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脳筋忍者はシノビたい  作者: ハマ


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セリア4

 騎士科の演習後、セガール殿下の班員は王都の調査官によって取り調べが行われた。


 とは言っても、私達は見た物を説明するだけ。

 魔王軍四天王の一人、龍将ヴェルダンドンが現れたのと、魔王が復活した可能性があるのと、ヴェルダンドンを倒した奴がいるという三つの内容を喋るだけでいい。


「そのニンジャ? というのは、どこの地方民族だ?」


 しまった。この世界には、忍者は存在しないんだった。


「田舎にある本に、あの格好をした登場人物がいるんです。それが、ニンジャって名前だったと思います。あはは……」


「そうか……」


 その後、あの忍者をニンジャと呼ぶようになった。


 約十日間の拘束を終えて、私達は解放された。

 魔王の復活、ニンジャなる者の存在を口外しないようにと、きつく言い渡された。


 アンドレアさんは、解放されると同時に、カーニバル公爵領に帰るそうだ。

 カーニバル公爵から、無事な姿を見たいという手紙が届いたらしい。


「散々だったけど、悪くない体験だったと思っているわ。あなたも元気でね」


「はい、アンドレアさんもお元気で……」


 この十日間で、私達は仲良くなった。

 軟禁状態で女の子二人というのもあるけれど、私の田舎の話や、前世の夢のような話を好んで聞いてくれた。

 アンドレアさんも、何気ない日常の話や、魔術科を辞めた本当の理由も教えてくれた。これは、ゲームでは語られなかった話。

 私と、アンドレアさんの秘密だ。


 馬車に乗って離れて行くアンドレアさん。

 私は、その後ろ姿が見えなくなるまで、そこに立っていた。



   ◯



 学園に戻ると、みんなからとても心配された。


「セリアさん、無事で良かった。セガール殿下も一緒だから、大丈夫だとは思っていたけど、こんなに長くなるなんて……」


「心配かけてごめんなさい。私は大丈夫だから、また今日からよろしくね」


「ええ。……そうだ! セリアさんの復帰をお祝いして、みんなでお茶会しましょうよ!」


 クレアさんが、良いこと思い付いたと提案してくれる。


 でも、これはかなり困る。

 私はお茶会という催しに参加したことがない。

 平民と変わらない男爵家出身としては、とても憧れの世界なのだけれど、高貴なお嬢様方や商家の娘様がいる中では、悪目立ちし過ぎてしまう。


「あの、私、お茶会って初めてで……」


「大丈夫よ、何事も経験! じゃあ、今回は少人数でやりましょう。私とセリアさん、それとトウリにも参加してもらおうかしら」


「僕はいいよ」


 トウリさんは、少し小柄な黒髪の僕っ子。

 幼い見た目に反して、出る所は出ている女の子だ。


「えっと、よろしくお願いします」


 女子とのお茶会。

 これまでこの人達を、ゲームのモブみたいな目で見ていた。だけど今は、ちゃんと一人の人間として見られるようになっていた。


 どうしてだろう?

 アンドレアさんと仲良くなったからだろうか?

 それとも、ヴェルダンドンを前にして、一度死を覚悟したからだろうか?


 どちらにしても、これは良い傾向だと思う。

 ゲームじゃなくて、私は今、この世界で生きている。

 その実感が湧くと、とても世界が鮮明に見えて来るから不思議だ。



 お茶会は楽しい、ということはなく、話題を振ってお互いのことをよく知ろうという意図を感じる物だった。


「へー、セリアの回復魔術ってそんなに凄いんだ」


「そんなことないよ。骨折とかしてたら、結構時間掛かっちゃうし、風邪とかはまだ治療出来ないから」


「それでも凄いじゃん。僕なんて器用貧乏だから、全部中途半端だよ。一つを伸ばした方が絶対いいって。クレアもそう思うよね?」


 トウリさんから話を振られたクレアさんは、紅茶に口を付けると「そうね」と前置きして話し始めた。


「一芸に秀でるなら、仲間を作らないといけないわね。一人で何でも出来るようになる必要があるのなら、トウリのように幅広く覚えていた方が良いわね」


「あっ、リーナ様みたいな口調だ。真似したな」


「いいでしょう? 私が一番近くにいるんだから、誰よりも私がリーナ様を理解しているの」


 わいわいと楽しそうに会話をしている二人。

 いいなと思いながらも、何だかおかしいと思ってしまった。


「……リーナ、様?」


 年下のはずのリーナちゃんを、様と敬称を付けて呼ぶ。

 貴族の階級が違うからだろうかと思ったけど、それでも明らかに異常だった。

 まるで二人が、リーナちゃんに近しいような言動。それ自体はいいのだけれど、信奉しているかのような目をしていた。


「あの、二人は、リーナちゃんと仲が良いの?」


「リーナ」「ちゃん?」


「ひっ⁉︎」


 目付きが変わった。

 鋭く、まるで鋭利な刃物のような目。これは、年頃の女子がしていい物ではない。


「そんなに馴れ馴れしく、リーナ様を呼ばないでもらえるかなぁ。僕達でも呼んだこと無いんだよ」


「セリアさん、立場を弁えることね。リーナ様は、あなた程度が軽々しく呼んでいいお方じゃないのよ」


「え? あっ、ごめんなさい……」


 何で謝ってんの私?

 とはいえ、きっと二人には大切なことなのだろう。

 そう無理矢理納得していると、トウリさんからまさかの言葉が飛び出る。


「いいよ、分かってくれたのなら。それでさぁ、忍者って名前、どこで知ったの?」


「え? あっ……」


 意識が遠のいて行く。

 最後に見たのは、口元を隠した忍者の姿だった。



  ◯



 忍者? そう言われても、私は忍者という物に詳しくない。

 せいぜい、アニメで少し見たくらいで、凄い忍術使うんだなぁて感じ。


 忍者には階級があって、下忍、中忍、上忍とランク付けされている。その上に、頭だか、頭目だか、火影だかがいるようだけど、そこら辺はよく知らない。


 あとは、隠れ里? とかかな。

 あの転生者な忍者にも、隠れ里とかあるのかな?

 たとえ無くても、作ってそう。

 やっぱり、谷とかかな? 地下とかもありそう。でも、ゲーム知ってたら、天空城を手に入れてるかも。私も、前世の記憶取り戻すのが早かったら、取りに行ってたのにな。


「そのゲームとはなんですか?」


 ゲーム?

 …………ゲームはゲームだよ。スマホとか、テレビでやるやつ。

 この世界って【アルメニア王国記】って乙女ゲームの世界じゃない。あっ、乙女ゲームってイケメンの男子と恋愛するジャンルのことね。他にもたくさんあるけど、私乙女ゲーム以外興味ないから専門外。


「……アルメニア王国記とは、どのような内容ですか?」


 えっと、簡単に言うと魔王を倒す王道ストーリーね。

 主人公がメノウ王立学園に転入してから始まるんだけど、そこでセガール殿下やジール君と仲良くなってパーティを組むの。学園パートが終わると、王都に行ってロイヤルガードの人達と交流を深めて、新たに仲間に加わるの。

 私の最推しはね、冰結様! 実は歌姫の弟でね、そのことを知ると仲間に加わるイベントが発生するんだ。

 あと、仲間に加えられないロイヤルガードには要注意。後で裏切るから。


 そうそう、その裏切りのストーリーでね……




 ………っていうことがあったのよ!

 もう、ジール君大活躍! 絶対仲間にしておいた方がいいわ!


「すべてのストーリーを教えて下さい」


 あっ、じゃあ一から説明するね。

 転入してからなんだけど、まずどの科に所属するのか選べるの。私としては騎士科一択なんだけど、魔術科でも悪くない。普通科も、平均的にステータスが上昇するんだけど、特別科だけは論外。

 特別科は、ゲームをハードモードにする為の選択肢ね。


 それから…………。




 ……………で、魔王を倒して、パーティの中の誰かと結婚してハッピーエンド。

 リーナちゃんの唯一の救いは、来世が用意されていることかな。

 あの最後の一枚絵が無かったら、たぶんクソゲーって言ってたと思うわ。


「そうですか、聞きたいことは大体聞けました。ではセリア・ノルドさん、起きていいですよ」


「え?」


 言われて気付いた。

 私、ずっと目を瞑っていた。


 恐る恐る目を開くと、目の前にはドレス姿の美しい女性が立っていた。

 それが、リーナちゃんだと気付くのに少し時間が掛かってしまう。

 更に。その背後にはクレアさんやトウリさんが、メイドの姿で立っていて、理解が追い付かない。


「あっ、あなた、リーナちゃん、よね?」


「ええ、リーナ・ストロングです。間違っても、魔王に乗り移られたりしていませんよ」


 そう言ってカーテシーをする姿がとても美しくて、とても恐ろしいと思ってしまった。

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