表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳筋忍者はシノビたい  作者: ハマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/39

2-4

 明日から、メノウ学園は長期休暇に入る。


 この日に、セガール様率いる勇者パーティは国王様から任命され、正式に活動を開始する。

 最初の目的地は決まっているらしく、準備が大変だとジールが愚痴を溢していた。


「ルークとも、今日でお別れだね」


「ああ、新学期にまた会おう」


「あのねルーク。旅に出るから学園で会えるのは、いつになるか分からないんだよ」


「魔王を倒せば、復学出来るのだろう? ならば、それまでに倒せばいい話だ」


「それが出来るのなら、僕らはいらないよ……」


「分かっている。だが、それくらいの気持ちでいた方がいい。目標は明確にした方が、叶う可能性も上がるからな」


「何その理論? でも、そうだね、出来るだけ早く戻れるように、僕も頑張るよ」


 ジールは困ったように苦笑を浮かべる。


 本気で隠れた魔王を探すのは、かなり難しいだろう。俺やリーナでも、一年間専念してどうかといったところだ。

 それを考えると、メノウ大会に現れた四天王を葬ったのは失敗だったかもしれない。せめて、魔王の居場所を聞き出して始末するべきだった。


 とはいえ、あの四天王は人類に宣戦布告して来たのだ。


 いずれ動くのは間違いない。


 俺達は、その時に備えておけばいい。


「ジール、何か必要な物があれば言え。俺に用意できる物ならば、何でも持って来よう」


「ありがとう。でも、大丈夫だよ。国からも支援してもらえるし、アンドレア様にも良くしてもらってるからさ」


「そうか……」


 選別に、伝説の武器の一つでも渡そうかと思っていたのだが、それも必要無さそうだ。

 ならば、ジールの旅の無事を祈っておこう。


 そう思ったら、光の粉らしき物が空から降って来て、ジールに降り注いだ。

 ジールや他のクラスメイトは気付いていないようだが、どうやらジールは加護を与えられたらしい。


 どこの神だと目を凝らしてみると、どうやら俺だった。


「……やってしまった」


「どうかしたの?」


「いや、何でもない。ジール無事でな」


「えっなに? いきなり普通の反応でびっくりするんだけど」


 若干引いているジール。

 それはどういう意味だと聞きたい所だが、それどころではない。


 もし、加護を与えられたとバレたら、ジールは自由な生活を送れないかもしれない。

 ましてや、俺という名も無い者の加護だ。

 最悪、邪神からの加護と誤解される恐れすらある。

 解除しようにも、元あるジールの能力さえ奪ってしまう恐れがある。

 たとえ能力が向上したとしても、元の生活に戻れないのなら、それは無用の長物でしかない。


 これは、リーナに報告しておいた方が良さそうだ。



   ◯



 長期休暇に入り、俺はストロング伯爵家に帰ることになった。


 加護の件をリーナに報告すると、『分かりました。最悪、こちらで保護いたしますのでご安心ください』と返事をもらったので、大丈夫だろう。


 馬車での移動は、時間が掛かるから好きではないのだが、滞在期間を少しでも短く出来るのなら悪くは無い。


 片道七日の道程。

 ゆっくりと進む馬車の中で、本を読んで過ごし、襲って来る魔物を排除する。長閑な風景を見て時間を潰し、昔のことを思い出して己を鍛えたりもした。


 変化があったのは五日目の夜。

 宿場町に到着する予定だったが、倒木で道が塞がれていて思うように進めなかったのだ。

 おかげで、野宿する羽目になってしまった。


「お兄さんって、メノウ学園の学生なんですか?」


 そう尋ねて来たのは、倒木で足留めをくらっていた行商人の娘サーリャだ。商人の両親と一緒に、遠い町に行った帰りのようで、好奇心旺盛に俺に話しかけて来る。

 行商人と共にいるのは、単独での野宿というのは危険で、一緒にどうかと誘われてお邪魔することになったのだ。


 夕食の準備を手伝い、周囲の警戒は商人が雇った冒険者の男女二人が行う。

 二人はそれなりに有能なようで、倒木の排除も彼らがやっていた。


 夕食の準備が完了して、食事を始めた時にサーリャから質問されたのだ。


「ああそうだ。学園に興味があるのか?」


「うん、私も魔術が使えるようになりたいの!」


「そうか……。うん、サーリャなら魔術は使えるだろう」


 サーリャの魔力量を見ると、一般の魔術師並みにはある。

 鍛錬を怠らなければ、魔術師としてやって行けるだろう。


「本当⁉︎ じゃあ、魔術教えて⁉︎」


「こらっやめなさい⁉︎ すみません、この子、魔術に目がなくて……」


 母親に怒られて、サーリャはしゅんとしてしまう。

 それも仕方ない。本来なら、魔術を習うのには金が掛かる。それを無料で教えていては、教えるのを専門とした魔術師が廃業してしまう。


 とはいえ、魔術の魅力を教える為に、少しくらいなら良いだろう。


「構わない。俺が魔術を教えるのは、本来許されないのだが、簡単な物ならいいだろう。それでもいいのなら教えよう」


「いいの⁉︎」


 両親は謝っていたが、気にする必要は無い。

 これは、俺がやろうと思っただけなのだから。

 それに、夕食をご馳走になった礼もあるしな。


 教えるのは、光を灯す魔術。

 これは、魔術の基礎の基礎。

 これを用いた物は、魔道具としても販売されており、とても身近な魔術でもある。


 サーリャは才能があるのか、一時間ほどで魔術を成功させていた。


「わぁ⁉︎ 私出来たよ⁉︎ これで私も魔術師になれる⁉︎」


「ああ、サーリャには才能はあるだろう。ただ……」


「ただ?」


「魔術という物は、決して綺麗なだけの力ではない。それを理解して、目指すのか決めるといい」


「?」


 まだ、この言葉の意味は分からないだろう。

 分からないままでいた方が、きっと幸せなのだろうが、知るチャンスが来てしまった。


 俺は魔術を発動させて、女性冒険者の前に土壁を作る。


「なっ⁉︎」


 突然の出来事に驚いているが、それよりも警戒して欲しい。

 土壁には、矢が突き刺さっているのだから。


「お兄さん?」


「これから、魔術の汚い側面を君に見せる」


 立ち上がると、魔術を使い地面から一本の剣を作り出す。

 何の特徴の無い、ただの剣だ。

 これを振り払い、飛んで来る矢を払い落とす。


「きゃっ⁉︎」


 驚くサーリャに視線を送ると、冒険者に指示を出す。


「冒険者、お前達はこの家族を守るんだ」


「何を言って⁉︎」


 再び飛んで来た矢を風の魔術で叩き落とす。

 そこでようやく事態を察したのか、周囲に目を凝らす。


「盗賊が狙っているぞ」


 そう忠告して、ようやくその存在に気付いたようだ。


 とはいえ、恥じる必要は無い。

 何せ相手は、冒険者よりも格上の者達だからだ。


 木々の間から姿を現したのは、少々装備が充実した盗賊達。

 無言で現れて、こちらに何かを要求するでもなく剣を構えた。


 本来なら、目立つのは避けるべきだろう。圧倒的な力で始末するのなら、忍の姿でなければならないからだ。

 だが、学生が使える程度の技術で倒すのなら、その限りではない。


 盗賊を警戒して、冒険者の二人は剣を構えた。

 しかし、その人数と実力差を認識して、絶望した顔になっている。


 二人に再び、「下がって、この家族を守れ」と指示を出すと急いで下がって来た。


 俺は前に出て、盗賊達に問い掛ける。


「お前達は、どこに所属している?」


「……」


「黙りか。ならば、魔術の演出に付き合ってもらうぞ。サーリャ、魔術の恐ろしさをよく見ておくんだ」


 背後を振り返りそう告げると、サーリャは小さく頷いた。


 一斉に動く盗賊達。そのうちの一人の首を風の刃で跳ね飛ばす。

 仲間がやられて動きを止めた奴を、石の杭で串刺しにする。

 散会の指示を出した先頭の男の頭部を、水の球体で包み込み窒息させる。

 逃げようとした盗賊に火球を放ち、上半身を爆ぜた。

 一気に攻めて来た連中に雷撃を喰らわせて、その肉体を戦闘不能に追い込む。


 これを、盗賊を全滅させるまで続けた。


「サーリャ、これが魔術だ。様々なことが出来るが故に、多くの血を流すようになってしまった技術。お前は、それでも魔術師を目指すか?」


 そう問い掛けると、サーリャは真っ直ぐに俺を見返した。

 それは、年齢にそぐわないしっかりとした目付きだった。


「……私、それでも、魔術師になりたい! お兄さんみたいに、パパやママを守れるなら、私も魔術師になりたい!」


「……そうか。もし、その思いが続くのならば、ストロング伯爵家の門を叩き、ルーク・ストロングの名を出せ。さすれば、サーリャを導く者と出会えるはずだ」


 これは、飯を恵んでもらった恩返しだ。

 その時は、母上かリーナの部下が対応するだろうが、まあ悪いようにはならないはずだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ