表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳筋忍者はシノビたい  作者: ハマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/39

6

 騎士科の演習の日、俺はいつも通りの制服で集まったのだが、他の人達は戦う装備を身に付けていた。


「ルーク、今回は後方支援ではなく、騎士科の方と前線に出るのよ。そんな格好じゃ、いざという時戦えないわ」


 そうアンドレア様から注意されるが、今更だ。

 そもそも、俺は魔物と戦う装備を持っていない。


「ちっ、舐めやがって」


 近くでマブロが舌打ちをするが、それ以上言って来ることはなかった。これまで、様々な助言をくれたというのに、とても残念に思う。

 騎士科との模擬戦以降、マブロ達は俺に近寄ろうとしなくなった。理由は分からない。俺から近付くことはまずないので、この一週間、口どころか視界にも入って来なくなった。

 ジールは「平和で良いね」と言っていたが、困ることもないので、別にどうでもいいなと思ったのを覚えている。


 アンドレア様から「せめてコートを着ていなさい!」と注意されていると、以前聞いた声で名前を呼ばれた。


「ルーク・ストロング殿」


「確か……ミレイ嬢、だったか?」


「嬢はやめてくれ、そんなに幼くはないからな」


「すまない。ではミレイ殿でいいか?」


「呼び捨てでも構わない。ルーク殿、あの日から、私は徹底的に鍛え直した。この演習後、もう一度手合わせを願いたい。受けてはくれないだろうか?」


 この申し出を断ろうと思った。だが、俺が目立ったのが騎士科に勝利したのが理由ならば、次は負ければいいのではないかと考えた。


「分かった。演習後楽しみにしている」


「……余裕だな。次は負けない」


 そう言い残して、ミレイ殿は去って行った。


「完全に目を付けられたわね」


「そうなのか?」


「ええ、ミレイ・リンレイは騎士科でも突出した才能の持ち主。彼女に土を付けたのだから、他の方からも手合わせのお誘いがあるでしょうね」


「…………」


 それでは意味が無いのではなかろうか。

 リーナに相談したいところだが、残念ながらここにはいない。

 何をどうしたら丸く治るのか答えを導き出したいところだが、騎士科の考えを想像出来ない俺では、何も思い浮かばなかった。


「……全員倒せば済むか……」


「えっ?」


「何でもない」


 呟いた言葉は、あくまでも最悪の場合。

 そんなことをすれば目立ってしまうのでやりたくはないが、勉強の時間を確保する為ならば、完全には除外出来ない選択肢ではある。

 まあ、まだ時間はある。

 その時までに考えておこう。


 演習の出発時間が近付く。

 皆の準備も整っており、あとは教員の指示で動くだけとなった。

 そんな時に、間の抜けた声が響く。


「ごめんなさ〜い! 遅れました〜!」

 

 その声の主人は、杖を手に持った女子生徒。

 髪色がピンクと目立っており、必死な表情で走ってやって来る。

 ただ、その表情が演技くさく見えてしまうのは俺だけだろうか?


「彼女は?」


「セリア・ノルドね、先月転校して来た子よ」


 アンドレア様が教えてくれる。

 セリア・ノルドをどこかで見た気がするなと思い出す。


「ああ、あの時すれ違った奴か」


 前に彼女を見て、師匠に似ていると思ったのだ。

 今もその感覚は変わっていない。

 彼女は、この世界にとって異物なのだろうか?

 もし、師匠に匹敵する存在ならば、最大限に警戒する必要がある。

 万が一顰蹙を買えば、最悪世界が滅びる。


「セリア! 大丈夫か、心配してたんだぞ。やはり迎えに行くべきだった!」


 彼女を心配して駆け寄る騎士科の生徒。

 あの人物は確か、マブロに勝利した人物だ。


「彼はピスターブ様、ヒストリカ子爵の嫡男よ」


 丁寧に教えてくれるアンドレア様、流石である。


 ピスターブに続いて、セガール様や他の生徒も続く。

 どうやら、セリアという女生徒は騎士科の人達に人気らしい。


「彼女は回復魔術が得意みたい。騎士科の訓練にも同席していて、怪我した人を得意の魔術で治療しているらしいわ」


「そうか、回復魔術でも人気が出るんだな」


「回復魔術は資質も関係するから、使い手が少ないのよ。その点、あなたの妹は凄まじいわね」


「リーナか……確かにそうだな……」


 テストの予想に、人の上に立つ資質。

 どちらも俺には無い才能だ。

 そんな妹を持った俺は、きっと幸運なのだろう。


「……ルークは、優秀な妹に嫉妬しないの?」


「嫉妬? 考えたことも無いな。そんな暇があるのなら、少しでも勉強がしたい」


「そう……」


 元気の無い声音。

 アンドレア様を見ると、どこか遠い目をしていた。



  ◯



 演習場所は、学園から離れた森の中。

 ここで一泊二日の魔物の討伐が行われる。


 泊まる場所にテントを張り終えると、騎士科の生徒が教員の下に集まる。


「時間になれば鐘を鳴らす、それまでは魔物を討伐するように! 怪我した者は本部に戻って来るように! では、班ごとに行動せよ!」


 教員の指示により、騎士科は動き始める。

 普通科である俺達は、予め指示された班に振り分けられていた。


「ミレイ殿、先ほどぶりだな」


「ルーク殿、君と肩を並べることになるとは思わなかったよ」


 そう言いながら握手をする。

 手袋越しではあるが、彼女がどれだけ剣を振って来たのかが伝わって来る。


 やはり美しい。

 ひたむきに頑張る彼女を、そう思ってしまった。


 他の人達はというと、マブロはよく知らない騎士科の班に参加しており、どこか不満気だった。

 反対にアンドレア様とセリアは、セガール様の班に参加していた。

 この配置は、第二王子であるセガール様に万が一にも怪我をさせない為の配置だろう。


 アンドレア様の魔法技術は、騎士科では敵う者はいない。

 セリアは回復魔術が得意だと言っていたので、万が一が起きた時の保険と推測する。


 セガール様の班員も、騎士科の上位で占められており、その過保護ぶりがよく分かる。


「我らも行くぞ」


 ミレイの号令で、この班も魔物の討伐に向かう。




 討伐は順調に進んだ。

 この森に現れる魔物が大して強くないのもあるが、騎士科の練度が思っていたよりも高い。

 騎士は個人で戦うのではなく、指揮に従い集団で動く。

 それを体現するように、ミレイが指示を出し、従う俺達が魔物に剣を突き立てる。


 ここまでやれるのなら、まず遅れを取ることは無いだろう。


「移動しよう」


 ミレイが告げると、皆で移動する。

 これまでに十度魔物と接敵しているが、特に疲れた様子は見られない。

 一緒に戦うと親近感が湧くのか、


「普通科なのに、よく付いて来れるな」


 そう、騎士科の生徒に話しかけられることもある。


「これくらいなら問題無い、普通科でも体力錬成は行われているからな」


「そうか? 前に一緒に回った奴は、動けないと嘆いていたぞ」


「そいつの体力が無いだけだ、大抵の生徒はやってのけるはずだ」


 この程度で動けなくなるとは、どれだけ貧弱なのだ。

 そこまで行くと、参加させた学園側の不手際と考えた方がいいだろう。


 騎士科の人達と会話をしながら魔物の討伐を続けていると、森に鐘の音が響き渡る。

 本日の魔物の討伐も、これで終わりのようだ。


「戻ろう」


 ミレイが告げて本部に戻る。

 本部には半数が戻って来ており、各々夕飯の準備始めているようだった。

 では俺達もと動こうとして、強烈な殺気が駆け巡り動きを止めてしまう。


「何だ……これは……」


 騎士科の人達は、自分の体が震えているのを見て困惑している。

 魔物も動物も虫さえも恐怖して、その姿を隠してしまった。


 俺は、誰にも見られることなく、この場を離脱する。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ