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52 朝食

 書く時間がなくて更新が滞っております。

 次回更新も未定です。すみません。

「今までお前の友好関係には口を出さなかったが、今後クルジット嬢と交流するのはやめてもらう」

 朝食のオムレツを食べながら父はそう言った。

「……最近はあまりお会いすることがございませんのでかまいませんが、どのようなご事情かお伺いしてもよろしいかしら」

「ジェダイトはクルジット嬢に何か薬品を飲まされたと推測されている」

「薬品」

 サルファーが隣で眉を寄せた。

「何の薬品かまでは分からないが、頭痛薬や咳止め薬のようなものではなく、自白剤や睡眠薬のような普段あまり使われないものと思われる」

 は!? 自白剤!?

 私は声を上げるのをどうにか堪えた。

 サルファーの持つフォークがパキと音を立てている。ちなみに私が同席している為、三人ともカトラリーが木製だ。


「ルビーさんがお兄様にそのような薬を飲ませる動機が分かりませんわ。私から見るとおふたりは仲が良いと見受けられましたけれど」

 昨日はデートしていたみたいだし、膝に乗せていたみたいだし?

「暗殺者は大抵ターゲットと仲が良い」

「暗……!」

 ルビー、ジェダイトを殺す気なの!?

「暗殺者っつーのは違ぇだろうけど、嵌めようとしてた感じはあるな……」

 サルファーがぼそりと呟く。


 嵌める……次期公爵夫人狙いかしら……

 睡眠薬で眠らせて裸でベッドに寝る的な? 何もしてないけどしてしまったと思わせる罠?

 ……ジェダイトなら引っかかりそう。


「クルジット伯爵家に関しては上にも話を通してある。サルファー君もなるべく関わらないように気を付け給え」

「ご忠告痛み入ります」

 サルファーはにやりと笑って頷いた。

 元々サルファーはルビーを避けていたようだから、大義名分を手に入れたものよね。

 そんなサルファーにちょっと笑ってしまう。

 笑ったのがバレてサルファーと目が合う。にっこりと笑うと椅子を軽く蹴られた。お行儀が悪い。


「仲が良いなふたりとも」

 父のこの顔は知っている。サドっ気が出る顔だ。私は水を一口飲んで身構える。

「この際結婚したらどうだ」

「しません」

「悪い冗談だ」

 私と同時にサルファーも答えた。ちらりと見ると苦笑いされる。


「しませんよ。あっちは未だ山賊や密入国をしようとする奴らがいるんです。戦闘に参加できるとまでは言いませんが、自分の身を守れる体術を身に着けていない奴を連れて行けません」

 確かに、私はちょっとした護身術程度しか身に着けていない。ついて行っても足手まといだ。

「エメラルドはどうだ? 体術などこれから身に付ければいい」

「サルファーとは結婚しません」

「即答することはないだろう。地位があり、金があり、顔も良くて幼馴染。サルファー君も王太子もそれほど変わらないだろう」

「変わりますわ。お父様はお母さまを顔とステータスで選んだのですか? 違うでしょう」

「どうかな」

「あら、お母様に言っておきますわね」

「ははは。手厳しいな。冗談だ」

「あらあら。母と娘の結束力をお忘れにならないでくださいませ」

「…………」

 勝った。

 私がというより母が勝った。

 サルファーが完全に固まってしまったけど、父に勝てたことには満足している。


「冗談はさておき、婚約破棄は滞りなく進む。こういう事は兄より私の方が得意だから安心していい。エメラルド、今後のことはどう考えているんだ? まだ修道院に行きたいか?」

 父の言葉にサルファーがぎょっとしてこっちを見た。

 そういえば修道院に行こうとしていたことはサルファーには言ってなかった。


「正直に申し上げますと、まだ考え中ですわ。でも、修道院に行く気分はどこかに行ってしまいました」

 同時にマリウスに告白する気持ちもぐずぐずと燻ってしまっている。

 デートしたところで私の中では浮気のようなもので、恋を後押しするようなものにはならなかった。


「視野が狭いようだから私からいくつか提案しよう」

 父は食事を続けながら言った。


「まず、結婚するなら誰と結婚しても問題ない。どんな相手でもお前が選んだなら結婚できるようにしよう。なんなら王太子とよりを戻して婚約破棄をなかったことにしてもいい」

 マリウスのことを知っているはずなのに名前すら出さない所が逆に怖い。


「ふたつめ。結婚せずに公爵家当主の……今は私だがいずれはジェダイトの補佐をして生きていくことも可能だ。仕事は増え、表に立つことは少なくなり影で働くことになる。今回のようにジェダイトには弱点がある。お前ならそれを十分に補えるだろう」

 多分、ジェダイトが結婚するまでは今まで通りだけれど、結婚したら完全に裏方になるという事だろう。隠密みたいでそれもいいかもしれない。

 私がしっかり補佐すればジェダイトの結婚の条件が緩くなる……ということまで考えているかもしれない。


「三つ目。公爵家特有の組織のことは知っているだろう?」

「公爵家というか、お父様の私設の謎の集団ですわよね」

 領地運営とは別に、父が何らかの組織を持っているのは知っていた。しかし何をしているのかははっきりと分からない。組織の人には何度か屋敷の中でも会っているけれど、紹介されたこともなければ、彼らから会釈以外のものを受けたことがない。

 父は王弟だ。私が知らなくてもいいことがあるのだろうと触れずにいた。


「こちらも公爵家のものだからいずれはジェダイトに引き継ぐことになるが、各地の調査をして情報を集める調査が主な仕事だ。情報はあればあるだけいい。家にはあまり戻らなくなるが仕入れた情報は必要な場所に必要なだけ流す。国としても重要な仕事だ」

「それは」

 国としても、ということは王族も関わっている?

「中と外、公爵家にはふたつの役割がある。どちらでもお前の居場所はある。結婚は無理にする必要はないということを覚えておきたまえ」

 父はそう言って水を飲んだ。

 にやりと笑う姿に、私は気付く。


 公爵家の中と外。本当は私に教える気はなかったのだろう。家族の中でただ一人公爵家を出る予定だった人間だ。

 私が修道院に入る話をした時には、この話は出てこなかった。

 私がこれからのことに迷っているから、父から助け船を出してくれたのだ。

「ありがとうございますお父様。少し考えて見ますわ」

 私の言葉に、父はうむ、と頷いただけだった。


「……この話は俺が聞いてよかったのか?」

 サルファーが訊いてくる。

「聞いては駄目なら、お父様はここでは話さないわ」

 サルファーに聞かせる狙いはよく分からないけれど。


 止まっていた食事を再会しようとした時、メイドが食堂に入ってきて母が帰宅したことを告げた。



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