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29 ルビーの噂

 誤字報告ありがとうございます。

 この物語は皆様の優しさに支えられております。



「ルビーさんは……噂が多いの?」

「お前が知らない方が謎なくらいだ」

 サルファーの横でエレスチャルも頷いていた。

「女の人は表立ってお話しないのかもー?」

「友人たちは私に気を使っている様なの。それ以外の噂話はマリアが教えてくれるのだけれど…」

 ちらりとマリアを見ると笑顔を返される。

「教えてくれるのだけれど、お父様に規制されているみたいなのよね」

「公爵、昔から過保護だもんな」

「エメちゃんを守りたい気持ち、ぼくも分かるよー」

 私を覗く三人は同時に「うんうん」と頷いた。なんなの。


「クルジットは噂を聞いていたとしても、本人に会うとあんなだから、まんまとハマるんだよな。人懐っこいというか、あなたを好きオーラ?」

「ルビーちゃん、皆大好きだもんねー」

なるほど、皆大好きね。


「油断するとすぐ体触って来るよな」

「え?」

 体を触る!? ルビーが男の人の体を触るの!?

「すぐくっついてくるよねー」

 私の動揺に気付かずエレスチャルも同意する。

「胸押し付けてくるし、女慣れしてないやつはコロッといくだろ」

「そっかー! サルファーは女慣れしてるんだねー」

「オイ」

ルビー、確かに細い割に胸大きかったわね。

胸押し付けてくるって……むしろ悪役令嬢じゃない……?

 でもあの子の場合、狙っているのか、単にバカなのかどっちかしら。


「エレス様のお使いとは何ですか?」

「ぼくねー、この国の宗教に関してもお勉強してるのー。城下町の教会に見学に行くことになったのをルビーちゃんに話したら、神父様にお手紙渡して欲しいってお願いされてー」

「隣国の王子にお願いする事じゃねーよな」

「お手紙渡されて、持っていくよーって言ったらギュッてされたー」

「あら」

「ほほう。抱き着かれてどうだった」

「香水がエメちゃんと同じだった」

「あら」

 私の香水ってオーダーメイドで、家族や友人にしかあげたことないのだけれど、誰から渡ったのかしら。


「ちなみに手紙の内容は、伯爵家を出て城下町に帰りたいーって内容だったー」

『えっ!?』

 私とサルファーがハモる。

「お前、中身読んだのかよ!」

「エレス様、それはちょっと」

「ちがうよー。封が甘かったから、ポロっと出ちゃったんだもん」

「だからって読むなよ」

「しっかり封しないルビーちゃんも悪いと思うー!」

「……封って、封蝋されてなかったの?」

「糊付けされてるだけだったよー。ねー? ぼく悪くないよねー」

 貴族は書いた手紙に封蝋するのは習慣付いているけれども、平民だったルビーはあまり身近じゃなかったのかも? 平民の暮らしを知らないふたりには分からないかしら。

 でも、伯爵家に引き取られてから教えてもらってないのかしら。マナーや慣習は大分身についていたと思うのだけれど。


「では、サルファーが追いかけまわされたというのは?」

「あいつ、会うと必ず寄ってくるんだよ。逃げても答えるまで話しかけてくる。ほぼ毎日朝から夕方まで城にいるから、避けて通る方が難しいんだよな」

 毎日、朝から夕方まで……それはすごいわね。

 お城に行く用事ってあまりない気がするけれど、何をしに行っているのかしら。


 でも話を聞くと、ジャスパー、アゲート、サルファー、エレスチャルと、ゲームの選択できる人物と噂になっているのね。

 ということは。

「私が知らないだけで、お兄様とも噂になっている?」

「あ? 知らねーの? マリア、規制しすぎじゃねえか?」

「夜会でお庭でおひざに乗せてたって聞いたー!」

 あー! ゲームでジェダイトを選択した時にそんなイベントあったわ!

 すごいわね。ジャスパーを選択したルートで進んでいるのかと思ったけれど、他の人物ともイベントを体験しているのね。


「ルビーさん、一体誰が好きなのかしら」

「だから全員が好きなんだろ?」

「んー、ぼくはちょっと違うと思うー」

 エレスチャルはそう言うと紅茶を飲み干した。間を置かずマリアがお代わりを用意する。


「違う?」

「お手紙にあった通り、伯爵家を出たいんだと思うー。で、誰でも良いんだよー。連れ出してくれるならー!」

「なるほど。俺も領地について色々訊かれたな」

「ぼくは里帰りするのー? 寂しくないのー? とかお話したしー」

「貴族の暮らしが上手くいってないのかしら」

 会ったばかりの頃に比べると、大分短期間で貴族らしくなったと思うけれど。

 平民の生活も貴族の生活も、どちらもメリットもデメリットもあるものね。何か嫌な事でもあるのかしら。

 それなりに仲良くなったつもりでいたけれども、私に伯爵家にいたくないようなそぶりはしなかったわね。信用されていなかったという事よね。

 何かあるなら相談してくれれば、助けられたかもしれないのに。

 今となっては、さすがに助けてあげる気持ちにはなれないけれど。


 それにジャスパーを好きだと言ったのは嘘だったのかしら。

 その嘘の為に、あんなに刺繍を練習するかしら。

 いえ、伯爵家にいたくない、誰でもいい、が真実だとしたら、単に利用されただけなのかもしれないわ。公爵家に来て時間をつぶしていた可能性もあるわね。

 なんだか嫌ね。もっと早く気付いていたら、こんな思いをしなかったかもしれない。


「ひとりに絞らずあちこちに色目を使ってるのが気に入らねーよな。で、男どもも自分だけじゃないと知ってるのにひっかかる」

「男は競争相手がいると燃えるんだってー! 本に書いてあったー」

「何の本だよ」

 今まで女性に嫌われるのはなぜかしら、と思っていたけれど、複数の男性にすり寄っているなら嫌われても仕方ないかもしれないわね。

「まあそんなわけで、ジャスパーもルビーと婚約するために、お前と婚約破棄するだろうって言われてっぞ。大陸のことでクルジット伯爵家は親子で活躍してるからな。」

「……大陸のことに関しては私は参加していませんものね」


 近々大陸からの外交官がいらっしゃるのはジャスパーからの手紙で知っているけれど、どのような会談が行われるのかなどは、当たり前だけど一切教えてもらえていない。


 私の我儘で婚約破棄するのだけれど、噂が本当ならジャスパーもすんなり破棄してくれそうね。

 手紙の返事が来ないから不安に思っていたし、罪悪感もあったけれど、ちょっと楽になったわ。


「ねー、この緑のは何ー?」

「メロンだろ?」

「マスカットですわ」

 星見台でのお茶会は色々な話が聞け、友人との安気な時間だった。




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