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更新遅くなりすみません。
申し訳ないのですが、次回更新は3月10日になります。
ルビーはひざ丈の真っ赤なドレスを着ていた。いつも半袖だったのに今日は長袖だった。
ばっちりと胸の谷間が見える所はいつもと変わらない。
ネックレスはいつものピンクの石のネックレスにプラチナのネックレスが重ね付けされていて、私は咄嗟に視線をずらす。シルバーに近い色は今の私は直視できない。震えそうになる。
「……メロー?」
ジェダイトが私に気付いた。
その声は弱々しい。
「お兄様? 体調が悪いのですか?」
近付いて見ると、ジェダイトの顔は真っ青だった。まっすぐに立っていられず、ふらふらと揺れていた。
すぐ横にいたマリウスもそれに気付きそっと支えた。
いつものジェダイトなら振り払って立ちそうなのに、ひとりでは立つのが大変なのか素直に手を借りていた。
唇が青く震えている。
この症状……
「お兄様、何か薬を飲みましたの?」
ジェダイトは顔色が悪いだけではなく目もうつろだ。
「いや……このテラスで紅茶を飲んだだけだ……」
マリウスがテラスにあった椅子を引き寄せてジェダイトを座らせた。
ルビーは横でオロオロしているだけだったが、マリウスと話していたさっきの大陸の女性は、ハンカチを取り出してジェダイトの額の汗を拭いてくれていた。初対面なのに優しい人だ。
「手が冷たい……これは医者に見せた方が良い」
マリウスの言葉を聞いて、私についていた護衛がひとり、速足で離れるのが見えた。
公爵家と医者に連絡をしてくれるのだろう。
「紅茶を飲んだだけなのに……」
ジェダイトは完全に椅子に身を預けていた。
「そ、そうなんです! 私どうしたら良いのか……!」
ルビーも困り果てた様子でジェダイトを見ていた。相変わらず侍女を連れていない。
ジェダイトも自分が剣に自信があるせいで、普段から供を連れることは少ない。
自分の倍はある大男が体調悪くなり、彼女も困っただろう。
「お兄様、本当に紅茶でしたの? 植物園ですし、ハーブティでは?」
「いや、普通の紅茶だった……」
椅子に座るのもやっとだ。ぐらりとジェダイトの体が倒れそうになるのをマリウスが支えてくれた。
「何かアレルギーでも?」
「ええ、お兄様は薬のアレルギーがあって、薬を摂取する際には必ず公爵家の専属医が処方しておりますの」
「だ、誰か店員がジェダイト様の飲み物に何かを入れたという事なんですか!?」
ルビーが息を飲んで涙目になっていた。
マリアが携帯していた水をジェダイトに飲ませようとしたが、ジェダイトはそんな気力もなく息をするので精いっぱいの様だ。
その息もどんどん荒くなっていっているし、顔も青を通り越して白い。目を開けているのも辛そうだ。
体温が下がっているのか細かく震えている。
マリウスが自分の上着を脱いでジェダイトの肩にかけた。
「コン……トルシーどの……すまな……」
「喋らずに、ゆっくりと呼吸を」
マリウスが落ち着いた声で言う。ジェダイトも、女ばかりに囲まれるより、マリウスがいた方が気が楽だろう。
私はマリウスとは逆側にしゃがみ、ジェダイトの手をさすった。とても冷たい手だった。
「お兄様……」
これほど具合が悪くなるのは初めてだ。私は怖くなった。
このまま、倒れてしまうのでは?
護衛が担架を持った男たちを連れて戻ってきた。
医者にも連絡をしてくれたと教えてくれる。
専属医は公爵家の近くに住んでいる。医者がここまで来るのを待つより、こちらからも公爵家に向かった方が早い。
護衛は途中でかち合えるよう、最短の道も確認してくれていた。さすが公爵家の護衛だ。
「ルビー、君も一緒に付いて行って医者に起きたことを話すんだ」
マリウスが運ばれるジェダイトを追うようルビーに言う。
「えっ!? 話すって何を!? 私は何も知らないわ! 突然具合が悪くなったんだもん!」
「その具合が悪くなる時も傍にいたんだろう? 医者はその時のことを知りたがるはずだ。ジェダイト殿のあの様子では自分で話すのは難しいだろう」
「でも私は何も知らないのよ? 話すことなんて何もないわ!」
見送る体勢であったルビーがマリウスに言われてかなり動揺していた。
これは彼女では駄目だ。
「マリウス、お兄様には私がついて行くわ。あなたはルビーから話を訊いてくださる? お医者様に話すよりあなたに話す方が話しやすいでしょう」
「かしこまりました。お気をつけて」
「行くわよ、マリア」
私はマリアを連れて運ばれているジェダイトを追った。
ジェダイトが乗って来た馬車で運ぶ。護衛は御者にもちゃんと連絡していた。すぐに出発できるように用意が出来ていて、乗り込むとすぐに出発した。
公爵家の馬車は大きい。
ジェダイトが座席に横になり、その向かいに私とマリアが乗った。
ジェダイトの汗がすごい。私はハンカチで汗をぬぐった。
そういえば、汗をぬぐってくれていた大陸の女性にお礼を言い忘れた。
私たちが去って行くのを見送ってくれていた。
マリウスがお礼を言ってくれることを期待するしかない。
「これは明らかに薬の反応ですね」
マリアがジェダイトの両手をさすってくれていた。
「お兄様が分からないだけでハーブティだったのかもしれないわね。ルビーにも迷惑をかけたわ」
「そうでしょうか。エメラルド様、人が好過ぎですよ」
「え?」
私はジェダイトが楽な姿勢になるようにクッションを調節しながらマリアを見る。
「クルジット嬢が、何か薬を飲ませた可能性もあります」
マリアの言葉に私はぱちぱちと瞬いた。
「ルビー……さんが、お兄様に……?」
ルビーの様子を思い出してみる。
どうしていいか分からずオロオロとしていた。
「何か飲ませたら体調が悪くなってしまって動揺していたという事?」
「体調が悪くなるのを知っていたかもしれません」
「でも体調を悪くして何がしたいというの?」
「そこまでは分かりませんが、何かを狙っていた可能性はあります。恩を売ろうとか、誘拐するとか」
「さすがにルビーさんの体型でお兄様を誘拐するのは無理では」
「あの場にいないというだけで、連れがいないとは限りませんよ」
そこまで疑うほどだろうか。
ルビーの性格なら本人が言った通り何も知らないということも十分可能性があると思うけど。
「うう……っ」
「お兄様!」
ジェダイトの症状はかなり悪化していた。
「お兄様、頑張って。死んでは駄目よ!」
「エメラルド様……」
自分で言ってその言葉にぎくりとした。
死なない……わよね?
ゲームでは主要メンバーは死なない。
でもこの世界は全てゲームの通りではない。
実際に起きないことが立て続けに起きているし、人間関係は大分違う。
ここでジェダイトが…………いえ、考えたくない。
「お兄様、頑張って……!」
専属医の乗った馬車とかち合ったのは、それから大分経ってからだった。
公爵家に向かう馬車の中で、専属医の処方した薬を飲み、どうにか命の危険は無くなった。
それでもしばらく休養が必要ということで、公爵家で療養することになった。
この世界のゲームとの差異は、私が関わっていることが多い。
行き場のない焦燥感を胸に、その日、私はジェダイトの看病をした。




