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 ブックマーク、評価共にありがとうございます。

 この物語は皆様の優しさに支えられております。

「すごく美しいよエメラルド。我が妹の美しさはありとあらゆるものを霞ませてしまうな。この国の、いやこの世界最高の宝石と言っても過言ではないだろう」

「お兄様、相変わらずですわね」


 夜。

 クレア夫人の屋敷で開かれる夜会にジェダイトと向かう所だ。


 クレア夫人からはあまり堅苦しいものではないから気楽にと言われていたけれども、ジェダイトは帰国して初めての夜会ということで燕尾服を着ていた。

 胸元には私のドレスと同じ色のチーフ。さすが公爵家、近侍も優秀だ。

 

 ジェダイトの身長はサルファーと同じくらいだろうか。

 サルファーは細身で背が高いけれど、ジェダイトはがっしりと重量を感じる長身だ。光沢のある燕尾服を着るとすごく目を引く。しっかりとセットされた黒髪に淡緑色の瞳。健康的な肌の色。年齢的にはそろそろ結婚してもいい年齢なのだけれどもシスコンがそれを許さない。


 いつまでも賛辞を垂れ流すジェイドを押して馬車に乗り、無事にクレア夫人の屋敷に着く。案内されるままに会場に踏み入る。

 会場は侯爵家の敷地内にある建物だ。入ってすぐのホールには談笑するためのハイテーブルがいくつか置いてあり、いくつかある部屋のドアは開け放たれており中にはダーツやビリヤード、チェス等に興じる人々が見える。中央にある階段から二階に上がるとダンスホールだ。食事とダンス。クレア夫人もここにいる。


 クレア夫人に挨拶に行く前に会場を一通り見回して……

 ……マリウスを発見してしまった。


 こんなにたくさんの人であふれかえっている会場でマリウスを見つけてしまう私も私だわ。


「エメラルド様…」

 後ろにいたマリアが困ったような声を出したので視線をマリウスから剥がすと、

「こ、こんばんは、エメラルド様……お昼はお世話になりました…」

 気まずそうに目の前に立っていたのはルビーだった。

「こんばんは…」

 私も戸惑ってしまう。


 ドレスの色、被ってる!!


 どこまでもゲームと同じ境遇に遭うのね……!

 

 でも色は被っているがデザインは全く違う。

 ルビーは鎖骨どころか胸の谷間も見せるオフショルダーで白いアームロングを付けている。ドレスはAラインでフリルが多めだ。

 対して私は胸元から上はレースのハイネックで肌色は微かに見える程度、長袖でレースが多めのプリンセスラインだ。

 雰囲気は大分違うが二人とも淡緑色と白色で纏められている。


「まるで姉妹みたいね、私たち」

 注目されているのを意識して言う。

「は…はい! ありがとうございますエメラルド様!」

 私の言葉にルビーはとても喜んだ。ちょっと跳ねた。可愛いわね。言ったかいがあるわ。

 これで「姉妹の様に仲が良い二人」ということになれるかしら? と、隣のジェダイトをちらりと見る。

 ……あら!?

 ルビーを見つめて固まってる……耳が赤いわ! あらあらあら!


「お兄様、こちらお友達のルビーさんよ」

「こ、こんばんは。ルビー・クルジットと申します」

 私の紹介に完璧な礼をするルビー。前より格段に動きが滑らかで美しい。

 ジェダイトはそんなルビーを見て、胸に手をあてて一礼する。

「こんなに愛らしいお嬢さんとお会いできたことを光栄に思います。エメラルドの兄、ジェダイトと申します。今後ともよろしくお願いします」

 声が甘いわ! 視線がルビーにくぎ付けで確実にうっとりしている! 惚れたのね! ルビーに惚れてしまったのね!?


 内心の高揚を隠してルビーを見ると、笑顔で「エメラルド様にはとても良くして頂いてます」と言っている。これは気付いてない…? え? 気付いていないの? 初対面だと気付かないものかしら? こんなに甘い声なのに?

 思わず後ろにいるマリアを振り返ってしまう。マリアは目を飛び出そうなほど丸くしてジェダイトを凝視している。ですよね!?


 ルビーがジャスパーを好きなのは知っているけれど、ずっと妹ばかり褒め称えていたジェダイトが初対面の女性に「愛らしい」と言うのは初めてだ。ちょっと良い思いをさせてあげたい気もする。

 ダンスくらいならいいんじゃないかしら? ルビーには迷惑かしら、と思っていたらさっさとジェダイトは誘っていた。これは婚約パーティーの時と一緒じゃない。ジャスパーじゃなくても私の隣にいるとルビーに惚れる運命なのかしら。


 ゲームでジェダイトを選んだ場合、彼らが出会うのは城の騎士団の訓練場だ。

 初めて城の図書館に行こうとした時、迷って訓練場にたどり着いちゃうのよね。そこで飛んできたナイフにびっくりして悲鳴を上げた所にジェダイトが来る、という出会いだったはず。

 ゲームでも現世でも、なぜかルビーって侍女を連れてないのよね。貴族令嬢って最低ひとりは侍女を付けるものなんだけれど。昼に公爵家に来た時もひとりだったし。なにか事情があるのかしら。


「お兄様、ダンスの前にクレア夫人にご挨拶に行かないと」

「ああ、そうだな。クルジット嬢、また後程」

「はい!」

 ルビーは貴族らしく礼をした。短期間でかなり平民ぽさが抜けてきているわよね。まだ言葉遣いが気になる時があるけれど。


 名残惜しそうにルビーを見送るジェダイトを連れて奥にいるクレア夫人に挨拶する。

 クレア夫人とはアクセサリーの趣味が一緒なのよね。今日のネックレスも素敵。


「エメラルド様お久しぶりですわ。体調はいかが?」

 一週間引きこもっていたことを言っているのだろう。

「問題ございません。ご心配お掛けしました」

「貴方ほどの方が男性一人に思い悩むなんてもったいないですわ。この国にはたくさんの方がいらっしゃいます。辺境伯やアゲート様、それに、爵位のない方もね」

ジャスパー達が言っていた噂を夫人も聞いたのね。でもどう返せばいいのこれは!?

 迷っているとクレア夫人はため息をついてから続けた。

「老婆心ながら申し上げますと、貴方の価値も分からない方は男性も女性も、相手にしない方がよろしくてよ」

女性、の部分でちらりと私の後方を見た。ルビーのことかしら?

 当然、そっちの噂も知っているのね……

 この言い方だとジャスパーのことをよく思っていないという事かしら。そして爵位のない、というのはマリウスのことよね……私がマリウスを気にしているのは噂になってないはずなんだけど……?

 それにサルファーやアゲートの名前が出てくるのも謎だ。

 アゲートはジャスパーの異母弟で私は挨拶くらいしかしたことがない。ゲームでは選択できる人物だ。


「もちろんです。妹には最高の男性と結婚してもらうつもりです」

 クレア夫人の言葉には私ではなくジェダイトが答えた。

 もちろんです、って……そういえばジェダイトは噂の事知っているのかしら。そういう話をするのを忘れていたわ。


 ジェダイトを見上げるとまかせろと言わんばかりの満面の笑みを返される。

 ジャスパーとの婚約は仕方ないと許していたと思っていたけれども……


 今日は楽しんでいってね、というクレア夫人に見送られて、私たちは再び来場客の中に戻った。



 ちなみにルビーさんは父である伯爵と一緒に来ています。

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