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脳筋忍者はシノビたい  作者: ハマ


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13

 メノウ大会が迫る中、ミレイから話があると呼び出された。

 校舎の屋上に来たのは初めてで、中々良い眺めだなと思う。


「すまない、わざわざ来てもらって」


「気にする必要は無い。それでどのような要件だ?」


「あの、その、あれはどうなったのかと思ってな」


「あれとは?」


 言葉が足りなくて、何を言っているのか分からない。


「あれだ、私とルークの婚約の話だ。断るように言ってくれたのか?」


「父上に手紙は送っているが、まだ返事は無い。メノウ大会には観覧に来るだろう。その時にでも、再度聞いてみるとしよう」


「そうか、それならいいんだ……」


 言葉の割には、どうにも元気が無い。もしや、別に要件があるのだろうか?


「どうした? 何かあったのか?」


「……決闘のことなんだが、ついさっき知った。……どうして教えてくれなかったんだ⁉︎」


「どうしても何も、ミレイには関係の無いことだからだ」


「関係無いって……」


「彼は俺に決闘を挑んだ。理由は知らないが、覚悟を持ってのことだろう」


「……理由、知らないのか?」


「知らん」


 興味も無い。

 どのような覚悟があったとしても、何も告げずに一方的に決闘をしようとする奴に興味を持てという方が無茶な話だ。

 それに、決闘は一種の娯楽でしかないと思っている。

 リーナもそう判断しているのか、メノウ大会の催しに盛り込んだ。

 この決闘は、それだけの価値しかない。


「なら、今からでも辞めることは出来ないか?」


「それは無理だろう、決闘はあちらからの申し出。それを受諾した以上、今更取り下げられない」


「相手はサモント家の召喚師だ⁉︎ 最悪、死んでしまうんだぞ⁉︎」


「そうだとしても、約束を反故に出来ない。たとえ負けるとしてもな……」


「ルーク……本当は理由を……。馬鹿……」


 何故か馬鹿にされた。

 ミレイはそっと近付いて来て、俺の胸に寄り掛かり制服を掴む。


「頼むから、生きてくれ。私なんかの為に、傷付く必要はないんだ……」


 どうしてミレイの為になるのだろう?


「俺にも引けないことがある。すまないが、これはミレイの為じゃない」


「ああ、分かっている。それでも、無事でいてくれ」


 ……心配されたのは久しぶりかもしれない。

 リーナから心配されるのはテストの結果だけで、俺の無事を疑われたことは、ここ数年無い。

 おかげで、少しだけ嬉しいと思ってしまった。


「ああ」


 決闘は、無傷で乗り切ろう。

 そう決意した。



   ◯



 屋上から教室に戻っていると、ある者が姿を現した。


「……オボロか?」


「この姿では、クレアとお呼び下さい」


 制服姿のオボロ、ではなくクレアが俺の前に立つ。

 その時の姿によって呼び方を変えないといけないのか……良いじゃか。忍者ならば、幾つもの名を持っていてもおかしくはない。潜入捜査では必須とも言える行為。それを仲間に共有しておくのは基本だろう。

 何というか、カッコいいな。


「クレア、何かあったのか?」


「はい、リーナ様が天空城を手に入れた旨の報告に参りました」


「……てんくうじょう?」


 初めて聞く単語に困惑する。

 一週間ほど留守にするとは言っていたが、てんくうじょうなる物を取りに行っていたのか。


「それで、そのてんくうじょうとは何だ?」


「申し訳ありません、知りませんでしたか。文字通り空に浮かぶ城でございます。かつて繁栄した、錬金術国家アルケピュターの異物です。今後、隠れ里の機能の一部をそちらに移す計画を立てております」


「隠れ里を? そうか……」


 いろいろと知らない単語が飛んで来る。

 天空城は理解したが、隠れ里とは何だろうか?

 リーナはそんな物まで作っていたのか。

 それならそうと教えて欲しかった。隠れ里なんて、とてもカッコいいじゃないか。


「では失礼します」と告げて、クレアは去って行った。



   ◯



 メノウ大会が目前に迫る中、ある人物が尋ねて来た。


「あれって、ルークのお兄さんじゃない?」


「……そうだな、兄上だ」


 教室の扉の前に、俺の兄上であるベルモット・ストロングが立っていた。

 俺のようにメガネを装備していないのに、立ち姿だけで俺以上に知的に見える。

 もしやこれは、三学年で成績がトップという自信の表れだろうか。


 普通科でありながら、騎士科を圧倒する剣技、魔術科を圧倒する魔術を習得しているという。本来なら特別科に所属するような傑物らしいが、本人が拒み普通科に残ったらしい。


 これら情報は、リーナから聞いたものだ。


 ジールに「行って来る」と断りを入れて、兄上の元に向かう。


「兄上、こんなところでどうしました?」


「……愚弟、サモントと決闘するそうだな?」


「はい、何か問題でもありましたか?」


「問題だらけだ。何故受けた、サモントがどれほど強力な召喚師なのか、知らないわけではあるまい」


「それは……」


 知らない。

 召喚師ということしか知らない。

 どれほどの力を持っていようが、やることに代わりはないので関係無いと思っている。


「ふん、愚弟は俺の下で働きたいと言っていたが、このままでは働けなくなってしまうな」


「っ⁉︎ 何故ですか⁉︎ 成績が悪いからですか⁉︎ 次のテストでは、しっかりと平均点以上取ってみせます! ストロングの名に恥じぬ成績を収めてみせます!」


 まさか、身内に不採用宣告をされるとは思っていなかった。

 何だかんだで、卒業さえすればストロング伯爵家の文官にはなれると思っていた。だが、時期当主である兄上から拒絶されたら話は別だ。

 このままだと、俺は文官としての道が閉ざされてしまう。


「誰も成績の話などしていない。それほど働きたいのであれば、決闘で無様な姿だけは晒すな。いいな」


「はっ!」


 兄上はそれだけ言うと口を閉じ、再び廊下で腕を組んで壁に寄り掛かる。

 一体どうしたのだろうかと訝しんでいると、ある人物がやって来た。


「お待たせしましたベルモット様、では参りましょう」


 やって来たのは、兄上の婚約者であるアンドレア様。

 どうやら兄上の目的は俺ではなく、アンドレア様との約束だったようだ。


「今日も美しいな、アンドレア」


「ふふっ、ありがとうございます。ベルモット様もカッコいいです」


 いつもとは違う猫撫で声を出すアンドレア様。

 どうしたんだろうか、何か病気でも患っているのだろうか?

 そんな心配をしながら、去って行く二人を見送った。


「あの二人って、凄く仲いいよね」


 ジールがやって来て、俺と一緒に二人を見送る。


「そうだな、婚約者だからな」


「噂だとアンドレア様って、魔術科から逃げたって言われてるけど、僕はベルモットさんの影響じゃないかって思ってるんだ」


「そうなのか?」


「うん、だって、あんな顔するアンドレア様って、ベルモットさんがいる時だけなんだもん」


「そうか……それは素晴らしいな」


「何その感想? でも、幸せそうだよね」


 本当のところは分からないが、ジールの予想が当たっているのなら、それはとても幸福なことなのだろう。


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