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脳筋忍者はシノビたい  作者: ハマ


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35/39

2-1

 闇が支配する世界を影が疾走する。

 その影は一つ、二つ、三つと増えていき、最終的には十という数になってある屋敷の前に立つ。


 今回の仕事は屋敷に居る者らの抹殺。

 国内外に知れ渡るほどの残忍さで殺せと依頼を受けていた。

 この屋敷には女しかいないという情報を得ており、何の問題もなく終わるものと思っていた。


 一人の影が合図を出すと、屋敷の裏庭に侵入する。

 このまま一気に行きたい所だが、目の前に立つメイドにより阻まれてしまう。


「暗殺者の皆様、今お帰りになるのなら一人を除いて無事にお返ししましょう。ここから一歩でも前に進めば、容赦はいたしません」


 影である暗殺者達は、一瞬躊躇ってしまう。

 彼らは外からでも気配は感じ取れる。それなのに、このメイドを察知出来なかった。明らかに異常なのだが、このメイドから魔力をほとんど感じず、脅威でないと判断してしまう。

 これは、暗殺者達のレベルが低かったからではない。この人数が揃えば、ロイヤルガードを相手に戦えるくらいの実力があるという自負からだった。


 ただ相手が悪かった。

 そして、任務を拒絶する手段が無かっただけである。


 先頭の暗殺者が合図を出し、一斉に動き出して、全員の首が刎ねられた。


「もしも出会いが違っていれば、そこに立っていたのは私かもしれませんね……」


 今し方始末した暗殺者を見下ろして、メイドのクレアはポツリと零した。



   ◯



 外で戦いの気配があった。

 いや、それは一方的な物で戦いと呼べる代物ではなかった。


「侵入者か、どこからの者か聞き出さなくてよかったのか?」


「ええ、依頼主は把握しておりますので」


 この屋敷の主人であるリーナは、特に気にした様子もなく紅茶を啜る。

 リーナが言うのなら問題無いのだろうが、一つだけ気になることがある。


「リーナ、血を流すのは俺の役割だ。自分の使命を見失うなよ」


 そう告げると、リーナはキョトンとしていた。


「まあ、私が忘れるわけないではありませんか。先ほどのは、降り掛かる火の粉を払い除けただけです。兄様は悪を挫き、私は多くを救う。これこそが私達の原点ですから」


「その通りだ。もし何かあれば直ぐに言え、リーナにはいつも助けられているからな」


「そうですね、では早速」


 そう言ってリーナが取り出したのは、一冊の本。


「来週の追試の範囲です。全て丸暗記して下さい、余計な注釈や真実を書く必要はありません。ただこの回答を書き写すだけでいいのです。お分かりですね?」


「ああ、何度もやっているから理解している」


「ええ、何度もですね。何度もやっているんです。そろそろ諦めては如何ですか?」


「何をだ?」


「この国の学問を受け入れることをです」


「受け入れているが?」


「ではなぜ、量産型赤点などという不名誉な二つ名で呼ばれているのですか?」


「それは……」


 この国の学問は誤りが多い。

 かつて世界と繋がっていた頃、世界の記憶と真実を少しだけ垣間見た。少しといってもそれは膨大な情報量で、脳に負担がかかり初めて体調を崩してしまった。

 その少しの情報には人の歴史も記録されており、正確な情報を俺は持っている。

 この知識があるが故に、誤った学問との整合性が取れず、テストでは赤点を量産してしまっていた。


「俺の落ち度だ。何とか覚えるのだが、時間の経過で知っている知識に上塗りされてしまう」


 一週間くらいなら覚えていられるのだが、それ以上となると曖昧になる。

 知っているというのは、存外厄介な物だ。


「それでは仕方ありませんね。では、魔王の居場所は分かりますか?」


「封印されている奴なら分かるが、復活している奴までは分からない」


「そうですか……。ああそうだ、兄様には先にお伝えしておこうと思います。ご友人のジールさんですが、勇者パーティの一員に選ばれました」


「何? ……そういえば最近元気なかったが、そういうことか。だが何故選ばれた?」


「メノウ大会があったあの日、彼は多くの人を救う為に魔物を相手に獅子奮迅の活躍を見せておりました。その姿は国王様や他の方々にも目撃されておりまして、推薦する運びとなりました」


「……そうか。ジールの実力ならば問題ないと思うが、不安ではあるな」


「ご安心下さい。私の配下も参加しますので、いざという時は助けになるでしょう」


「参加するのはクレアか?」


 彼女は、四天王を凌駕する実力を持っている。あれだけの力があれば、魔王相手にもそう簡単に負けることはないだろう。

 そう期待したのだが、リーナからは否定される。


「いえ、新たに加わった子達です。加護を与えておりますので、実力は申し分ないでしょう」


「そうか、ならば問題は無い」


 加護を与えているのならば、危機が訪れたらリーナが出て行くつもりなのだろう。

 話は終わったと、俺は席を立つ。


「お待ち下さい、最後にもう一つ連絡がございます」


「むっ、何だ?」


「母様から、今度の長期休暇はストロング家に帰って来るようにと伝言を預かっております」


「……」


「兄様?」


「……それは強制か?」


「相変わらず苦手なのですね。強制ではありませんが、帰って差し上げて下さい。その方が母様も喜びます」


 俺は眉間に皺を寄せて、どうするか悩む。悩んで悩んで答えが出て来なかったので、「また今度返答する」と言葉を濁して逃亡を図った。

気が向いたら投稿します。

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