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サモン・タイム!~勇者と七人の道連れを添えて~  作者: 鰐鯨
なにがどうして異世界生活
21/23

ヒザン村にて 4


 船と呼ばれる山賊共のアジト内は、これまた奇妙なものだった。

 内部はどう見ても近代的――いいや、少し違うな。

 なんというか、宇宙人が作った訳の分からない乗り物に乗り込んだ気分というべきか。


 船内の壁などには文字や不可思議な模様が刻まれており、魔術塔(ゼノア)の壁面にあったものに近しい印象だ。

 違うのは発光していないこと、機能としては完全に死んでいることだろう。


 船は船でも、海を渡る船じゃあない。

 こりゃああれだ。SFなんかで見る宇宙船の方がイメージに沿う。

 どう考えても普通の船じゃない。


 道案内の山賊に聞けば、入り口から見て左に進むと恐らく船の操縦桿だと思しきものがあるらしい。

 要するに船橋(ブリッジ)――船の操舵室があるような話だ。

 右手に行くと上と下に続く階段があるようだが、上に進む階段は地中に埋まっているから進めない。

 下に行く階段は手前側に一つ、さらに歩いた向こうにもあるらしく、それなりの広さがある船だということがわかった。


 豪華客船でも埋まってるのか? 相当なでかさのものが埋まってそうだ。


 話に聞いた通りにまず船橋に進む。通路は人二人分が並んだ程度の幅だ。

 通路の先には広い空間が見えてきた。

 部屋の出入口には自動ドアのようなものが付いているが、それは開いたままになっている。


 やっぱり普通の船じゃねぇ。自動ドアだとするならこの船の技術力はおかしい。

 こっちの世界の状況を見るに、とてもそこまで発展していない。

 この技術の落差はなんだ? どうして過去の遺物であるはずのこの船のほうが進んだ技術を積んでいる?


 船橋(ブリッジ)と思わしき部屋に入ると、無数の座席と操作盤らしいものが備え付けられていた。

 現代の船や旅客機と違うのは、操縦桿と言われたものが球体状になっていて、操作盤らしいものにすっぽり収まっていることだ。

 推測でしかないが、魔術によって起動するものなのだろう。その辺はこの世界らしさがある。

 

 おかしいのはそもそも外が見えないことだ。

 ガラス張りではなく、部屋自体が壁に覆われている。

 仮にこの船が動いても前が見えない。なにか仕掛けがあるのか?

 なんにせよ、一体どうやってこいつを動かしていたのか……。


 ざっと見た感じ、印象としてはやはり魔術塔(ゼノア)に近いものがある。

 なんとなくだが……やはりこれは魔術王国(ディザニア)製のものなんじゃないのか?

 この球体状の操縦桿らしきものも白の叡智(アイラ)に近い意匠だ。


 だとしても、なんでこんなところに?

 山の中にある以上、飛んでここに墜落したとしか思えないが……。 


 戦闘かなにかで撃墜されてここに難破したってことだよな。

 いや――こいつは本当に、破壊されて放置されているのか……?


 こいつが動いてた時代、どれほどの価値があったかわからない。

 しかし、これだけの規模があるものを捨てるなんて有り得るのか?


「あーん、お腹空いたヨー! ひもじいヨー!!」


 思考を遮るほどの腹の虫が泣きわめく。

 人が真剣にこの船がなんなのか考えてるってのにド馬鹿(シェシェ)のやつ……。


「おい、いくらか食料ぐらいあるんだろ? あの馬鹿の口に詰め込んどけ」


「あ、ああ。食堂に連れてくよ。手前の階段を下りて――って、お前はもう場所知ってたな……」


 山賊女もこいつまたか、と言わんばかりの冷めた目でド馬鹿(シェシェ)を見ている。

 ここに勝手に住み着いた時もこんな感じだったんだろうな。

 でけぇネズミのほうがまだ可愛げがあるってもんだ。

 女子組二人とついでに骸骨(スケルトン)共も食堂に向かって、俺とバンディ、山賊男だけになった。


「興が削がれちまったが、ひとまず本来の目的を達成するとしよう。奪ったもんはどこに蓄えてんだ?」


「最下層の部屋にありますよ」


「じゃあ案内頼むわ。奪ったもんは持ち主に返さねぇとな!」


 まぁ、全部返ってくる、なんてのは誰も思っちゃいないだろう。

 可哀想だが奪ったもんを山賊共が売っちまったなら仕方ねぇ。

 取り返しようがないし、金も使っちまってないなら仕方がない! 取り返せたものだけで我慢してもらうしかないよなぁ。

 ああ、良心が痛むぜ。もう少し俺が早くこの事件を解決していれば……。


 そういうていでいこう。

 三分の一程度貰っていってもバレやしねぇ。

 返ってくるものの総量が多けりゃ文句は言われんだろうし、罵倒や怒りは山賊共に全部向く。

 俺は何食わぬ顔で報酬とお駄賃を頂戴すればいい。


 奪ったものを蓄えた倉庫は、通路奥側の階段を下りた場所らしい。

 食堂に向かった二人とは違う階段だな。


 宝物庫にしている場所を目指して船内を歩きながら、さりげなく『生命感知(ライフサーチ)』、『聞き耳(ヒアリング)』、『魔力感知(マジックサーチ)』を使用。

 待ち伏せがないか確認してみると、階下から聞こえる音と魔力の反応に気付いた。


 階下に二人固まった反応。これは女子組だろう。

 だが俺が向かう先の階下に三つ固まった反応がある。

 さすがに山賊連中も全員で来たわけじゃねぇらしい。お留守番がいるようだな。


「なぁ、他の仲間はいないのか?」


 さりげなく長身の山賊に聞いてみる。


「あの村にいた連中で全員ですよ」


 山賊男は顔も向けずにそう言った。ああ、嘘だな。


 階段に差し掛かり、それを下りていく。

 敵はこの先を下りた部屋にいるようだ。

 固まっているようだが、話し声がしない。どうもこちらに気付いている節がある。

 まぁ、音は向こうも聞こえるだろうし、警戒しているのかもしれない。


 バンディも匂いや音で他に誰かいることに気付いたようだったが、俺が手で襲い掛かるのを制した。


 長身の山賊が階段を下りながら、奇妙な下り方をしていることに気付く。

 カン、カン、カン。カン、カン、カン。

 踵で階段を踏むようにしながら、三回続けて音を出し、一度止めてまた三回音が鳴るようにして下りていく。


 階下の部屋にいる三人分の反応があった。

 そいつらはそれぞれ部屋の中を動いているようで、部屋の外に出てくるわけではないらしい。

 こちらの動きを仲間に伝えたのだとすれば、不意打ち狙いで部屋に潜んでいるのかも。


「変な下り方するな?」


「……クセなんですよ」


 敵がいる、ということを伝える合図を予め決めているのは中々どうして用心深い奴らだ。

 階下に降りれば、やはり自動ドアなのか開きっぱなしの部屋がいくつか目に入る。


「それで、倉庫はどこだ?」


「こっちです、着いてきてください」


 ひょろ長山賊は三人分の反応がある部屋の前で止まり、こちらです、と言いながら中に入る。

 俺はバンディを外で待機させて、その後に続いて中に入った。


 途端。


「おらああああああ!!!」


 真横から斧を振りかぶった男が襲い掛かってきたので、俺は後ろに下がってそれをかわした。


「くそっ!」


「何やってんだ! ええい、やるぞお前ら!」


 長身の山賊が叫ぶと、隠れていたのであろう山賊が部屋から出てくる。

 とはいえ居残り組は長身の山賊を除いても三人程度だ。

 他の反応を探るが山賊女とド馬鹿(シェシェ)だけしか感じられない。

 こいつらを片せばもう邪魔者はいないってわけだ。


 それにしても、細いやつもまぁ強かな奴だな。

 お粗末だが従順を装って騙し討ちとは。

 さてどうしたもんか……。


 俺の答えも待たず、バンディが牙を剥いて吠えた。

 さすがに魔獣の威嚇だ。山賊共が少したじろいだのを見て、俺はバンディに指示を出す。


「バンディ、来た道を戻れ!」


 命令すると、バンディは即座に道を引き返していく。俺もまた背を見せて逃亡を開始した。

 振り返ると山賊共が慌てたように部屋を飛び出して追ってくるが、俺からすればそれが狙いだった。

 一直線、そして遮るもののない通路。


 なにより階段。下りはともかく上る側はすぐには上がってこれない。


 階段を一気に『跳躍(ハイジャンプ)』で飛び越えて上に立つと、俺は腰の銃を抜いて階下の山賊共に向けた。

 銃を見て、驚いたようにして山賊共の足が止まる。


「いいまとだ」


 銃士(ガンナー)の固有能力(アビリティ)『弾種選択』より、技能(スキル)貫通弾(ピアース)』を使用。


 三連射すると、銃声と共に弾丸が山賊共の腹や胸を貫いた。

 悲鳴を上げる間もなく三名を絶命させると、残った長身の山賊は茫然と立ち竦んでしまう。

 進むも引くも出来ずに固まってしまい、仲間の死体と俺を交互に見て困惑しているようだった。


「おい、どうする?」


 銃口を向けると、男は怯えたようにその場にへたり込んだ。


「ま、待ってくれ、いや待ってください! お、俺は……その……」


「いやいや、騙し討ちしようなんて酷いじゃねぇの。

ほら、俺って結構小心者だからさ。小っちゃい心が傷付いちゃったよぉ」


 銃口はまったくぶれることなく生き残ったひょろ長山賊に向けている。

 冗談交じりで言いつつも、俺の頬はまったく緩んでもいない。

 奴の目に、今の俺はどう見えているのかな。


「ゆ、許して……」


「持って来い」


「え?」


「村から奪った金品から、お前らが今まで蓄えた全て。船橋(ブリッジ)に持って来い。これ以上余計な手間をかけるなよ」


「わ、わかりました」


「あとその死体も片付けとけ」


 指示を出し、俺は先ほどの操作盤のある船橋(ブリッジ)へと戻った。

 まだなにか仕掛けてくるかもしれないしな。

 安全が確認できた場所にいるのが一番気楽だ。

 恐らく船長が座るであろう操作盤の前の座席に腰掛けて寛ぐと、これが中々良い座り心地だった。


 銃を眺める。剣と違って人を殺したという感覚がまったくない。

 この利便性、手軽さは……罪悪感を濁らせる。

 俺が撃ち抜いたのは人間ではなくカカシだったのではないか、と思ってしまうほどに。


 そんなことを考えていると、両手に食料を抱えたド馬鹿(シェシェ)と山賊女が戻ってきた。

 ド馬鹿(シェシェ)はともかく、山賊女は恐々としている。


「さ、さっき大きな音がしたけど……?」


「ああ、ちょっと躾をしてただけだ」


 俺が銃を手の代わりに振って見せると、山賊女の顔が強張る。

 ド馬鹿(シェシェ)は食うのに集中しているせいか銃を見てもなにも反応しなかった。


 この様子なら山賊女が裏切ることはなさそうだな。

 もう一人は食い意地だけで生きてるようなもんだから論外だし。

 ほんと食ってる間だけは静かだなこいつ……。


 少し時間を置いて、ひょろ長山賊が蓄えていたものを次々と運んでくるようになった。

 村々を襲って得た金目の物から普通の家具まで色々だ。

 金自体も持ってきたがこちらもそれなりの蓄えがあるらしい。


 全部俺が貰って帰りたいところだが、さすがにそれは出来ないからな。

 さて、選別して返す分と貰う分に分けようか。

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