22 ジャスパー
ご感想ありがとうございます。
この物語は皆様の優しさに支えられています。
今日は誕生日なのでハッピーバースデー自分臨時投稿です。
視点変わってジャスパー視点です。
最初に言っておきます。
次の23話はエメラルド視点です。
エメラルドとの約束が守れなかった日から一週間が経った。
そしてこの様子ではしばらく会えない。
その日にあった緊急会議の内容は、隣国に大陸の人間が何人も流れ着いているという事実が発覚したことについてだった。
父上は「詳しいことについてはすでに調査している」と言っていたが、隣国から留学中のエレスチャル王子の話では、流れ着いた人数は少なくないらしい。
この国が大陸の外交官に対しての対応に困っているのを、隣国は知っているはずだ。何の助言も支援もないのは同盟国として不誠実なのではないか、と皆ご立腹だ。
それをなだめるのも大変だったし、隣国から詳しく話を聞くために使者を呼び寄せる手配をしたり、エレスチャル王子から聞けるだけの話を聞いたりと、その日だけでも忙しかった。
今、この国にいる大陸の者で分かっているのはクルジット伯爵の家にいる料理人だけだ。その料理人からも話を聞くよう伯爵にも命令が下っている。
しかも母上が言った一言でさらに俺は忙しい。
「もしかしたら、大陸の方が我が国に来ていたとしても、こうピリピリしていては名乗り出ることはしないのではないかしら」
城下町、いやそれ以外にもこの国のどこかに大陸人がいるのではないか、ということである。
大陸の者とは言葉が違うが見た目はあまり変わらない。
あまり喋らずにいれば、例えば、旅行者を装っていれば分からないのではないか。
そこでまず、城下町に行って大陸の者がいないか見て回ることになった。
もちろん俺だけで見回るわけではない。騎士団に協力してもらい班を作り地区を割り振り見て回る。
次に聞き込みだ。これは貴族だけでは難しいので商人や爵位のない者にも協力してもらうことになった。
さらに、大陸の者を敵視していないというアピールの為に大陸に対する知識や良い噂を広める。
国全体で友好的である風に装う……いや、友好的になろうという方針だ。
大陸からの外交官の対応は弟のアゲートに任された。
王太子である俺が良い、という話もあったが、アゲートは隣国だけではなくさらに西の国の言葉も習得している為、外交官としての説得力がある。
本人も語学が得意で、大陸の言葉もすでにいくつか覚えていた。
それと、アゲートの性格では騎士団の指揮や城下町での聞き込みは難しいのではないかという声もあった。
俺も隣国の言葉は会話に困らない程度に習得しているが、アゲートほどではない。大陸の言葉は挨拶程度しか知らない。反対する理由もないので受けることにしたのだ。
しかし、そのせいで忙しい。エメラルドに会えない。
もう、一週間も、会っていない。
前に会った城の中庭に行けばまた偶然会えるのではないかと思い、毎日昼食を中庭で取ってみたが一向に現れない。
エメラルドは公爵家の仕事を手伝っていたので城にはよく来ているはず、と思ったが気付いた。長い期間家を空けていた兄であるジェダイトが帰ってきている。彼がその仕事を引き継いだと考えると城に来る用事はないのかもしれない。
「王太子殿下、お体でも悪いのですか?」
中庭で昼食を横に置き俯いていると、声をかけてきた。ルビーだ。
顔を上げるとゆっくりと礼をした。緑多いこの中庭ではストロベリーブロンドが良く映える。
水色のドレスも彼女に似合っていて、婚約パーティーで彼女を誘ったのも、この邪気のない美しさに惹かれたのだと今だと分かる。
そのせいで面倒な噂が立ってしまったのだが。
「あちらの廊下から皆さんがご心配されていらっしゃったんですけど、話しかける勇気がないとのことで、私が代表で声をかけさせていただきました」
「あちらの廊下」を見ると確かに数人の貴族が男女数名こちらを見ていたが、目が合うと礼をしてそそくさと去って行った。
そんなに体調が悪く見えただろうか。
「お忙しいんですよね。ご事情は父やアゲート様から聞いてます。私たち伯爵家も全面的に協力する姿勢です!」
笑顔でこぶしを握っている。思わず笑ってしまった。
「そうだ、これ、うちの噂の料理人と一緒に作ったお菓子なんです。良かったら殿下もおひとつどうぞ!」
持っていた包の中から丸い菓子を一つ渡された。
「大陸の平民の一般家庭で良く作られるお菓子だそうです。焼くんじゃなくて蒸すんですよー! オーブンって持っていない平民もいるらしいんですけど、蒸す料理はオーブンいらないし水も少量でいいから貧困層も材料を持ち寄って作るそうですよ」
「! 大陸の生活の話をしているのか!?」
「え? ええ。お料理作りながら色々雑談してますけど……?」
なんでもないことのように言っているが大切な情報だ。
伯爵からも報告は上がってきているが、ルビーは目線が違った。
聞くと、ルビー自身も料理が好きらしく、料理人と菓子以外も料理をすることがあるらしい。
言葉も少し喋れるようになっていたし、なにより料理中の雑談で大陸の生活習慣や文字を教えてもらっていたのだ。
伯爵からの報告は国の文化や政治的なことしかなかった。
それも大切だ。だが、大陸の者がどの様な生活をしているか、何を考えどのような思想なのかを知るのにルビーの雑談は最適だった。
初めはルビーも事の重要性に気付いていなかったようだが、俺が質問を繰り返すと気付いたらしく、次はどんな話を聞くと良いかと尋ねてきた。
政治的ではない、一般的なこと、生活上の些細な事でいい、と言うと、ルビーは笑顔で帰っていた。
彼女は翌日も中庭に現れ、大陸のことについて話をした。
それからはどんどん大陸の情報が集まっていった。
まとめるのはアゲートだ。伯爵とルビーを含めた会議を何度も行った。
一週間経つ頃には今までの事が嘘のように厚い資料が出来上がっていた。
次に大陸からの外交官が来ても余裕を持って対応できるだろう。
問題は俺の方だ。城下町を聞き込みや見回りをしても大陸の者は見つからなかった。
これはもうこの国には大陸の者は来ていないのではないか?
会議でそう報告すると、隣国との会談が終わるまで中断することになった。
その翌日。
淡い期待を持ち中庭で昼食を食べていると、ルビーがやって来た。
今はもう平民だと思われることはないだろう。歩き方も礼の仕方も完璧な貴族だ。
「クルジット嬢、大陸の件では大変世話になったな。僕に何か用か?」
「王太子殿下、私と城下町に遊びに行きませんか?」
「……何か理由が?」
「ご存知の通り、私は以前城下町に住んでいました。配達の仕事もしていたので、城下町には他の人より詳しいと思います」
「それで?」
「貴族の人が気付かない細い道とか、旅人のたまり場とか、ご案内できると思います!」
「なるほど」
中断を言い渡されたが、まだ会談まで日数がある。
何の成果もない状態を歯がゆく思っていたところだ。
なるべく少人数がいい、というルビーの意見を取り入れて、班員を決めた。
その他にも服装や持ち物など気付かなかった助言を受け、三日後に城下町に行くことにした。
この件が終われば、堂々とエメラルドに会いに行ける。
申し訳ないのですが、体調不良なので、次回の更新が遅れるかもしれません。
誕生日に風邪ひいてる……(´・ω・`)




