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 いつもお読みいただきありがとうございます。


 年内最後の更新です。

 年始は更新お休みさせていただき、次の更新は10日になります。

 2020年もよろしくお願いします。

 戻って来たマリアは複雑な顔をしていた。


「ではまず、昨日の事件に関してお話いたします」

「お願い」


 マリウスの財布を掏った少年はルビーに追いかけられながら城下町を走り抜けていた。

 ドレス姿のルビーはただでさえ目立つ。

 そんな中、街にいた男が気付いた。ルビーが「あのクルジット伯爵令嬢」だと。

 男は仲間を呼び、伯爵令嬢を捕まえることにした。

 力ずくで捕獲しようとしたところでルビーと戦闘になる。なんとルビーはそこそこ戦えるらしい。

 それでも男数人と女一人では勝ち目がない。

 しばらく乱闘になったもののどうにか捕まえた。ルビーはここで悲鳴を上げた。

 他の仲間に連絡してさっさと引き上げようとしたところにサルファーたちが駆け付ける。


 捕まった仲間以外にもルビーの特徴は伝えられていた。

 残った仲間はルビーを捕獲することを諦めていなかった。

 街の中にいるであろうルビーを探し、同じ特徴の女が馬車に乗り込むのを見た。

 大通りから離れたところで馬車を襲った。


「その同じ特徴の女、が私だったのね」

「さようでございます」

「仲間を呼んで、というのは、友達? 同じ職場の方々?」

「同じ志を持つ者たち、だそうです」

「同じ志?」

「クルジット伯爵家に恨みがあったようです。反クルジット組織だとか」

「それは……すごいわね」

 そんなのあるんだ。


 クルジット伯爵の領地から逃げてきた男が何人かいた。

 クルジット領は税金が高く、領民はとても苦しい生活をしている土地だった。

 生活の苦しさは治めている領主への不満へ変わる。

 元々不満を抱えていたところに、得意げに大陸への外交に手を貸すクルジット伯爵にさらに不満がたまっていった。他の仲間たちも共感していた。

 痛い目を見せたいと思っていたら、目の前に娘が現れた。

 チャンスと思って誘拐を思いついたらしい。


 誘拐した後どうするかまでは考えていなかった、とまで吐いているそうだ。


「なんだか、そこまで悪人には聞こえないんだけれど」

「まあ、これから悪の組織になるはずだった集団、と言ったところでしょうか」

 悪の組織になる前に捕まえられたのは良いことだと考えるべきだろうか。


「私自身や公爵家に恨みがないという点で安心したけれど、今度はルビーさん、クルジット伯爵家が心配ね。伯爵家の問題であって私たちは何もすることはできないけれど」

「エメラルド様が心配される事ではありません」


 マリアはルビーに良い印象を持っていないせいか、伯爵家に関しては冷たい態度だ。


「ここ最近はクルジット嬢の素行が悪いということで外交の仕事から外されていたようですけれど、それでもクルジット嬢は勝手に城下町に出て大陸の者に積極的に話しかけていたみたいです」

「国の……王は大陸と同盟を結びたいのよね。そうするとルビーさんの行動は悪いこととは言えないわね」

「エメラルド様、王は外交官を友好的に迎え入れるという方針にはしましたが、同盟を結ぶとは言っておりません」

「あら?」

「まだ話し合いの段階です。同盟なんてそう簡単に結びません。隣国と同盟をむすんだのだって簡単ではございません。大陸と大した条件もなく簡単に同盟を結んでは、隣国の反発を受けますよ」


 隣国とは大昔に戦争は終わっていたけれど、同盟までは何十年もかかった。

 同盟を結んだ今でも、それほど仲が良い関係というわけでもない。戦争を止めるためだけの同盟で会って、隣国はこの国が隙を見せれば優位に立とうとするだろう。

 隣国に大陸の者が流れ着いているという話だって、仲が良ければすぐにこちらに教えてくれたはずだ。


「お父様は外交に対してはどう思っているのかしら」

「興味はないわけではないようですが、積極的というわけではないようです。申し訳ないのですが、私には公爵様が何を考えているのかは分かりかねまして……」

「あのお父様が何を考えているか分かるのはお母さまくらいよ。お母さまは大陸のことは何か話しているかしら。というか、ここ一カ月くらい会っていない気がするのですけど」

「失礼しました。伝え忘れておりました。二週間ほど前から領地に行かれています。アルカパの赤ちゃんが生まれたそうで、来週までこちらに戻ってきません」

「まだ社交シーズンは続くのに!? アルカパに会いに行ったの!? というかアルカパなんて家の領地にいたの!?」

「私も初めて聞きました」


 自分の家族ながら、自由過ぎるわ。


「とりあえず、私も大陸のことは勉強はしつつもまだ関わらなくていいってことで良いのかしら」

「関わって欲しい時は公爵から何かあるかと存じます」

「面倒ごとは避けたいわ」

 正直、ルビーにも関わりたくない。


「続いてもう一点。コントルシー様から公爵様に正式にお誘いがありましたよ」

「!」

 未婚の貴族女性を連れ出す時はまず当主にお伺いする、というのは礼節通りだ。

「公爵様もお許しになられました」

「あら! ドSが発動しなかったのね」

「明後日の午前中に迎えが来ます」

「え!? 早いわね!? てっきり来月くらいかと思ってたわ」

「日付を決めたのは公爵様です。のんびりできるよう手を回すから存分にイチャイチャして来なさい。フハハハハ。とおっしゃっていました」

「今のモノマネあまり似てないわ」

「失礼しました」


 マリウスなら社交辞令じゃなく本当に誘ってくれるだろうとは思っていたけれど、父が簡単に許可するとは思っていなかった。

 父はジャスパーとの婚約破棄が保留になっていることをどう思っているのかしら。

 婚約中に婚約者以外と出掛けているなんて悪い噂が立っても……

 …………

 でもジャスパーはルビーと出掛けてたわね。これはお互い様な気がしてきたわ。


「ちなみにエメラルド様が出掛けている間、サルファー様がこちらにいらっしゃいます」

「え、私がいないのに?」

「公爵様の言いつけで、ドミノを並べることに」

「……それって、終盤でお父様が乱入してわざと倒して初めからやり直すアレ?」

「エメラルド様をみすみす誘拐させた罰です」

「サルファー、断らなかったの? いえ、断らないわねサルファーなら」

「…………私も参加するように言われています」

「マリアは私のお供で一緒に行くのよ! 一緒に行けるようにお父様にお話しするわ」


 マリアはあまり期待していない顔で頷いた。

 

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