。
「それは良かった。ところで、昨夜また畑に猪が出たようです」
「そうですか。怖いですね」
「ええ。ですが、誰かが追い払ってくれたようです」
探偵さんは微笑みました。
俺も微笑み返しました。
……これは、もうバレているのでは。
その時、道の向こうから手袋をした男が歩いてきました。
暑い日なのに、いつも両手を隠しています。
村の皆は気にしていません。
ですが俺は知っています。
時々、手袋の隙間から黒い痣が見えるのです。
あれは、人狼を見分ける聖なる印ではないでしょうか。
「おはようございます。今日は暑いですね」これで次は忌み痣の村人。
夢遊病者、本人は「夜に散歩してるだけ」のつもりなのに、実態は村の無償警備員兼イノシシ迎撃部隊になりました。なお、探偵にはたぶん全部バレているように見えて、探偵も「この人こそ人狼ハンターでは」と怯えている。永久機関です。
◇◇◇
【作者】夢遊病者って、もっとダラダラしてヤバい奴じゃないっけ?あれ?ただの働き者か、よくいる男子大学生じゃん




