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15 悩む

 評価、ブックマークありがとうございます。

 この物語は皆様の優しさに支えられていますマジで。


 お兄ちゃん登場。

 


 婚約パーティーの時から、私はずっと考えずにいた。

 そう、自分の気持ちだ。


 ルビーはジャスパーを好きで、諦めたくないと言っていた。

 それを聞いた私はただ応援したいな、と思った。

 心が痛いとか切ないとか焦りとか全くなかった。

 あんなに優しく思いやりのあるジャスパーに対して、恋心を感じていないのだ。

 ルビーに惹かれていない彼を見て思うことは、単純にそう、浅ましくも。

 自分が寂しい思いをするのが嫌だという気持ち。

 そう気付いていしまったらすごく落ち込んだ。

 あまりの落ち込みっぷりに、マリアが体調が悪いと勘違いをしてベッドに押し込まれた。


 私はどうすればいいんだろう。どうしたいんだろう。

 マリウスのことを考えると、きゅっと胸が痛くなる。

 好きだと思う。会いたいとも思う。

 でも結婚までは考えたことがなかった。身分差があるし、接点もない。

 

 身分差は問題ないとマリアが教えてくれた。

 接点はルビーが作ってくれると言った。


 私は、本当にマリウスを好きになっていいのかな。

 ゲームと同じようにひとりぼっちになったりしないのかな。

 マリウスはルビーを好きだろうけど、告白するくらいは許されるだろうか。

 優しい人だからきっとひどい振り方はしない。その後友達になってくれる可能性もある。

 ……そんな切ない友達は嫌だけど。今よりずっと彼の近くにいられる…


 マリウスに刺繍を贈ると考えるとドキドキする。このドキドキは複雑だ。

 もともと友人だったらきっと喜んでくれただろう。でも今の私と彼はちょっとした知り合いだ。

 どんな反応されるか怖い……でもそれがきっかけとなるなら……?


 ベッドの中でうだうだ考えていると、マリアが静かに部屋のテーブルに本を置くのが見えた。

 私が寝てると思ったのだろう、音を立てずに部屋を出て行く。私はそっとベッドを抜けてその本を手に取った。

 国内の貴族の事が載っている本だった。いわゆる貴族名鑑というものだ。

 ルビーに刺繍を教えるために王家の紋章を見せたいと言ったから用意してくれたのだろう。


 ぱらりとページをめくるとまず王家の紋章がある。

 去年のタレンヴァインはこの紋章を刺繍したスカーフをジャスパーに渡したわね。

 渡した時は蓋を開けてありがとう、と言っただけのドライな反応だったわ。お互い義務だったものね。

 ルビーからハンカチを貰ったら喜ぶかしら。今の所、ルビーをどう思っているのか分からないのよね。

 ダンスに誘ったくらいだから、好印象だとは思うんだけど。明日ジャスパーに会ったら聞いてみようかしら。


 さらにページをめくってコントルシー家の紋章を探す。

 爵位が無いから最後の方にほんの少しだけ情報が載っているだけかな、と思っていたけれど、しっかり3ページあった。なんで? 我が公爵家も3ページですけど。

「え、マリウスで155代目? 建国前からこの土地にいたのね。領地も王都からそう遠くない……って、歴史長っ! 実績もすごいじゃない。ほぼ支援……なるほど、聖者の実績ね」


 コントルシー家の治める領地は王都からは少し離れている。

 それほど広くないけれど、港から隣国への流通もあり、海産物も取れている。川もあるから様々な業種に手を出している様だ。そして農業でそこそこ潤っている。目立つことはないが貧困のない土地の様だ。何もないようでいてこれはすごいことだと思う。

 紋章も載っている。小鳥が花を一輪くわえて飛んでいる姿だ。

 何の鳥かは書いていないけれど、権力を表す模様ではなく、ささやかな幸せを大切にするような印象だ。そっと指で撫でる。


 その時、外で物音がした。

 窓の外を見ると、玄関前に馬車が止まるのが見える。

 もう夜だ。父と母は夜会に行っていて帰ってくるのは深夜になる。窓を開けて見下ろすとがっしりした体格の青年が下りる。

 エメラルドの兄、ジェダイトだ。

 窓を開けたことに気付いたのだろう。見上げて手を振ってくる。

 私は手を振り返してから玄関に向かう。


「おかえりなさいませ、お兄様」

「ただいま、メロー。会いたかったよ」

 ジェダイトはうっとりするような笑顔でそう言うと柔らかく抱きしめてくる。

 シスコンのジェダイトを見ると、この人結婚できるのかしら、と毎回心配になる。

 あまり長くハグするつもりはないのでさっと体を離す。こっちから離れないと離さないのよね、この人。


「今日は夜会に行かなかったんだな」

「ええ、少し体調が悪くて……」

 正確には体調じゃないんだけど。

「もう大丈夫なのか?」

「ええ、問題ございません」

「実はメローに言いにくい話題がある」

 何かしら。

「帰る前に城に寄ったんだが、殿下から明日の約束が守れなくなったと手紙を預かった」

「あら」

 ジェダイトが取り出したのはジャスパーの瞳と同じ色の封筒だった。


「大陸の事で少し立て込んでいるらしい。急遽会議が入ったとか」

「あら」

 昨日、サルファーがエレスチャルを連れて色々吐かせるとか言ってたわよね……その影響かしら。

「残念ですけど仕方ありませんわ」

 自分のことを考えるいい機会かもしれない。


「メローは明日どこかに出かけるかい?」

「明日は夜会の予定がありましたけれど……」

「その夜会、ジャスパーと?」

「ええ、その予定でしたけど、どうしようかしら」

「ではその夜会、僕と行かないか? 久しぶりにメローと話をしたりダンスもしたい」

「まあ、素敵ですわ。ぜひ」


 派遣先から帰ってきたばかりで疲れていないのかしら、と思うけれども、ジェダイトが疲れているところなど一度も見たことがない。

 がっしりとした体形は騎士と言われても違和感がないほどで、かなり筋肉が付いている。そう、マッチョ枠なのだ。

 ルビーが階段の上から突き落とされても、その胸にがっちりキャッチするのよね。


 ジェダイトは夕食がまだの様なので食堂へ行き、私は彼からの山のようなお土産が部屋に運ばれるのを生温かい視線で見送った。

 今までジェダイトがいなかった分、公爵家の仕事をいくつか任されていたのだけれども、帰ってきたとなれば私のすることは少なくなる。ルビーに刺繍を教えやすくなるわね。

 

 それに、自分のことにももっとしっかり向き合う時間ができる。

 どうしよう、どうすればいい、そればかり考えているのはもう嫌だ。

 こうしたい、とはっきり言える私になりたいと思う。


 マリウスに刺繍を贈るならば。


 ジャスパーのことも考えなければならないから。



 人物増えてきてごちゃごちゃしないように書きたいと思います。

 まだ増えます。

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