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 誤字報告ありがとうございます。

 この物語は皆様の優しさに支えられております。



 申し訳ないですが、しばらく不定期更新となります。


 すごく久しぶりに悪夢を見なかった。


 前世の楽しい思い出だった。

 ジャスパーとヒロが似ているなんて今思い出したくらいだけれど。

 ジャスパーは元気かしら。

 大陸との会談が終われば、色々話す時間が出来ると思う。

 話すことといえば婚約の事で少し気が重いけれど、それでも夢のせいか、話をしたいと思った。


 ジャスパーに非はない。私の我儘だ。

 マリウスと出掛けた翌日にジャスパーのことを思い出すのは罪悪感のせいだろう。

 一緒に出掛けたのは楽しかったけれど、やっぱりしっかり婚約破棄をしてから行くべきだったわ。

 周りに流されてしまったのは反省している。


 マリウスは……結局私の事どう思っているのかさっぱり分からないままね。


 好意を持たれているのは分かるけれど、その好意はどの好意なのかしら。

 口説いてくるわけじゃないし、友情かしら。

 公爵家との付き合いを必要としているわけではなさそうだし、友情が一番可能性が高いかも。

 でも私と友人になって何があるのかしら。友好範囲が広いみたいだし、今さら私と仲良くなる必要性はあるのかしら。

 

「エメラルド様、おはようございます」

 ベッドの上で色々考えていると、マリアが部屋に入って来た。

「おはよう、マリア。今日は悪夢を見なかったわ」

「それは良かったです。ジェダイト様も今日は大分調子が良さそうですよ」

「起きてるの?」

「はい。まだ動き回る元気はないようですが、食欲もあるようです」

「良かったわ。後で会いに行っても良いかしら」

「もちろんです」

 ジェダイトは国一番と言われるほど剣の腕が良い。普段から鍛えているから無事だったし、回復も早かったのだろう。


「結局、何を飲んだのかは分かっていないのよね」

「薬だということは確かなようですが、風邪薬などではない、と主治医は申しておりました」

「私が死にかけたり誘拐されたり、お兄様が死にかけたりと、最近の公爵家は嫌なことばかりね。何か楽しい話題はないかしら」

 公爵家はここ最近不運続きだ。


 ベッドから降り着替え始めると、マリアが手伝ってくれた。

 今日はどこにも出かける用事がないので、飾り気のないシンプルなドレスを着る。

「楽しいかは分かりかねますが、今日は奥様がご帰宅予定ですよ」

「ああ、いつの間にかアルカパを見に行ってたのよね……」

 帰って来たとしても、社交に忙しい人だ。時々食事の時に会うくらいの接点しかない。

「あと、私事ですが、結婚しました」

「……え!?」

 突然の告白に、朝の支度の為に部屋に入って来たメイドも動きが止まった。


「え? え? マリアが!? いつ!?」

「実は数日前に婚姻届けは出していまして、昨日受領されたと連絡がありました」

 この世界の結婚は婚姻届けを王に提出して受領する仕組みになっている。

 役所ではなく王の許可がいるのだった。

「おめでとう、マリア! なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」

「エメラルド様がおっしゃった通り、公爵家は色々とお取込み中でしたので」

「ああ……ごめんなさい。でもとても良い話題だわ。お祝いしましょう」

「元々結婚するつもりで付き合っていたので、大したことではございません」

「式は? いつ上げるの?」

「向こうは次男ですし仕事も忙しいので、今の所上げる予定はないです」

「そうなの? マリアのウェディングドレス見たかったわ」


 貴族は一般的に、長男は盛大に結婚式を挙げて、次男以降は家族のみでお祝いだけすることが多い。


「ねえ、プロポーズの言葉は何だったの!?」

 ちょっとワクワクして訊いてしまう。

「エメラルド様、落ち着いてください」

「私、プロポーズされたことないもの。憧れるわ」


 前世ではプロポーズも結婚もないまま亡くなってしまった。

 そして今世も、家同士で婚約は決まったし、ジャスパーから「俺と結婚するんだ」と念を押されたことはあってもプロポーズされたことはない。


「……大変申し訳ないのですが」

「何かしら」

「プロポーズは『このままではエメラルド様と一緒に修道院に入ってしまいそうな気がして落ち着かないから結婚してくれ』でした」

「…………あら…………ごめんなさい」

「こちらこそ……夢を壊してしまいました……」


 お互い気まずい雰囲気になりながら、朝食を取りに食堂に向かった。


 食堂は一階だ。

 そして食堂に行く途中で、ありえないものが視界に入り、私は足を止めた。


「!? サルファー!?」

「おお、メロー! 早いな」

 食堂へ行く途中、ダンスホールにサルファーがいるのが見えた。

 シャツにスラックス姿で上着は着ていない。


「昨日は散々だったな」

「耳が早いわね」

「気付いてなかったか。お前らが帰ってきた時、俺はここで並べてたぞ」

 ダンスホールに近付くと、並べられたドミノが見えた。

「……え、もしかしてドミノのせいで泊ったの?」

「公爵に『騒がしくて済まない。泊ってまた朝から並べると良い』と言われた俺の心中を察しろ?」

 あの父なら言いそうだ。

 でもそれだけではないだろう。ジェダイトに何かあった時、男手があると助かる。


「ジェダイトは今朝には落ち着いたそうだな。無事で良かった」

 サルファーもそのことを分かっている様だった。

「迷惑かけたわね。ドミノをもうやらなくていい様にお父様に掛け合っておくわ」

「さすがメロー! 助かる!」

 そう言いつつも並べたドミノを倒さないようにダンスホールを出てきた。

「朝食がまだなら一緒に食べましょう」

「まだに決まってんだろ。メローが食べてないのに食べるほど図々しくない」

「あら! 別にいいのよ。子供の頃からよく泊ってたじゃない。サルファーは親戚みたいなものよ」

「そう、近すぎたよなぁ」

「?」


 サルファーはため息を吐きながら私と食堂に向かった。

 ドミノはもう一生見たくないのかもしれない。

 食堂に行くとすでに父が席に着いていた。

 父はいつも仕事をしながら食事を取るので、食堂にいるのは珍しい。


「お父様、おはようございます」

「うむ。おはようエメラルド。そしてサルファー君。ドミノの進捗はどうだね」

 そう言って私とサルファーに着席するように促す。

 公爵家のテーブルは横長だ。父の向かいに席が用意されていたので、私とサルファーは並んで座った。


「おはようございます閣下。昨日閣下が蹴飛ばさなければ、進捗は順調と申し上げておりました」

「そうかね?」

「お父様、もういいでしょう。私はこうして無事なのだし、ドミノが見たいのであれば私が並べますわ。お母様がそれを見てどう思うか分かりませんけれど」

 父も母も自由な人だけれど、母は私が淑女のふるまいから外れるのを好まない。

 そして父はそんな母に弱いのだ。卑怯な手だけれど、これは結構効果がある。

「……分かった。サルファー君、ドミノはもういい」

 ほらね。

「痛み入ります」

 サルファーはにやりと笑ってから私をちらりと見た。

 私もちらりと見て心の中で親指を立てる。

 食事が運ばれてきて、三人で朝食を取ることになった。


「さて、エメラルド。話がある」


 父はそう言って私とサルファーを見た。



お読みいただきありがとうございます。

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